僕らのミッション(13)

「もうバレちゃいました?」

「うん、山谷アキはいなかったけど、それと似た名前の人がいるってD組の友達に聞いた。その名前が、いつも僕の後ろに並んでる子だって覚えてたし」


 塾内で張り出される模擬テストの結果、一位は僕で彼女はいつも二位。

『やっぱ頭いいよね、柏崎くん、さすが』

 初対面なはずなのに、違和感を感じていた。


「僕らの計画知ったのって、塾で?」

「うん、帰り道、前を歩いてた柏崎くんの計画が、楽しそうだなって、思っちゃって、それで……」

「先生に没収されたのがゲームソフトだなんて言ってなかったのに、なんで知ってるんだろって思ってた」


『夏休み明けにゲームが無くなっていたらバレちゃうかもしれないでしょ』

 僕らが取り返したいものを知っていたのも、体育館倉庫の鍵を開けることもその時に聞いて知っていたんだ。


「あと……信号でトラックが通り過ぎた後、いなくなったのは」

「……トラックに驚いて草原に転びました」

「なんだよ、それ!」

「良かった、オバケじゃなかった」

「オバケじゃないよ、足はあるし」


 恥ずかしそうに笑った水谷さんを見て、タケとレンレンも笑い出す。

 山谷アキさんは活発で、だけど水谷ハルさんはいつも目立たないような子だった。

 今まで一度も話したことはなく、ひっそりと座っているような子、そんな印象しかなかったけれど。


「ごめんなさい、嘘ついてて……。前から柏崎くんたちが同じ学校なのは知ってて、いつも楽しそうで、友達になりたいなって思ってて。でもA組とD組じゃ学校で声をかけることもできないし。それであの日、計画を知っちゃって、一度でいいから一緒に遊んでみたいなって、その、本当にごめんなさい」

「そっか……、うん、わかった。じゃあ、まずは今日の帰りにアイス奢ることにする」

「え?」

「次会ったら、奢れって言ってたじゃん? あと、水谷さんって、ゲームやってたりする?」

「実は、やってる。柏崎くんの持ってたゲームもやってた」

「んじゃ、やろうよ、一緒に! もう友達、だろ?」


 恥ずかしそうに笑う彼女に、僕は手を差し出した。

 彼女が僕の手を握ると、タケがその上に、そしてレンレンの手が重なり四人とも笑顔になる。

 僕らは、ひと夏のとんでもないミッションをクリアした特別な仲間だ。

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