第12話 権能ってなんだ?

マリアンヌから唐突に口付けされて、多田克典ただかつのりは混乱の極みだった。

すげえ柔らかかったとか、も一回してえなとか……いやいや違う! !

今、こいつはなんて言った?

権能を使えるように……権能ってなんだ! ?

その混乱をオートで読んでクリスが多田に声をかけた。

「権能っていうのは、神様が天使に伝えた能力の内の一部で、譲渡可能なんですよ〜

私はマリー程歳も生きてないし、天使のランクも下の下なんで、譲渡が出来なくって」

「お前また勝手に心読みやがったな! ? いや、お前の情報はいいんだよ、何、譲渡可能って、何なんだ権能って」

二人のやりとりを見ていたマリアンヌは、事態を収集させるべく口を開いた。


「はぁはぁ、多田克典さんのダメンズっぷり、愛しいわ滾るわあ……っじゅるり。

……っと、権能の説明でしたね。権能は多岐に渡りますが、今回は一番小さな【障害にぶち当たった時にどうすれば良いか判別し、使用出来る⠀】といったプチ権能を譲渡した形になりますねえ」

それを聞いて多田は満足出来る筈もない。

マリアンヌに食ってかかった。

「なら、何か? ! 宝くじも当たらない、未来をなすがままに出来るようなチート能力でもないのか! ? 意味ないだろうがそれじゃ! !」

「ですが、多田克典さんが困難に立ち塞がれた時に最善が導きだされ、勝手にその最善策が使用されるんですよ? 」

食ってかかられたマリアンヌはそれが悪いことですか? とキョトンと首を傾けてみせた。

「もういい、チェンジだ! ! 俺はクリスを選ぶ! !クリスは能力こそ使えないが家事の面で俺をサポートしてくれるからな! !」


思わず多田は勢いあまってクリスの手を掴み引き寄せ、突然引っ張られ、ふらついたクリスの体を抱きとめた。

「はわはわ、多田さん〜」

抱きとめられたクリスは顔を真っ赤にして、繋がれた手を恥ずかしそうに眺める。

マリアンヌは眼前で行われた一連の行動を見、微笑ましげに笑って、一時退散する意図を伝えた。

「なんだか嫌われちゃったかな? まあ、また来るよ、その時は少しでもいい未来を歩んでたらいいね、多田克典さん? 」

「もう来んな」

「ありゃ、キスまでしたのに嫌われたもんだね。まあ、いいや。少しでもこれで良くなるよ。じゃあ、またね、クリス」


マリアンヌはわざとらしく多田の唇をとんとんと指先で叩いてから自分の唇にあて、薄らと微笑む。

そして次の瞬間には二人の前から姿を消していた。

「なんだったんだ、あいつは」

「多田さん……あの、手を……」


クリスが気恥ずかしげに身を捩り、顔を真っ赤に染め上げたまま手の所在を呟いた。

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