クソコメバトル~読者vs筆者のデスゲーム~

真心 糸

どっちもどっち

「レディース&ジェントルマン!

成金クソやろーの豚さんの皆様!

今年もやって参りました!

クソコメバトルのお時間です!

はい!拍手ー!」


パチパチパチパチ

「ハハハハ」


薄暗い室内、

円形のオペラの劇場のような場所でそれは始まった


オペラと違うのは、舞台は正面に配置されておらず

円形の中心にあるところだろう


2つの細長いステージ


落ちたら確実に死ぬような、かなり高いステージが2つ

スポットライトで照らされている

階段など、おりれるところはない


四角柱のその細長いステージ上には誰もおらず、四方の面には赤い幕が下ろされていた


そして、2つのステージの真ん中あたりには、

今しがた司会をしている男が、空中ブランコに乗ってマイクを握っている


ベネチアンマスクというのだろうか、怪しげな仮面を被った男だ

タキシードに身を包み、客たちを煽り続けている


そして、その男の言葉に笑い声をあげる客が数百人


高いステージを眺めやすいように、5階の席にばかり人が集中していた


観客席は、ブースごとに区切られていて、そのブースには2、3人の人が座っている

全員マスクを被って顔を隠していた


そして、ほとんどの観客が笑っていた


これから始まる演劇を楽しみにするように


「今年も!

このグリムバルが司会を努めさせていただきます!

この一年!

ワタクシのことが忘れられず!枕を濡らしたみなみなさま!

お待たせしました!

今年もこのような素晴らしいステージをご用意いただけたこと!

感謝しております!」


パチパチパチパチ


また、大きな拍手が劇場を包んだ


「さぁ!!

それではお待かね!

エントリーナンバー1番のお2人です!」


「読者サイド!ラノベン評価マン!」


「そしてー!筆者サイド!妄想書男センセー!」


パチパチパチパチ


拍手とともに、空中ブランコがステージの上から降りてきた

そこには、手首を固定された2人の男が不安そうな顔で座っている


そしてそのまま、

2つのステージ、それぞれにおろされた


手首の拘束がガチャリととれる


2人の男はキョロキョロと周りを見渡しながら、ステージ上を歩き回っていた


「さぁさぁ!役者が揃いました!

さっそくはじめていきましょう!

クソコメバトルの開幕です!」


「わぁぁぁぁ!!」


劇場から歓声があがる


「なんなんだこれは!」


ステージ上に転がっていたマイクを拾い、

妄想書男センセーが怒り声をあげた


メガネをかけた体格のいい男

グレーのポロシャツにジーパンを履いている


「おやおや、もうマイクに気づきましたか

さすがセンセー、素晴らしい」


「だから!なんなんだこれはと聞いている!

私は自宅で寝ていたはずだ!」


「それでは説明させていただきましょう!

クソコメバトル!

本イベントは!

2023年にクソコメをした読者と!

その読者をブロックした筆者のデスゲームです!

そちらにおられるラノベン評価マンさんは!

センセーの作品にクソコメを書かれた張本人!

そちらの方と戦っていただきます!」


「なんだと?」

妄想センセーは、もう一つのステージに立っている男の方を睨みつけた


睨まれた男はビクッと震える

上下ジャージで、汗ばんだ髪の太った男だった


不安そうな顔で両手の指をいじりながらキョロキョロとし続けている


「、、それで、私たちになにをしろと?」


「おぉ!物分かりのいい方ですね!

さすがセンセー!素晴らしい!」


「それで?」


「そうですね!

センセーと読者の方には!

実際に書かれたクソコメに対して議論していただき!

より説得力があった方が勝者となります!」


「、、それだけか?」


「はい!それだけでございます!

いたってシンプル!明快なゲームでございます!」


「僕!僕はクソコメなんてしてない!

家に帰してくれ!」


ここでラノベン評価マンがマイクを見つけてしゃべり出した

汗だくでブルブルと震えている


「おや?おやおや?

自分のクソコメに自覚がないと?

ふーむ?ではなぜセンセーはあなたをブロックしたのでしょう?」


「そんなこと知るか!

そ!そいつが短気なだけだろ!」


「なんだと?

グリムバル、と言ったか?」


「はいはい!なんなりと!」


「こいつが書き込んだクソコメとやらを見せてもらえるだろうか?」


「もちろんです!それがゲームのスタートですので!

それではいってみましょー!

クソコメ!オープン!」


ドドン


そんな効果音と共に、四方に設置されたモニターに文章が表示された


-------------------------------------------------------------

貴重なエルフ奴隷の金額が500万なのはおかしくね?

家買うときは3000万とかだったよな?

だったら数倍でもよかった気がする

修正キボンヌ

-------------------------------------------------------------


「、、これか、、」


「おぉ!やはりセンセーは覚えておいでのようだ!

なにせすぐにブロックされましたもんね!」


「だな、こういったモチベが下がるコメントは記憶に残るものだ」


「ではでは!評価マンの言い分も聞いてみましょう!

あなたはこれがクソコメだという自覚はありますか?」


「は?はぁ?

別にクソコメじゃねーだろ!

金銭感覚おかしいんじゃねーかって話!

貴重だって書いてあったじゃん!

だから金額おかしいかなって!

思っただけだし!」


「いちいち、こんなことを説明しないといけないのか、、」


「センセー、ちゃんと説明してください

負けちゃいますよー?」


「はぁ、、

作品によって奴隷などの人身売買の価格は様々だと思う

しかし、私の作品では現実世界と同じくらいの金銭感覚で書いている

だからエルフは500万とした

人間などの奴隷は30万ほどだっただろう?

10倍以上だ、十分貴重ではないか?」


「だから!だからだから!

家が3000万なのに!!」


「現実世界の建売戸建ては、田舎だと2000から3000万ほどのはずだ

それを基準にした

そして、現実世界で生産性のない娯楽品のために500万を現金で出せる人物はどれくらいいるだろうか?

キミの年収はいくらなんだ?」


「ぼ、、僕は今は、、働いてないから、、」


「なるほど、では、キミが年収500万だったとしよう

独身だとして実家暮らしで節約したとしても、せいぜい1年で200万ほどしか貯金はできないと思う

では、2年半分の貯金を娯楽のために使えるか?」


「いや、、だって、、エルフは貴重だし、、」


「まぁ、お金の価値は人それぞれだ

別にキミがそう思うのは構わん

しかし、私は私なりの考えで小説を書いている

修正する気はない

以上だ」


「ぼ、、ぼぼ、僕は、、

ただ、、変だって、、」


「おや?おやおや?もうよろしいですか?

よろしいですね!

それでは!投票に入りましょう!

皆さまお手元のパネルで読者かそれとも筆者か、どちらが正しいかをご投票ください!」


グリムバルの呼びかけに応えて、観客たちがパネルを片手に掲げ出した


棒の先端に丸いパネルがついたそれには

または

の漢字が書かれている


「ふむふむ、ふむふーむ!

グリムバルアイ!」


ブランコに乗ったグリムバルは、片手でオペラグラスを持って観客席を見渡していた

数を数えているのだろうか


「オーケーです!

成金のみなさま!ありがとうございます!

今回は明確でしたね!

9割以上の方がセンセーを支持しましたので!

筆者サイドの勝利となります!」


パンパカパーン


気の抜けたファンファーレが鳴り響き、4つのモニターに

------------

筆者WIN

------------

の文字が表示された


「それでは負けた読者サイド!

ラノベン評価マンさんには罰ゲームでっす!!」


バサ

バサバサ


グリムバルの掛け声に応じて、読者と筆者のステージに掲げられいた赤い幕が落ちていく


その幕の後ろは、透明なガラスになっていて、

四角柱の中には、とても鋭利な槍が

槍の束が、天に向かって伸びていた

剣山のように


「なっ!?なんだこれは!!」


「ぼ、ぼく、、僕は、、悪くない、悪くない、、」


「あれ?言ってませんでしたっけ?

デスゲームだって

はい!それでは評価マンさん!

さよーならー!」


「え?」


ガコン


男は自分の置かれている状況に気づく前に

落とされた

ステージの底に


良かったのかもしれない、気付いていたら正気ではいられなかっただろう


グシャ


男は槍ぶすまに突き刺さり、ステージを囲むガラスには赤い血液が飛び散った


「こ、こんなことが、、」


妄想書男先生は、その惨状をステージ上から覗き込み

狼狽えた表情を見せる


「おやー?おやおや?

センセーはお優しいのでしょうか?

ちなみに今のお気持ちは?

罪悪感とかあったりしますー?」


「、、いや、グロいな

程度だ

自業自得ではないか?」


「ハッハー!素晴らしいサイコパス!

ありがとうございます!!

ファーストステージは筆者サイドの勝利になります!!

みなさま拍手ー!!」


パチパチパチパチ


「それでは!センセーにはご退席いただき、

セカンドステージにいきましょー!」


妄想書男先生は空中ブランコにのり去っていった


ほどなくして、あらたな2人が拘束された状態で降ろされてくる


2人は幕がおりたステージの下を見てギョッとしていた


先ほどの惨状はそのままだからだ


そんな2人を放置して、グリムバルがクソコメバトルについて説明し、

セカンドステージの幕があけた


「それでは!

クソコメオープン!」


--------------------------------------------------------

この主人公エロいことしか考えてない件(笑


いやいや(笑

なんでこのヒロイン、主人公に惚れたの?

意味不なんですけど(笑


また嫁増えた(笑

こんなポンポン嫁増えて、

今の奥さんたちは怒ったりしないんかなぁ(笑

--------------------------------------------------------


「これらのコメントは別アカウントからの投稿でしたが、全て同一人物です

その人物とは、そちらにおられますマッキーさんです」


指をさされた男

読者サイドのステージにいるその男は、50近くのガリガリの男で、生気のない目をしていた


「おまえ、、おまえかー!

なんどもなんどもクソコメ書きやがって!!

キモいんだよ!!」


激昂する女

筆者サイドに立つ女はまだ若い女性だった

仕事帰りなのかスーツ姿で、髪はポニーテールでまとめている


「いや、しかしね?

ヒロインの感情の描写とかが少なすぎてよくわからないんですよ(笑

なんで惚れてんのかね?」


「いちいち説明しねーとわからねーのか!

だからテメーは彼女も嫁もいねーんだ!

キモ男!!」


「な、なぜ彼女がいないと?

そ、そそ、そんなことわからないではないですか?

それにですね、あなたの作品はすぐに嫁が増えますが、

増えた後は以前の嫁がぜんぜんしゃべらなくなるのが気になります

消えたんですか?

なんなんですか?」


「うるせー!めんどくせーな!

ハーレムものだって言ってんだろ!

タイトル読め!タイトル!!」


「いや、それにしたって(笑」


「笑笑、笑笑!キメーんだよ!!

バカにしてんのか!!

おまえの(笑)を見るだけで気が狂いそうになるんだよ!!

こっちは働きながら必死に書いてんだ!!

バカにするくらいなら読むな!

バーカ!!死ねー!!

キモいキモいキモい!!」


「おぉ〜、、センセーめちゃくちゃヒステリー発動してますね

このあたりで投票に入りましょうか

グリムバルー!アイ!

ふむふむ、ふむふむ

出揃いました!

今回は〜!

少しだけ読者サイドの勝利!

では!ヒステリー先生ばいばぁーい!」


「キモいキモいキモい、、」


ガコン


「え?きゃー!!」


グシャ


ヒステリー先生はステージ下に落とされて串刺しになった


「お、おえ、、おぇぇぇ」


読者サイドにいたマッキーはゲロを吐きはじめる


「あらあらー

お掃除めんどくさいですねー

もうこっちも落としちゃっていいですかね?

僅差でしたし」


「おとせ!おとせ!」


観客のコール


「ま、まて、、話がちが、、」


ガコン


「あ、ボタン押しちゃいました

ハッハー!」


グシャリ


読者サイドのステージに2人目の死体が鎮座した

重なり合うように串刺しになっている


「それでは、サードステージ参りましょー!!」


「わぁぁぁぁ!!」


観客は大盛り上がりであった


「本日のサードステージは〜

読者サイド!その日暮らしさん!

筆者サイド!真心糸先生です!」


パチパチパチパチ


2人の男が空中ブランコに乗って降ろされてきた


その日暮らし、そう呼ばれた男はまだ高校生くらいの若い男、学生服を着ている

クソコメを書きそうにはない好青年であった


対する読者サイド

真心糸、性格の悪そうなメガネ男である

うん、キモいね


「では!はじめましょう!クソコメバトルー!」


グリムバルがクソコメバトルについて説明をはじめる

そしてゲームの幕が降りた


「クソコメー!オープン!」


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いつも楽しく読んでおりました

しかし今回の展開は、、

すみません、好きなキャラがひどい目にあったので低評価とさせていただきます

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「あー、、」


糸先生は思い当たったかのようにそう呟く


「あ、あの、、」


高校生の男は気まずそうに話しはじめた


「あー、はい」


「その、あのときはすみません、、でした、、」


「いや、、こちらこそブロックしてしまって、、いつも応援してくれてたのに、、」


気まずそうに謝りだす2人


「おや?おやおや?

お2人ともわかってます?これはデスゲーム!!

どちらかが死ぬんですよ!!

ほら!はやく罵り合って!!」


「あーうん、、じゃあ、

えっと、、その日暮らし君、暮らし君でいいかな?

キミはライオットのことが好きだったんだよね?

そのライオットの右手が吹き飛んで、格闘家としての再起が不可能になった

それが気に入らなかった、と」


「はい、、そうです、、

なので、つい、低評価を、、

それにわざわざコメントまで書いてしまって、、」


「まぁ、、オレもあそこの展開は悩んだんだー

別にあそこまでひどい結末にしなくても良かったかなって

でもさ、実はオーバーテクノロジーのスゲー義手を見つけてさ、

ライオットを復活させようと思ってたんだよね

まだだいぶ先だけど」


「ほ!ホントですか!それは楽しみです!」


「あー!もう!!

だから罵り合えって!!

どっちも殺すぞ!クソバカども!!」


グリムバルがキレはじめる


「あー、、」


ゴソゴソ


糸先生はポケットに片手を入れて、スマホを取り出した


それを

「暮らし君!これ!」

と言って投げる


パシ


暮らし君はそれをキャッチした


「それにオレの小説の続きが入ってるから

代わりに投稿しといてよ

メモ帳にアカウントとかパスワードも書いてあるから」


「え?先生?」


「、、ふぅ、、

バーカ!バーカ!

クソコメ書きやがって!クソガキ!

死ね死ね!

はい、、投票どうぞー」


諦めたように、床に座って目を閉じる糸先生


「先生!?」


「あー、、なにこれ、、

興醒めですねー

キモいので筆者の方を落としますかー

ほんでは、、」


グリムバルが手元のスイッチを押そうとする


「先生待ってください!」


暮らし君がステージ上からジャンプし、筆者サイドのステージに乗り込んできた


「なにしてる!戻りなさい!」


「イヤです!僕は先生の作品を読みたいから!

だから!」


「いいから戻れって!バカタレ!!」


「イヤです!」


取っ組み合う2人


「はぁ、、ダル、、さよなら、、」


ガコン


グリムバルの非情な一言とともに

2人が立っている床が抜けた


落ちていく、そして、槍ぶすまが目の前に、、


と思ったらさらに床が抜けた


「は?」


槍に刺さることもなく、2人は落ちる


そしてそのまま落ちた先には


ボフ


巨大なクッションが用意されていた


「なにこれ?

あー、、【危機一髪】ってやつ?」


「助かった?先生!」


「あー、、うん、、なにこれ?

いや、てかキミ馬鹿なの?

なにがしたかったわけ?」


「僕はこれからも先生が生み出す作品が読みたいんです!

だから止めたくって!!」


「、、そ、それは、、めっちゃ、、めちゃくちゃ嬉しいけどさ、、

いやでも、、」


ブン


パンパカパーン!


間抜けないファンファーレと共に、巨大なモニターに映像が映し出される


「いやー!素晴らしい!

感動!!感動です!!

これぞ読者と筆者のあるべき姿!

お互いを支え合い!

楽しみを与え!それを受け取り!

笑顔になる!

んー!実に素晴らしい!」


仮面の男、グリムバルであった


「お2人には!特別に!

ええ!それはもう特別に!

生存チケットを与えちゃいます!

これからも素晴らしい世界を生み出してください!

それでは!」


ブツン


「いや、、だからどういうこと、、」


糸先生の呟きのあと、ヒラヒラと頭上の穴から紙が落ちてきた

2枚だ


その紙には、

------------------------------------

*生存チケット*

パンパカパーン!おめでとー!

------------------------------------

と書かれている


ブン!バチ、、バチバチ、、


突然、壁際が光ったかと思うと、

------------

現実世界

------------

と書かれたカラフルなネオンライトが点灯していた

その下は黒い扉がある


「あー、、怪しい、、怪しすぎる、、」


「先生、行きましょう」


「あれに?」


ネオンライトを指差す


「はい、ここにいても、なんかイヤな感じがします」


「まぁ、それはそうだけど

いや、いくか~」


2人して巨大クッションからおりて、扉の方に向かう


「あ、これ、渡しておくね」


チケットを1枚、暮らしくんに渡す


「ありがとうございます

、、それと、クソコメして、、ホントすみません、、」


「いや、もういいよ

オレの方こそ、たくさんあったかいコメントくれてたのに、一回だけのネガティブコメでブロックしてごめんな

帰ったらすぐブロック解除するから」


「僕もコメント消します!

これからは!ポジティブなコメントだけにします!」


「いや、まぁ、指摘とかネガティブな感想も別にいいよ

でもさ、できれば筆者が傷つかないような文章だと、、助かる、助かります」


「はい!心がけます!」


こうして、2人の男は

現実世界の扉の奥に消えていった

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クソコメバトル~読者vs筆者のデスゲーム~ 真心 糸 @magocoro_ito

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