第10話 コイツは‥‥ヤバい子や
こちらの覚悟も決まったところで侵入者も動き出した。
抜き足差し足でまっすぐ俺の寝ているベッドに近づく侵入者に内心ドキドキしながらも顔くらいは観たいなと思って薄眼を空けて待機していると侵入者は寝ている俺に覆いかぶさってきた。
(!?…流石にこれは予想外すぎるぞ!?)
「あれぇ~確かここら辺に‥‥あ、こっちかも?」
仰向けで寝居ている俺の体に跨り首元に肘をつけて俺の頭の辺り、正確に言えば枕の下に手を突っ込ん何かを探している様だった。
(にしても‥‥侵入者はバーさんに連行された女か‥‥)
若干見覚えがあるな~と思ったがその実ビンゴだったらしい。
そして先程は判らなかったが侵入者はメロンサイズの物をお持ちの様で腕の動きに連動して俺の顔にボインボイン当たる。
男としてはある意味夢のシュチュだが…実際に体験した感想は――
(純粋に苦しい!中途半端に口と鼻が塞がれるから呼吸のタイミングが合わない!それにこっそり顔を動かしてもホーミングしてくるから息が吸えない!そしてなにより‥‥おっぱいって重いのね‥‥段々首が痛くなってきたよ)
そう言えば昔聞いた事がある特定のカップ数を超えると片乳だけでもkg単位になるって。
そんあ質量兵器を惜しげもなく投入されてはさしもの俺も限界だ。
「‥‥もう無理!限界!苦しい!」
「え?‥‥」
「はぁ‥‥はぁ‥‥ようやく‥‥息が…出来た‥‥あー空気うめぇ~」
「き、きき、きき…」
「き?…(あ、マズイこれ大声で悲鳴上げる奴だ)」
「んぐ~~~~!!!!」
叫ばれる前に間一髪口を終えさえる事に成功した俺は安堵の溜息をついた。
そして今だにむぐむぐ言っている侵入者の姿を改めて確認する事にした。
頭皮に近い部分は真っ白なのだが毛先に向かってどんどんと青色が濃くっているまさにグラデーションの様な髪色に猫の瞳の様に金色の双眸。
目鼻立ちは整っていてまぁ美少女と呼んで差し支えないルックスだ。
「むぐぅぅ!んぐぅ!!」
「とは言え‥鍵をこじ開けて部屋に不法侵入した挙句、寝ている俺を窒息死させようとする殺人未遂に部屋を物色する空き巣‥‥完全にアウトですね?」
一応罪状を述べたが相手の反応が気になったので口を覆ている手を離す
「ぷは!‥‥こ、ここは私の部屋よ!」
「‥‥は?」
「だから…ここは私の部屋なの!だから私が居てもおかしくないの!」
「‥‥」
やっべぇ~
この人マジの犯罪者じゃん。
理屈が通らないって‥‥ヤバくね?てか俺今更ながらに身の危険を感じて来たんだけど‥‥どうしよう!
「‥‥」
「だから…ここは私の部屋だから不法侵入とか空き巣とじゃないから!」
「‥‥(ばーむちゃんヘルプ!マジで緊急事態かもしれん!)」
ヤバい雰囲気を出し始めた侵入者さんを警戒しつつ頼れる?助っ人を呼ぶことにした。
『ん~ねむねむ‥‥どうしましたぁ~?夜這いでも掛けられましたかぁ~?』
(おぉ!流石っすね!簡潔に言うと侵入者が来た。但し相手は結構バカの疑いあり。増援を求む)
『ふむふむ‥‥ちょっと待ってねぇ~通常モードに切り替えるから‥‥んしょ!‥‥で?会話のログは‥‥っとふむなるほどなるほど確かにヤバいね!』
(え?ログ?なにそのギャルゲーみたいな単語!会話ログって…見れるんかよ!やべぇなそれ!)
『まぁ私ってほら…特別製だからね!っと今はそんな事よりも…マスターに跨ってる美少女ちゃんのことだよ!』
(あ、ああ。でどうすればいい?)
『一先ず体制を変えよう。このままだとうっかり首を絞められそう‥‥』
(そ、それは困る!)
という訳でお互いに何か言う前に1人は備え付けの椅子。もう一人はベッドに座り明かりをつけてまず自己紹介から始めた。
「えーっと俺は‥‥ちょっと待ってね?」
「‥‥うん?」
(なぁ相棒)
『どうした相棒?』
(この場合俺はどう自己紹介ればいいの?)
別の世界で辻斬りに会い死んで女神様の力でこの世界に転生しました!と馬鹿正直伝えても多分荒唐無稽過ぎて理解されないと思う。
なのでまぁ恐らく二度と会う事もなさそうな相手なら適当な偽名で乗り切った方が身バレ防止にもなっていいんじゃないか?と思うのだが‥‥如何でしょうか!?
『まぁテキトーでいいんじない?名前なんてそれこそ新しい人生なんだし好きに決めればいいと思うよ?』
(ん~名前‥‥と言ってもパっと出てこないんだよね~)
『ならバームクーヘンに関係する名前にでもすれば?私と本体ってバームクーヘンって呼ばれてるし』
(ふむ‥‥バームクーヘンに関係した名前か…ん~パっと浮かぶのは有名どころの千疋屋とかユーハイムとかだが?)
『ユーハイム‥‥調度良いじゃん!ユーハイムで決定~!』
いやユーハイムって‥‥バームクーヘンの製造メーカーだぞ?ってまぁいいか。
もう考えるのも面倒になってきたし…適当でええやろ!
と言う訳で俺の名前は『ユーハイム』に決まった瞬間だった。
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