第7話 新たな騒動?襲来
どうせ一緒に帰宅する時に、食材の荷物持ちをするのだ、今くらいは自由にしててもいいだろと最近ハマっている漫画作品だけを読み進めていく。
最近流行りの漫画は何故かパラ読みという怠惰っぷりである。全部読めよな。
「 さん! ! 」
不意に呼ばれた気がした。
ただ、名前が違う。
多田は無視した。
「 さん! ! 」
聞き取れない名前は左から右にスルーだ。
多田は再度紙面に目を落とした。
主人公が武功を立てて、王と謁見するシーンまで読んだとこで、呼び名が変わった。
「多田克典さん……っ、私のこと、忘れちゃいましたか? 」
「………はあ」
漸く反応した多田に気を良くして、近寄ってきた、見知らぬ少女の姿をやっと見る、黒髪ボブで聖書を捧げ持っており、胸はない。平たい起伏しかない。
聖書。ならば、宗教の勧誘か。
その容姿はどことなく中性的で、華やかな美人の顔立ちであるクリスを見慣れ始めてきた多田は、その違いになんとなく興味を惹かれた。
惹かれはしたが、やはりどう脳内の人間関係を探っても目の前の少女は多田の脳内データベースに引っかからなかった。
「あー、どこかで会ったかな? どうもおじさん最近忘れっぽくて、君のこと覚えていないんだよ」
「私は覚えていますよ、ええもう鮮明に! ありありと! 」
拳を奮い、懸命に訴えかける少女。
まだ滔々とした説明は続く。
「あのヒースの丘で出会い、共に旅をし、世界を揺るがす存在である邪神を封印せし折に貴方はいいました。
『私の、これから生まれくるであろう魂に命じよう、全ての魂の私よ、今の私はここで絶えてしまうが、必ずや世界を統べる天秤となりてまた再び君たちの前に現れよう。この誓いは未来永劫全ての誓いであり、私の魂の存在意義だ。よろしく頼む、と……』ねえ、ハインリヒシュツルトゲッツィンヴァイアーさん。忘れちゃいましたか? 」
きらきらした瞳が、多田を見つめ続ける。
「今のが、貴方の過去世ですよ? 思い出しましたか? 」
「……アタオカだ」
よし、通報しよう。した。
最近は頭おかしいのは大人だけじゃないようだ、と警察に保護されていく少女を見ることなく多田は雑誌を小脇に抱え、クリスとの合流を急いだ。
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