第11話 絶体絶命の衝撃LIVE!?①
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◇ステータス情報◇
【早乙女瑠奈】Lv.18
・探索者ランク:E
(ランクアップまであと、↑Lv.2)
・保有経験値 :1400(↑1200)
(レベルアップまであと、400)
《スキル》
○なし
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「おかしいなぁ。モンスター全然出てこなくなっちゃったよ? もう少しでレベルアップなのにぃ~!」
【スナイピング・トード】の群れを一掃してからしばらくして、瑠奈はDランクダンジョンをさらに奥の方へと進んできていた。
ダンジョンの奥へ潜れば潜るほどモンスターは多くなり、強い個体が出現しやすくなる。
ゆえに、瑠奈は更に心躍る戦闘を期待して足を進めていたのだが、群れを一掃してからというもの、二、三体のモンスターとしか遭遇していない。
○コメント○
『マジでおらんな~』
『こんなモンスター出てこんことある?』
『ルーナちゃんが狩り尽くした説www』
『誰も自分から悪魔に近付こうとは思わんやろw』
『↑ルーナ悪魔呼ばわりされてて草』
…………
「ちょっとちょっと、誰が悪魔だって~?」
聞き捨てならないコメントに、瑠奈はドローン型カメラにグイっと顔を近付けてジト目を向ける。
美少女がそのご尊顔を寄せたのだから少しは『可愛い』『尊い』などと言ったコメントがあっても良いものだが、対照的な『ひいっ!』『殺されるぅ!』という風なコメントが加速して流れていく。
(お前らにはこの可愛さがわからんのかっ……!?)
モンスターはいないし誰にも可愛さを理解してもらえないし……そんな色々な意味でため息を禁じ得ない瑠奈。
このまま視聴者のコメントに反応しているだけでは、事態は何も解決しない。
どうしたものか、瑠奈が何気なく周囲を見渡していると――――
「ん? あれは……他の探索者……?」
これから瑠奈が進もうとしていた方向――ダンジョンの奥の方から慌てて走ってくる四人の探索者の姿が見えた。
男性と女性がそれぞれ二人。
高校生……よりはもう少し大人な気がするので、恐らくは二十歳くらい。
「今から帰るのかな……あっ、そうだ。あの人達にモンスターどこにいるか聞いてみようかなっ!」
瑠奈は視聴者にそう考えを説明しつつ、駆けてくる四人に声を掛けようと小さく手を持ち上げてみる。
「あのっ、すみませ~ん! モンスターって――」
「――退けッ!」
「きゃっ……!?」
愛想の良い笑みを浮かべて近寄った瑠奈は、先頭を走っていた男性に突然押し退けられてしまった。
よろめく瑠奈に目もくれず、四人はダンジョンゲートのある方へそのまま走っていく。
「…………」
瑠奈は振り返って、徐々に小さくなっていく四人の背中をスゥと細めた目で見詰めており…………
○コメント○
『怖い怖い怖い!』
『目がヤバい……』
『ルーナちゃんが睨んどる……』
『ガチで怒ってるなこれ』
『モンスターいないからって探索者は駄目だぞ』
『戦ってるときの目とはまた違う怖さあるな』
『ワイの息子がひゅぅって縮んだ』
『↑最初から小さいだけで草』
『↑辛辣で草』
…………
「――ちょ、ヤダなぁみんなぁ~。あはは~」
怒ってない怒ってない、と瑠奈は慌てて可愛らしい笑顔を取り戻して視聴者に伝えるが、内心ではしっかり舌打ちしていた。
「でも酷いよねぇ~? こんな立てば芍薬・座れば牡丹・歩く姿は百合の花のワタシを押し飛ばすなんてさぁ~」
○コメント○
『芍薬? 牡丹? 百合?』
『ん、花は見当たらないようだ……』
『ルーナの周りに咲いてるのは彼岸花だけだろ』
『立てば殺戮・座れば決着・歩く姿は彼岸花』
『↑上手いwww』
『最高www』
『センスあるわw』
…………
「あれぇ~? 『立てば殺戮・座れば決着・歩く姿は彼岸花』ぁ~? ねぇ、そんなこと言ってるの誰かなぁ? ねぇ?」
ハイライトの消え失せた瑠奈の金色の瞳をジッと向けられた視聴者達は、叫び声や謝罪のコメントを流していく。
そして、言った当人はというと、
○コメント○
『【¥30,000】ルーナ様どうかこれでお命だけはぁ!』
…………
赤色のスーパーチャットが飛ばされた。
瑠奈は初めて貰うスパチャにしばらく丸くした目を瞬かせたが、状況の理解が追い付くなり、それはもう幸せそうな笑顔をとろんと浮かべた。
「わぁ、赤スパチャだぁ! もぅしょうがないなぁ~、許してあげる~。えへへっ!」
押し寄せる『ちょろいw』『チョロすぎる』などのコメントにも今の瑠奈は寛容に見過ごしていた。
「よしっ、じゃあそろそろ探索再開しようかな! もっと奥に行けばモンスターいるかもしれないしね~!」
赤スパのお陰でテンションが上がった瑠奈は、大鎌を肩に担ぐようにして持ち、可愛らしく鼻歌を歌いながら脚を進めていく。
横目に映る景色が瑠奈が歩く速度で後ろに流れて行こうとも、やはり視界に映るのはどこまでも広がる湿地帯。
だが、同じ湿地でも徐々にその雰囲気が変化してくる。
空気が重く、こめかみをチリつかせるような感覚。
気分の問題だろうが、先程よりも景色が暗く感じられる。
相変わらずモンスターはいない。
不気味なほどに姿が見えない。
だというのに…………
「なんだろう、この妙な緊張感……?」
ふと、瑠奈は足を止めた。
周囲を見渡してもやはりモンスターの姿は見当たらないにもかかわらず、どうしても警戒を怠れない空気感。
瑠奈の本能が注意しろと訴え掛けてきている。
地面についた無数の傷、クレーターは明らかに自然のものではないし、周辺に自生している木のいくつかはへし折れてしまっている。
「これ、戦闘痕だよね? それも結構激しめな……」
瑠奈は違和感を覚えた。
(Dランクダンジョンの戦闘でこんなことになる? いや、さっき妙に焦った様子で走ってきた四人と何か関係が……?)
そうやって瑠奈が思考を巡らせているときだった。
バシャァアアアン!
突如瑠奈の背後に広がっていた大きな沼が吹き上がった。
遠慮も知らずに泥を巻き散らして姿を現したのは、とてもDランクダンジョンに生息していて良いとは思えないような大きな体躯を誇る蛇型モンスター。
泥を被っていて正確な色味は不明だが、全身を覆い尽くす鱗は見るからに硬質。刃のように鋭い瞳は黄色で、ジッと瑠奈を見下ろしている。
瑠奈もまた呆然とそんなモンスターを見詰め返しており…………
「何、あれ……?」
○コメント○
『逃げろ』
『逃げろ』
『今すぐ逃げろ!』
『逃げて!』
『どゆこと!?』
『は?』
『ここDランクダンジョンよな?』
『逃げろ!』
『あのモンスターなに?』
『↑Bランク』
『↑Bランクモンスター』
『ヤバすぎ』
『DランクダンジョンにBランクモンスター!?』
『は? あれ【アイアンスケイル・グレータースネーク】か?』
…………
Dランクダンジョンにて、イレギュラーが発生していた。
瑠奈は今、その現場のド真ん中に立っている――――
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