第11話 過去世の俺よ、勘弁してくれ

ステータス全振り。

そう言われて多田克典ただかつのりは時たまやるPCゲームを思い出す、のめり込みはしなかったが、それは各ステータスを細かく割り振って、更に自分の好みのキャラを作りこんでいく。そうゆうやり込み型ゲームだった。

だから多田にはわかってしまう。

今の多田は、過去世ヴァイアーってやつの魂を持ってしまったが故に、その強大すぎる魂の維持に負担がかかり、他のステータスを食い尽くしてしまった、と。

多田は、どんよりとした気分で両手を組み合わせ、その上に額を擦り付けた。

「……つまりだ、今の俺は、その過去世の奴のミソッカスぐらいのステータスしかないと」

「恐らくは、ですが」


返されたクリスの言葉に多田は無言で立ち上がり、窓を開けた。

夜風に近い、生ぬるい温度が多田の体を撫でていく。

「なあ、俺の人生意味があったのかよ、そう言われてホイホイ頷けるかよ……っ」


「! ! 多田さん、ダメですっ! ! 」


自暴自棄になった多田を、クリスが全力で止める。柔らかな肢体が絡みつく、それをも振り切り飛び出そうとした所で多田は完全に動けなくなった。

マリアンヌは空間停止の魔法を詠唱なしで発現させており、止まったのを確認してから多田の懐に滑り込み。


そっと多田の唇を奪ったのだった。

カサつく多田の唇を小さな舌が舐め、そして唾液を絡めた何かを飲み込ませる。


「んく……っ、ぷは……」

マリアンヌは唇を離すと、指先一つ鳴らして時間を僅かに巻き戻した。


「今ので多田克典さんの生命のリンクを強くし、僅かですが権能を使えるようになりました。

私たちは既に存在しうる魂をどうこうは出来ません、ですが、現世の存在を強める事は出来ますよ? 」

そして、クリスがしがみついてる多田ごと、マリアンヌは翼で慰撫したのだった。


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