バレンタイン戦線異常無し

これは、本編筋のお話より数年後の聖バレンタインの話である。


クリスはキッチンにてチョコレート作りに奮闘していた、多田との付き合いは順調である。

今日もイチャイチャしてから多田を仕事に送り出し、夕飯を買い出しに行こうと財布を持って出かけた先。見つけてしまった。

赤くディスプレイされた様々なチョココーナーと、バレンタインの存在を。

天界にもバレンタイン? みたいな事はあるが、ここまで仰々しくもなく、ポップな字体で【⠀愛する相手に愛を届けましょう】という宣伝文句にクリスは目が釘付けになり、ほのかに顔を赤らめる。

見目麗しく可愛らしいクリスの姿に買い物客は皆足を止めていたが、それには気づかないのは最早愛嬌だろう。

幸い自分は料理が得意だ。調べれば作れるだろう、と赤い箱をいくつかと、そこにディスプレイされていた製菓セットを思わずレジに通していた。


「これなら作れる、かな? 多田さん、喜んでくれますかねえ……嬉しすぎて笑ってくれたら、いいな」


クリスは、ここ現地の料理を探索魔法で調べあげていく。出会いから随分クリスも天使として成長していて、マリアンヌ達からも色々と教わっている途中だ。

多田の支えになれている、と自分でも思えるようになったのは大きい。

まだまだぎこちないお付き合いだが、多田も態度が緩和し、時たま優しく笑ってくれるようになっていた。その成長ぶりがクリスにはとても嬉しい。

ダメ男ホイホイなマリアンヌからしてみれば、出会った時のやさぐれていた多田の方が好きだったそうだが。

クリスがチョコをテンパリングして溶かしていると、窓が勝手に開かれていく。

案の定、部屋の中にいたのはマリアンヌだった。

いつもの黒髪ボブ、ちょっと大人しめなワンピース仕様の服。少女にしか見えないマリアンヌはガサリと持ってきた袋を見せつけてくる。

「クリスもチョコレート作りしてたのね! ! 私も天界で頑張ってきたの。ねえ、多田がどっちを先に受け取るか勝負しない? 」


ふふんと無い胸を反らせるマリアンヌに、クリスも受けて立つわと体を反らすとたわわに実ったおっぱいを揺すりあげる。

ギャルゲもかくやと、昔よりもさらに実ったおっぱいはクリスの魅力をいや増しさせていた。


「望むところよ、マリー! ! 付き合ってるのは私なんだからね! !」

「でも一番仲がいいのは私だよ? 」

最近は多田も優しくなってきたし、とマリアンヌはとどめを刺す。

ぐぬぬ、と二人して牽制しあい、マリアンヌはクリスを可愛がるように背中から翼を避けて抱きしめた。


「「一緒に作れば、なにか変な混ぜ物もしないだろうし、ね」」


笑いながらもどこまでも、どこか物騒な考え方になる二人だった。

これが人と天使の違い、なのだろう。



その頃、多田は盛大にくしゃみをしていて、周囲の同僚から風邪か? と少し遠巻きにされていたのだった。

「何か、嫌な予感がする……」






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