第15話 衝撃ライブ配信の反響

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◇ステータス情報◇


【早乙女瑠奈】Lv.28(↑Lv.10)


・探索者ランク:D

(ランクアップにはCランク昇格試験合格必要)


・保有経験値 :500

(レベルアップまであと、2300)


・魔力容量  :500


《スキル》

○《バーニング・オブ・リコリス》(固有)

・消費魔力量:250

・威力   :準二級

・対単数攻撃用スキル。攻撃時に深紅の焔を伴い、攻撃箇所を起点として炎が迸り爆発。噴き上がる炎の様子は彼岸花に似ている。


※スキルの発現は極めて稀。

※スキルには誰しもに発現の可能性がある『汎用スキル』と、その探索者のみの『固有スキル』が存在する。

※スキルの威力はギルドによって測定が義務付けられており、上から

『特級』『一級』『準一級』『二級』『準二級』『三級』『四級』『五級』の八段階となっている。

※魔力容量の生まれ持った大きさ、成長具合は個人差が非常に大きい。


――――――――――――――――――――



「すみませ~ん。魔石の換金お願いしま~す」

「はい、かしこまりました」


 件のライブ配信を行った日から、早くも一週間が経過していた。


 至る所が裂けてボロボロになったゴシックドレス風装備の修理は既に終えており、刃が半分に折れてしまった大鎌も新しいものに買い替えている。


 新しい得物を早く手に馴染ませようと、今日も瑠奈は放課後に、自身のランクより一つ上のCに潜って、日が完全に沈むまで狩りをした。


「えぇっと……Dランクモンスターの魔石が十三個に、Cランクモンスターの魔石が三十二個ですね」


 今はダンジョン・フロート中央に聳えるギルド本部一階の換金カウンターで、ギルドの職員に魔石を確認してもらっているところだ。


 その最中…………


「な、なぁ、アレ……」

「お前も気付いたか……?」

「あぁ……」


 当然ギルドには探索者が多く集う。

 会話の中で他の探索者の話題が出ることも決して珍しくはないが、ここ数日は様子が違う。


「換金カウンターにいるのって、あの……」

「間違いねぇ。迷宮の悪魔ダンジョン・デビルだ」


 そう。

 瑠奈――ダンジョン探索配信者ルーナが、絶体絶命の状況下でBランクモンスターをソロ討伐してしまったライブ配信以降、その話題で持ち切りなのだ。


 だが、誰も本人に話し掛けにはいかない。

 若干潜めた声で会話するのも、瑠奈に聞かれないようにするため。


 というのも、扱い方がわからないのだ。


 二ヶ月ちょっとでDランクになり、あまつさえBランクモンスターをソロ討伐してしまうような新進気鋭の探索者。


 それだけならまだ良いのだ。

 一部妬み嫉みを抱く者は出てくるだろうが、多くの探索者が新しい風を歓迎する。


 しかし、瑠奈は違う。

 あのライブ配信を見た誰もが、瑠奈の尋常ならざる狂気を目の当たりにした。


 満身創痍で左腕を噛み千切られようと、笑って大鎌を振るう瑠奈の姿は、まさしく迷宮の悪魔ダンジョン・デビルの異名に相応しい。


 現段階では探索者レベルもランクも瑠奈より上で強いはずの探索者達ですら、思わず寒気を感じるほどの狂いっぷり。


 それが今こうして見て見るとどうだろう。


 元々外見は文句の付け所がないほどに可愛いのだ。

 換金カウンターのギルド職員に愛想の良い笑みを向け、優しい声色で言葉を紡ぐ瑠奈の姿は、まさに天使と形容できる。


 それが、なお一層不気味で、怖かった。

 その天使の微笑みの奥に悪魔のような狂気を隠し持っていると想像すると…………


「す、すまん俺っ……お腹が……!」

「お、おい……!?」


 瑠奈を見て慌ててトイレに駆け込んで行く男性探索者が一人。


 そんな様子を背中越しに感じ取っていた瑠奈は――――


(はぁ、ワタシの可愛さが浸透してきたのは良いんだけど、生のワタシを見て息子さんが元気になっちゃったからって、本人がいる前でトイレに行くのはやめて欲しいなぁ~)


 物凄い勘違いだった。


(まぁ、ワタシも前世は健全な男子高校生……気持ちはわかるから見逃してあげるか……)


 無駄に男の気持ちが理解出来るがゆえの、勘違い。


(でも、ちょっと羨ましいな……)


 瑠奈はカウンターで換金の手続き(金額が大きいので現金でなく口座振り込み)を終えると、ギルドを後にすべく身を翻して歩き出す。


(ワタシだってまぁ年頃なワケで、恋とかもしてみたいワケで……でもいくら身体が女とはいえ中身は男で……残念ながら男は恋愛対象外……)


 ん~、と腕を組み、眉を寄せて歩く瑠奈。


「おいっ、何か眉間にシワ寄ってるぞ……!?」

「お前、なんかいらんこと言って怒らせたんじゃないか!?」

「お、俺何も言ってないぞ!?」


 そんな話し声は、幸いにも考え事をしている瑠奈の耳には届いていない。


(かと言って今は女子のワタシが女子とそういうのっていうのは……いや、最近はLGBTとかの理解も深まってきてるって聞くし……)


「うぅ~ん……」


 音もなく静かに左右へ開く自動ドア。


(ま、今はダンジョンが恋人ってことで……いっか! あはっ!)


 勝手に悩んで勝手に解決。

 瑠奈は晴れた気分でギルド本部を出て行った。


 その際、自動ドアですれ違った一人の少女。


 瑠奈は気付かず足を進めていくが、今ギルドに入ろうとしていた少女は足を止めて振り返り、瑠奈の背中を見やる。


「あの人、確か……」


 サァ……と吹く風になびく、その少女の涼し気なセミロングの黒髪を瑠奈が見ることになるのは、今この瞬間からそう遠くない日だった――――







【あとがき】

 瑠奈――


 みんな~、いつもワタシの配信を見に来てくれてありがとう!

 チャンネル登録者数もかなり増えてきて、嬉しいな!


 コレってつまり……やっと、ワタシの可愛さが皆に理解され始めてきたって証拠だよね!? やった!


 これからもどんどんダンジョン探索の様子を配信していくつもりだから、よろしくねっ!


 もしワタシを応援してくれるよ~って人がいたら、是非ともチャンネル登録(作品のフォロー・作者フォロー)や高評価(♡や☆☆☆評価)をお願いしますっ!


 コメントも必ず読むようにしてるから、どしどしどうぞっ!


 じゃ、まったね~!!

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