第4話:勝利の宴

〜城塞都市ラース内では宴の準備がされていた。帝国に対して初の勝利を勝ち取った喜びと未来への希望にラースの民は喝采に包まれていた。街の至るとこで装飾が目立ちいわば一種の祝日騒だ〜


「賑やかですね」


「おう!俺の自慢の街だ!」


〜城塞都市の中央に位置する城から街を眺めているのはこの城塞都市の王ラムセス・オジマンディアウス2世と『若き反乱の王』アーサー・エンランド〜

「もうすぐ大宴の時間だな!馬車を待たせてあるはずだ、行こうではないかアーサー王!」


「はい、あと『王』はやめてください。僕はまだそんな大層な者ではないのですから」


馬車は2台用意された、一つはラムセス王とその妃ネフェルタリが乗り、もう一方は僕と護衛役としてベディが乗った。アレキサンダー将軍は先に宴会場に行き警備をしている。馬車に揺られながら見る街並みも綺麗だった、装飾は眩く豪華で僕たちの馬車が通ると歓声で溢れた。20分もしない内に宴会場に着いた、エントランスは豪華で金ピカな装飾はもちろん、見たことない絵や鎧が飾ってあった。王も出席していることから警備は頑丈だ。常に一組4人体制で周囲を巡回し、バルコニーや窓際には必ず警備の兵が立っていた。中に入ると大勢の貴族が居た、中は吹き抜け構造で2階はバルコニーのような感じだった。発光石を紐に取り付けて宴会場の端から端へと繋いでる。一階の外壁周りは全てキッチンになっておりいつでも料理が出せる状態だった。先に来ていたアレキサンダー将軍と合流した。

「ううむ、貴殿の正装を見ると益々アルフィール王を思い出すのぉ。そうじゃ、わっしの倅を紹介しよう。ええと…」


彼が振り向いた先には遠くで女性といちゃついてる男がいた。

「「こぉれぇい!!!!」」


「うわぉい!そんなでけぇ声出さなくてもきこえってっからヨォ、じじぃ!」


「すまないのぉ、わっしの倅は少し破天候というかなんというか」


「ったくいい雰囲気だったのにヨォ、何用ダァ?」


「これちゃんとせぇ!ええとこのドラ息子がわっしの倅のクレートスじゃ」


紹介されたのは褐色肌の長身男だった

「こんばんは、僕はアーサー・エンランドです」


「アァ?アーサーぁ?ん〜どっかで聞いたようナァ?あー!あのちびっこ将軍!」


ごつん、と凄まじい音が響いた。痛みに悶絶するクレートス

「…紹介されましたクレートスっス…これからよろしくっス…」


「はい、よろしくお願いします」


しばらく雑談したあと支配人に奥にあるステージに呼ばれた。さんざん準備させられた演説の出番のようだ。はじめにラムセス王が演説をする予定だ。

「今夜お集まりいただいたのは今日という歴史的な日を讃えるためです。それでは今日の主役を迎え入れましょう!アーサー・エンランド!」


「えー紹介に預かりました、アーサー・エンランドです。今夜はお集まりいただいてありがとうございます。えー…」


と延々と覚えたスクリプトを喋っていく。初めてこんなにも多い人の前で喋るからだいぶ緊張してきた。3分ほど喋った後お辞儀して舞台から降りた。

「お疲れ様です、アーサー様」


「ありがとう、ベディ」


「あちらに美味しいお料理がありましたので持って参りました」


「うん、ありがとうね。 うまいね、これ!」


ベディが持ってきたのは大きめのプレートに限界まで盛り込んだ物だった。見た目はアレだが、一個一個はうまい。肉料理や魚料理や見た事ないような料理が盛りだくさん。突然後ろから声をかけられた。

「あんたがアーサーかい?」


「え、そうですけど」


「んじゃまぁ、死ねや」


「アーサー様!!」


黒いローブに包まれたガタイのいい男がいた。両手にはナイフが見えた。あ、やばいと気づいた時にはもうナイフは目の前にありもうどうしようもない状況だった。

「気をつけねぇと早死にしちまうゾォ、ちびっこ将軍!!」


カァァン!と鋭い音がした。

「危なかったナァ。だが安心シナ、もぉ大丈夫ダァ」


「…なにもんだ、あんた?」


「おりゃクレートス、ヘタイロイ2番隊隊長ジャ!槍の名手タァこのクレートスの事ヨォ!」


「チッ、暗殺失敗、帰還する」


「逃がすかヨォ!」


僕は尻餅ついてただ見守るだけだった。

「アーサー様!大丈夫ですか!?」


「あ、ああ…僕は大丈夫だ…」


一瞬で距離をとった暗殺者に1秒も掛からぬ内にクレートスは追いついた。

「!!」


「遅い遅いィ!」


宴会場はカオスだった。逃げ惑う者や子供の鳴き声。

「悪いがあんたに関わってる暇はないんだよ」


「知らねぇナァ!」


「!重いな…!この一撃…!あんた、魔法使ってるのかい!?」


「んなもんに頼んなくても、修行すりゃ何とでもなる、サァ!!」


「くそったれが!あんたしつこいぞ!」


暗殺者は煙幕を使った。一瞬で周りに広がり辺りが見えなくなった

「卑怯くせーナァ、テメェ!?どこ行っタァ、出てきやがレェ!」


煙幕は数十秒で消えてった。そこには暗殺者の姿はなく、呆然と立ち尽くす招待客しかいなかった。

「チッ、逃げられたカ…」


数時間後、200人の兵を動員して調査が行われたが何一つとして手掛かりをつかめなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る