第10話 それで、今の俺は?
二人の天使が一生懸命話す多田の過去世は彼からすると全て眉唾物で、にわかには信じがたいものだった。
主人公にも程があるだろ、今の俺とは全く違う、多田から見れば虫唾が走るタイプのヴァイアーというやつだった。
対して
全てに絶望して死にたくて死のうとしてもクリスが尽くそれを止めにかかる。そんな凄いやつの未来世になるんだから、少しはその恩恵あって然るべきだろ。
なのに今の俺は恩恵がない、と言うことはどうした事だ、魂は同じ筈じゃないのか。
多田は二人の天使の言う事を信じている訳じゃない。
昨今の異世界モノは自分の運命を受け入れ過ぎだろ、と多田は常々思っていて。
それは今の今に至るまで、多田が否定したくなる内容だった。
過去世なんか知るか。
多田は単なる多田克典であり、それ以上でもそれ以下でもない。
二人が尊敬する、ヴァイアーなる輩は、多田とは違う。
でも二人は彼のものの功績を語り、今の多田を見てはいない。
多田は心がクサクサしだした。
「なら、なんで今の俺はこうなんだ? クリスもマリアンヌちゃんも俺のことは知ってるだろ?
俺はこのままなのか? 」
それこそ、多田が一番知りたいことだった。
「えーと、もしかしたらですが、ヴァイアーさんの魂を引き継ぐのに現世のステータスを全振りしてる可能性があるんです」
クリスが、まごついたように、言いにくそうに話し出した。
相変わらずこっちを見ないままの態度は多田の心をさらにクサクサさせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます