第10話

 ●月☆日


 全く困ったものだ。私とこのひとはいつの間にか両想いになっていたようだ。しかしどちらにせよ、私達は結ばれてはいけない身だ。しかし私は何を血迷ったか「これでお別れで良いのでしょうか」と言ってしまった。


 なんてダメな私なのでしょう。この期に及んでこんな台詞を口にするなんて。慌てて「いえ、今のは忘れてください」と言った。しかし彼は、少し考えて「良くはないですね」と言った。


 あちらも自らが発した予想外の言葉に驚いたようだ。しかし彼は迷うことなく私と一緒にいることを望んだ。「一緒にここで暮らしませんか」という台詞と共に。私は「それで良いのか」と問う。「構わない」と彼は真っすぐな目で言う。


 その決意に、どうして抗えよう。私は痛みを抱えて生きることを放棄して、歪で目の前にある幸福に手を伸ばすことに決めた。

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