第5話 料理教室①

「ガチャ ただいまー ほらここが俺の家 何も無いけど..」


「お邪魔します.. いやいやそんな事ないよ 綺麗なお家だね」


今の状況を説明しよう

俺の隣にいるのはクラスのアイドルそして俺の憧れの立花さんだ


何日か前立花さんに料理を教える約束をした

そして今日が約束の日だ


昨日は一晩中何を教えるか考えてたからか朝から頭が回っていない

それに誰かに料理を教えるなんて初めてだからすごく緊張する


「とりあえず入ってよ あと今日は俺の妹の友達も家に来るらしいけど

 自分の部屋で遊ぶらしいから安心して」


「そうなんだ!私お邪魔しちゃって良いの?」


「良いの良いの 気にしないで」


俺たち2人は靴を脱ぎ玄関のドアを開ける

そうすると芳醇で豊かな煙の匂いがした


「..!! 凄くいい匂い!」


「炊飯器の米の匂いだよ丁度これくらいの時間になる様に炊いておいんだ」


どうやら朝予約しておいた米が炊き上がったみたいだ


「今日作るのはカレーだから先に米を炊いていた方が時間も短縮できるでしょ?」


俺は米の様子を見るため炊飯器を開ける


「うん!美味しそうに炊けてる」


「でもなんかこのお米少し黄色っぽい様な?」


「これはターメリックライスって言うご飯だよ

 普通のお米でも良いんだけどカレーに合う様にひと工夫したんだ」


「へー! これってどうやって作るの?」


「お米を炊く時にターメリックパウダー少々、バターを加えて軽く混ぜるだけ!

 たったそれだけの工夫でも味は変わるんだよ」


「確かに普通のお米よりこっちの方がスパイシーで合いそう!

 ふむふむ..」


立花さんは俺の言った事をメモしている

やっぱりそういう真面目なところが彼女の素敵なところだと思う

おそらく彼女の事だからこれからカレーの調理に入っても次々とメモしていくだろう そうなると時間がかかってしまう


「分かった事をメモするのは凄く良いと思う!俺もばあちゃんにそうする様に

 言われたし」


「でも俺が今回は後で立花さんが見やすい様に事前にノートに要点は書いてきたから! 次々と行こうか」


「メモまで..つくづく私鷹藤君にお世話になってばっかだ..」


「俺が教えるって言ったんだし気にしなくて良いんだよ

 それよりエプロンは持ってきた?」


「うん 言われた通り前に買ったけどしばらく使ってなかったエプロン!」

彼女が持って来たのはしま模様のおしゃれなエプロン

それをつけた彼女は大人っぽく見える


大丈夫かよおれ..ニヤニヤしてないかな


「うん..凄く良い感じ! じゃあ次は..」

俺は机の上に置かれている袋から次々と商品を出していく


「カレールー、にんじん、牛肉に玉ねぎ、じゃがいも..

 とりあえずこんな感じだよね!」


これらはうちに来る前に近所のスーパーで一緒に買ってきたものだ


2人きりで買い物してたから小さい頃から俺のことを知っているおばさんにからかわれたが悪い気はしなかった


「じゃあ早速初めて行こうか!」


「うん!よろしくお願いします 先生!」


立花さんに先生と言われるのは恥ずかしい

いやでも悪くない むしろ嬉しい..


「じゃあまずは手をしっかり洗うところから」


「はい!」


俺が料理をする際に徹底していること それは石鹸で手を洗うこと

手を使って食品を触る以上清潔な状態じゃなきゃ何が起こるかわからない

2分ほどしっかり手を洗いタオルで拭く


「じゃあ次は野菜を水洗いしようか」


「水洗いってもしかして洗剤とか使うのかな?」


「・・・え?」


立花さんのまさかの発言に苦笑いしてしまう


(もしかしてマジで言っているのか..)


彼女の顔は言ったって真剣 それを見るとボケているわけじゃ無さそうだ


「洗うって言っても軽く水にさらしてついてる泥を落とすんだよ

 石鹸なんかつけたら傷んじゃうよ」


「そっか!そうだよね..ごめんねバカなこと言って..!」


立花さんの顔がトマトの様に真っ赤になる

素で間違えたのか 流石にこれはしっかり教えていかないと危なそうだ


「少しずつ覚えていけば良いから..でも石鹸で洗おうとするのは.. ふふ」


「ちょっと鷹藤君!恥ずかしいから..!笑わないでよ!!」


彼女は恥ずかしそうにしながら注意してくる

一緒にいるたび彼女の新たな一面が見れるのはなんというかすごい楽しい


「ごめんごめん怒らないでよ じゃあ次は..」


そう言おうとした時玄関から元気いっぱいの大きい声が聞こえる

 

「おにいちゃーーーん!! ただいま! お友達連れて来たよ!!!」


「はいはい おかえりつばめ」


「わぁ!!すごい綺麗な人.. こんにちは!!鷹藤つばめです!!

 お兄ちゃんと仲良くしてくれてありがとうございます!!」


「こんにちは 立花香澄です 今日はお邪魔しちゃってごめんね」


「たちばな..? えー!私のお友達と同じ苗字!!」


「え?どういう事だ?」


「今日家に来ている子とお姉ちゃん同じ苗字なの!

 今おトイレに行っているからもうすぐ来るはず..」


俺と立花さんで目を合わせる

いや待てよ..もしかして俺が前に感じたデジャブ感ってもしや..


その時ガチャリと音がしてドアが開く


「お邪魔しまーす! わぁすごい綺麗な家!!って..」


「紹介するね!これがうちのお兄ちゃんすっごい料理が得意なの!

 それでお兄ちゃんの横にいるのはお兄ちゃんのお友達の立花さん!まさかの涼風すずかちゃんと おんなじ苗字なんだって!」


つばめが涼風ちゃんと呼んだその子はつばめと同じくらいの身長の女の子で

さらに透明で綺麗な目__立花さんによく似ていた


「「え?」」


立花さんとその子は目を合わせて固まるそして..


「おねえちゃん!?」


「涼風!?どうしてここに!?」


2人の声が同時に響くまさかの予想的中だったのか


「お姉ちゃんってことは..もしかして2人は姉妹?」


「う、うん 私の妹の立花涼風たちばなすずかだけと

 あんた何でここにいるの..!?」


「お姉ちゃんこそ! 何でつばめちゃんのお家に!?」


「まあまあ2人とも..」


「金曜日に涼風も友達の家に行くって言ってたけど..

その友達が鷹藤君の妹さんだったなんて..」


立花さんはさっきから驚いた様な表情をしている

確かに世の中狭いもんだ 俺だってびっくりしている


「でもお姉ちゃん何でいるの? もしかして『おうちでーと』?」


「ち、違うよ!! 今日は料理を教えてもらいに来たの!!」


「えー!?あのお姉ちゃんが料理を..? や、やめといた方が..」


料理という言葉を聞いた瞬間涼風ちゃんの顔が真っ青になる


「何よその言い方!」


「だって前にお姉ちゃんがうちでハンバーグ作った時家中煙まみれに

 なって大変だったじゃん!!」


「そ、それは.. 確かにあの頃の私は全然ダメダメだったけど今日は

 鷹藤君がいるから!」


そう言って自信ありげな表情をする立花さん

というかまさかそんな大変なことがあったのか..

さっきの洗剤の件もだがどうやら立花さんは本当に料理を作るのが

苦手だったらしい


「てか2人とも今日は何を作るの?気になる!!」

つばめが無邪気な笑顔で聞いてくる


「カレーだよ もし良かったら後で2人も食べる?」


「「良いの!?」」


俺の言葉を聞いた瞬間小学生2人は飛び跳ねて喜ぶ 無邪気なもんだ


「でも鷹藤君..私たちが買って来たのって2人分だよ?」


「多分大丈夫 ライスだったらたくさん炊いたし

 材料も本当はうちの家族分も作ろうと思ってたからあるんだ「


「そうなんだ! 鷹藤君家族みんなの夕食も作っているって

 言ってたもんね.. すごいな」


「お兄ちゃんのカレーね!! すっごく美味しいの! 

 給食に出てくるやつなんかよりずっと!!」


「そうなんだ..私もそれくらい美味しいの

 作れる様になりたいな..」


つばめと立花さんが話しているのはなんか新鮮だ

つばめが失礼な事言わないと良いが


「ちょいちょい」


横から俺の服の袖を引っ張ってくる涼風ちゃん


「どうしたんだい?」


「えっと.今日はお姉ちゃんにお料理教えてくれてありがとうございます」


「いやいや全然! こちらこそ人に教えるのなんて滅多にないから楽しいよ」


「お姉ちゃんピアノ辞めてからずっとお料理やりたかったみたいだったから..

 最近のお姉ちゃん家でも楽しそうだから嬉しかったの」


俺と関わりだしてから立花さんが楽しそう..

涼風ちゃんの言葉に思わず泣きそうになってしまう


「そっか..ありがとう 涼風ちゃんもつばめと仲良くしてくれて

 ありがとう! つばめいつも家で涼風ちゃんの話してるんだぜ」


「つばめちゃんも.. ま、まあ 私とつばめちゃんはクラスの『りーだー』なので

 当然ですが!」


りーだーというのはクラス委員長の事か? 独特の呼び方だな


「えっとつばめちゃんのお兄さん!」


「お姉ちゃん 食いしん坊で少しおっかないとこもあるけど..

優しくていいやつなので 仲良くしてくれると嬉しいです」


「こ、こら!涼風!何言ってんの!!」


思わずつばめと話していた立花さんがこっちを振り返る


「だって本当じゃん!!」


「こ、このぉ!!」


「ははっ」


そう言って鈴鹿ちゃんのほっぺたをぎゅーっとつまむ立花さん


学校じゃ絶対に見せない様子に思わず笑ってしまう


「ってもう5時じゃん!そろそろ再開しないと間に合わないかも!」


俺が時計を見るともう5時になっていた


「本当だ じゃあ涼風とつばめちゃんはまた後で」


「りょーかい!!じゃあ涼風ちゃん私の部屋でゲームしよ!!

 私負けないよ!!」


「ふふふ 私だって!!強いんだから!!」


「2人とも仲良いのは良いが喧嘩しないようにな」


「「はーい!!」」


同時に返事した2人はドタバタとつばめの部屋に駆け込んでいく


「ふぅまあ色々あったけど とりあえず再開しようか」


「うん!」


こうしてもう一回手を洗い始める俺と立花さんだった

 



















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