第11話 ざ・つんでれ

「俺の名前は【ユーハイム】だ。君は?」

「ハム?」

「ちゃうわぼけぇ!…ユーハイムだ!ユーハイム!バームクーヘンで有名な!」

「ば、ばーむくーへん?」


ぽかーんとした表情を浮かべる目の前の侵入者。


(あ、もしかしてこの世界にバームクーヘンって存在しないとか?)

『もしくは別名で同じ商品が存在しているかとかですねぇ~』

(別名か…っとまぁソレはともかくよ!)


「こっちが名乗ったんだアンタの名前は?」

「わ、私のな、名前は‥‥ひ、秘密だ!」

「‥‥」

「も、黙秘する!」


黙秘って…まぁどんな重罪人にも逮捕される前なら黙秘権を持っているし間違ってはいないんだが‥‥心象としては悪いな。


「はぁ名前は黙秘と‥‥じゃぁなんで不法侵入した?」

「も、黙秘する!」

「動機も黙秘っと‥‥じゃぁ次。俺に対する変態行為は何故行った?」

「へ、変態行為!?」

「何故驚くよ?寝てる男の顔にいきなり胸押し付けるとか…変態行為以外の何物でもないぞ?」

「そ、それは‥‥偶然…そう!偶然起こった出来事なの!」

「ふーん。『偶然』ねぇ~‥‥まぁいいか。じゃぁ最後。なんで家…じゃぁねーか。部屋を漁った?」

「‥‥言いたくないわ‥‥」


ふむ。

探し物の話だけ急に神妙な雰囲気になったなコイツ‥‥なにか隠してるとかか?


(なーなーばーむさん?)

『quoi?』

(‥‥え?何語?)

『Francais』

(フランス語かい!‥‥ってアレ?自動翻訳あるんじゃないの?)

『Seules les langues d‘autres mondes sont prises en charge.』

(ぱ、ぱーどぅん?)

『異世界の言語にのみ対応してます』

(ごめん…そんな無駄に高性能さ発揮しなくていから!お願いだからいつもの超高性能AIに戻ってよ!)

『仕方ないっすねぇ~~~で?なんですか?』


なんでスキルであるコイツに媚びてるのか俺にも判らんが‥‥ってそうじゃなくて!


(なんか目の前の不審者だけど『探し物』の話を出した途端に妙に雰囲気変わってね?)

『えーっと…何々?‥‥ん~気のせいじゃない?』

(‥‥マジっすか?)

『いくら超高性能な私でも他人の感情の機微までは読み取れませんよぉ~』

(‥‥そうっすか)


まぁばーむちゃんの言い分も最もなのでそこに文句を言うつもりはない。


とは言え…この不審者はさっきから完全黙秘してるしな~

それにここが元居た世界なら警察呼んで即逮捕か弱みに付け込んで『あ~れ~おゆるしぉ~お代官さまぁ~』的なピンク展開にするかなんだが‥‥


「どっちも面倒だな。と言う訳で…不法侵入と変態行為をやらかしたそこの不審者さん?」

「っちょ!変な呼び名つけないでよ!」

「‥‥じゃぁ名乗れよ」

「‥‥も、黙秘よ!」


(め、めんどくせぇ‥‥もうこの際パクっと行っちゃう?)

『イケイケゴーゴー!据え膳食わぬは男の恥!ってことでさぁ!さぁさぁ!』

(お前はどっちの‥‥って最初から『食え』って言ってましたねばーむちゃん)


そうなのだ。

残念な事に脳内住人であるカロリー消費型~以下略のばーむちゃんは据え膳は頂け!発言をしていたのでここでパクっとってしても咎められる事はないだろう。


『あ、なんなら股間を巨大化すれば?『ぐへへへ!俺のマグナムが火を噴くぜぇ?』って』

(いやいや‥‥体の一部を巨大化って‥‥出来る訳ないじゃん)

『‥‥冗談ですよぉ~?』


内容が内容なだけに笑えねーよ!

もし部分的に巨大化出来ればマジで俺のマグナムが~以下略になりかねん。


それに‥‥もし可能で有ればやってみたいと思うのが男だしね!


「まったくばーむちゃんは‥‥っとまぁもう名乗らないならお前は『痴女A』と呼称しよう。それがイヤなら名乗れよ?」

「っく!痴女ですって!?‥‥はぁ…もう好きに呼びなさいよ!」


おぉ~!

ビジュアル的には金髪のプライドの高そうなお嬢様に今のセリフを言って貰いたかったが‥‥まぁコレはコレでアリっすね。


まさにざ・ツンデレ!って感じで良いな。


「‥‥よーし本人も納得したところで下の階にいるバーさんの所にいくぞ?ちゃんとついて来いよ?変態女A」

「っちょ!なんで名前が変わるってるのよ!私は変態じゃない!」


うがー!とかみつかんばかりの勢いで反抗する美少女系不法侵入。


(‥‥えー?さっきなんでもいいって言ったじゃん‥‥コイツの思考回路どうーなってんのよ?)

『Oh! Happy-go-lucky , overly optimistic !!』

(‥‥まだこネタ引っ張るんかい…で?どんな意味?)

『頭の中お花畑』


人工知能スキルが汚い言葉使うなよ!

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