「主人公はクズ男?」女泣かせの元バーテン
神無月ナナメ
第2話「危機一髪」
女子トイレまで移動すると洗面台に手を置いたリリがいきなり話し始めた。
「ねぇヒカルちゃん。ジロウくんに対する想い……ホントのとこを教えてよ」
「リリちゃんが……ジロウさんに守られる関係。邪魔したいわけじゃないの。
ジロウさん塩対応だけど格好いいから……女なら大半が恋に落ちちゃうんだ」
目線を合わせマジメに伝えるリリに向けて戸惑いながらヒカルが即応する。
「ふーん。リリもバカ三人組に路地裏で攫われかけて颯爽と救われたんだよ。
いきなりぶっ飛ばして……一目ぼれしちゃうよね。そんなシチュエーション」
「あたしも一緒いっしょ。事務所つぶれた元アイドルの……再デビューでさ。
コスプレ姿でパチ屋に呼ばれてカメラ小僧。追っかけに愛想振りまくんだよ」
女子トイレにリリしかいない状況で本音を打ち明けるように顔をしかめた。
「たまにいるの。しつこくプライベートに踏みこもうとするバカなオタ野郎。
マネさんいないと抱きつこうとしたり触ってきたりとマジでキモイんだよね」
当時を振り返って苦虫を嚙み潰したような表情のヒカルが胸を腕に抱える。
「もちろん普通のヤツらもいる……おデブさんやヒョロくん率ゲキ高いけど」
生理的な意味の嫌悪感だろうか。ヒカルは虫唾の走ったような表情になる。
「帰り道出待ちみたいな男がいてさ。怖くて座りこんだらジロウさんの登場。
『どうした?』とか声かけしてから男たち睨みつけてあの体と声の威嚇だよ」
「へぇジロウくん。さすがイケメンだよねぇ」感心したような顔になるリリ。
「そそそ。二メートルに近いイケメンのご登場で男たち一瞬でビビりまくり。
てかさぁ……ジロウさん当時のこと振ってもなんだそれって。マジ笑えない」
「アッハッハ。ジロウくん昔からそうなんだ。悪意なくてもひどすぎるよね」
「ほんとホント。バーテンダーのお仕事や撮影だけ女に甘くなるジゴロだよ。
でもねぇ……ジャンバリの演者やスタッフさん。ミナミで忘年会やったんだ」
閉鎖空間の女同士……話題は弾み流れが変わりヒカルのヤバい打ち明け話。
ほとんど内容を理解しなくても相槌を打ち感心するリリに口まで軽くなった。
「解散前に飲みすぎたのか……酔っぱらいみたいにトイレこもっちゃってさ。
席に戻ろうとしたら面識ないカメラマン。あたしの荷物抱えて待ってんだよ」
「ふぅーん。あんまわかんないけど飲み会じゃん……めっちゃアヤしくね?」
「そうそう勝手に女の手荷物コートに触ってんだもん。めっちゃヤバいよね。
それで二次会どうのこうのと勝手にしゃべってっから荷物奪って逃げたんだ」
「うおぅヒカルちゃん危機一髪じゃん」わざとらしい身振りで引きつるリリ。
「うんうんうん。なんかヤバいから速足で出口に向かうとジロウさんがいた」
「それってマジ? やっぱりジロウくんピンチに駆けつけるヒーローじゃん」
「うん。妙にあわてる姿にびっくりしながらタクシー呼んで乗せてくれたの」
神に選ばれたような持っている人なんて一言で片づけられない……主人公。
「主人公はクズ男?」女泣かせの元バーテン 神無月ナナメ @ucchii107
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