第48話 発見!闇闘技場!
◇ステータス情報◇
【早乙女瑠奈】Lv.55(↑Lv.14)
・探索者ランク:B
・保有経験値 :2500
(レベルアップまであと、3000)
・魔力容量 :850(↑150)
《スキル》
○《バーニング・オブ・リコリス》(固有)
・消費魔力量:250
・威力 :準二級
・対単数攻撃用スキル。攻撃時に深紅の焔を伴い、攻撃箇所を起点として炎が迸り爆発。噴き上がる炎の様子は彼岸花に似ている。
○《狂花爛漫》(固有)
・消費魔力量:毎秒10
・威力 :二級
・自己強化スキル。発動時全身に赤いオーラを纏い、身体能力・肉体強度・動体視力などの本来持ちうる能力を大幅に強化する。強化量探索者レベル+10相当。
――――――――――――――――――――
ダンジョン・フロートの夜景を見下ろすことが出来るビルの屋上。
その貯水タンクの上に、黒いパーカーを着て猫耳の装飾が付いたフードを目深に被っている人影があった。
「さて、と……」
その人影が片手でフードを外すと、現れた薄桃色のミディアムの髪の毛がサラッと夜風に攫われた。
――瑠奈だ。
ダンジョン内ではゴシックドレス風の装備を着込む瑠奈であるが、ここはダンジョンの外でダンジョン・フロートの街中。
これから闇闘技場関係者を探そうというのに、そんな目立つ格好をしていては不審がられてしまう。
ゆえに、瑠奈は黒いパーカーと下はショートパンツに黒タイツといった、ラフながらも夜闇に溶け込めるような恰好をしているのだ。
もちろんこの状態でもEADは起動されているので、いつでも特殊空間から大鎌が取り出せるのはもちろん、その身体能力もダンジョン内と同様のステータスを反映したものとなっている。
間違って今の瑠奈を一般人がナンパなどしようものなら、平手打ち一つで頭蓋骨骨折か、運悪ければ首から上がサヨナラである。
「どこから調べようかなぁ~」
瑠奈はスマホを取り出して、あらかじめギルドと凪沙から貰っていた闇闘技場の情報を画面に映し出す。
今までの調査で発見された闇闘技場の場所や、未調査だが怪しい箇所がダンジョン・フロートの地図上に記載されている。
「ここからだと……西部第六地区の未調査エリアが一番近いね」
よしっ、と瑠奈はスマホを仕舞って南西を向く。
そのまま前傾に倒れ込むように、ビルの屋上から飛び降りた。
これが日中で、人目などあろうものなら飛び降り自殺かと疑われるだろうが、幸い今は夜で人の目はない。
ヒュゥ! と強い風切り音を聞きながら、瑠奈はしばらく空中での浮遊感を楽しむ。
だが、生憎自殺願望はない。
すぐに次の足場となる建物の屋上、屋根へと飛び移り、ダンジョン・フロートの夜景を眼下に構えて目的地へと直行する。
西部第六地区の中でも、いくつもの工場が密集した区域。
ここがギルドが怪しいと睨んでいる未調査エリアだ。
瑠奈は数分ぶりに地面に足をつけ、明かりがほぼなく見通しの悪い工場区を慎重に歩き進めていく。
(うぅん……いかにもって感じの場所だけど、誰もいないなぁ。ま、そう簡単に闇闘技場が見付かったら苦労はないだろうけど……)
真夜中ということもあって工場はどれも稼働しておらず、重厚な扉で閉ざされていているため中の様子はわからない。
小一時間ほど広い工場区を歩き回ってみたが、闇闘技場の“や”の字すら見付からないため、瑠奈はハズレだと見切りをつけ、この場から立ち去ろうとする。
しかし、そんなとき――――
「――で、今日はいくら賭けるつもりなんだよ?」
「へへっ、財布には五十万入ってるぜ」
「ぎゃはは! 完全に闇闘技場のカモじゃねぇか~!」
「うっせ! 今日は勝つんだよ!」
(闇闘技場……!?)
そんな会話が聞こえてきて、瑠奈は咄嗟に物陰に身を潜める。
様子を窺ってみれば、中年の男二人が並んでどこかへ歩いていく。
会話の内容から、どうも今から闇闘技場に向かうらしい。
(……あはっ、ラッキー)
瑠奈は口角を持ち上げた。
あの男二人を尾行すれば、勝手に闇闘技場まで案内してくれるというワケだ――――
◇◆◇
「おりゃぁあああ! 勝てぇえええ!!」
「負けんなぁ!」
「そこだっ! いけぇえええ!!」
「「「うおぉぉおおおおおッ!!」」」
一見稼働していない工場。
しかし、普段は重い荷物を上げ下げしているであろう大きな昇降機で地下に降りた場所に、その光景があった。
数十人の人々。
感情様々に熱を帯びて鳴り響くそれぞれの声。
そんな彼らが注目し、視線を向ける先は一点。
頑丈な格子の中に作られたアリーナで戦う――いや、戦わされている四体のCランクモンスターだ。
観客は皆、自分が賭けているモンスターの勝利を願って声援を送っている。
密かにそんな光景を見ていた瑠奈は――――
「はぁ~あぁ~。やっぱ、くだらないね」
瑠奈一人の呟きなど、闇闘技場に響き渡る観客の声によって掻き消されてしまい、誰の耳にも届かない。
だが、次の瞬間。
その場の全員が目を見開き、口を開け広げ、驚愕のあまり沈黙することになった。
ガシャァアアアアアンッ!!
アリーナを囲う頑丈な格子が砕け散り、突然のことに動きを止める四体のモンスターの真ん中に、大鎌を肩に担ぐ瑠奈が降り立つ。
「どうもぉ~、闇闘技場に群がる犯罪者のみなさ~ん!」
状況の理解が追い付かない観客の間抜けな視線を一身に受けながら、瑠奈は演技掛かった口調で語る。
「いやぁ、これが闇闘技場かぁ。初めて見たけど……うぅん、やっぱりワタシには何が面白いのかサッパリだなぁ。自分の足でダンジョンに潜ってモンスターと戦う方がよっぽど有意義だよ~」
無警戒、油断。
今の瑠奈は誰の目にもそんな状態に見えた。
すぐ傍にはモンスターが四体もいるというのに、あまりに愚か。
予期せぬ瑠奈の登場に少しの間固まっていたモンスターであったが、こうも目の前で隙だらけの姿を見せられれば、取る行動は一つというもの。
ギラリ、と殺意を滾らせた眼光。
あるモンスターはその長い牙を、あるモンスターは鋭利な爪を、またあるモンスターは角を、尻尾を……それぞれが持ちうる得意の武器で、一斉に瑠奈に襲い掛かる。
しかし、瑠奈のその態度は無警戒でも、まして油断でもなかった。
余裕、と言うのだ。
「ねぇ、今ワタシが喋ってるから黙っててよ――」
スッ……と振り上げられる大鎌。
瑠奈はその場で身を捻り――――
「――永遠に」
ズシャァアアアッ!!
自身を軸とした同心円状に振り払われる大鎌の湾曲した刃が、四つの肉を斬り裂いた。
絶命したモンスターが辿る末路はダンジョンの中でも外でも同じようで、その亡骸は黒い塵となって四散し、あとにはモンスターの数と同じだけの魔石が転がる。
「なっ、何だアイツ……!?」
「ウソだろ……」
「Cランクモンスターとはいえ、一振りで四体を……」
「どうなってる!? 何かのサプライズイベントだったり……?」
どよめく観客。
瑠奈の技量に戦慄する者もいれば、闇闘技場運営側からのサプライズなのではないかと疑う者もおり、反応は様々。
瑠奈はスポットライトが差す半壊したアリーナの上から、そんな観客らを見渡して、大きくため息。
「はぁ……もう、どうでもいいや。取り敢えずここにいる全員大人しく投降して。嫌なら好きに抵抗してもらっても良いけど……身体の一部が千切れても文句言わないでね?」
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