第9話 オラァちょっと面貸せや!
おばちゃんに相談したところあっさりと事態が解決した。
「あーまたかい」
「また?」
「ああ、アンタの言ってる女ってのは3階の角部屋に部屋を借りてる女で歳はアンタと同じくらいだけど‥‥困った事によく階を間違えるんだよ」
いや。それ困ったというか一種の犯罪では?
他人の借りた部屋で生活するとか‥‥立派な犯罪だと俺は思うよ?なのになんで追い出さないのよ?
「…それで対処方は?」
「起こして部屋から叩き出せばいい」
「‥‥そーっすかぁ~~~」
「おや?なんだい?その疲れた顔は?」
「そりゃ男に起こされたら有らぬ疑いを掛けられそうで面倒だなって思って」
「‥‥ほーん?起きなきゃそのままパクっと行っちゃえばいい物を‥‥」
おい。
このおばちゃ――いや。もうばーさんでいいや。
このばーさんも発想がぶっ飛んでるぞ?パクっとってなんだパクっとって!
そんなんするくらいなら窓からほおり投げるわ!っとまぁ実際問題としてやはり若い女性の寝込みを襲う様な真似は出来ないので起こすのはばーさんにお願いする事にした。
「ほら起きな!アンタの部屋は上だろ!起きな!」
耳元で叫ぶのは同じ人としてどうかと思うよ?
鼓膜破れたらどーすんの?って感じだが‥‥効果は抜群だった様でベッドを占領していた半裸の女性が飛び起きた。
「ハワワワワ!!!」
「目は覚めたかい寝坊助娘め‥‥ココはアンタの部屋じゃないよ!ササット帰りな」
「ふぁ?‥‥えー?あれ?」
「ほら!ぼさっとしてんじゃないよ!ササットかえんな!」
「ひゃわぁぁぁ!!!」
半覚醒状態の女性を無理やりベッドからひきずり降ろし、そのまま床をズルズルと引きずりながら部屋の外まで引きずるバーさんのアグレッシブさに若干引いたもののものの10分足らずで事態が解決したは僥倖だろう。
「よし!これで文句はないだろう?」
「ええ、バッチリですね」
「そいつは良かったよ…じゃぁね」
バタン!と大きな音を立てて扉が締められた後、今だに廊下でギャーギャー言っているバーさんと女性の喧嘩とも思える声を無視して備え付けの椅子に腰かけてため息を付いた。
「はぁ…よーやくこれで寝れる‥‥」
『お疲れ様でーす。って事で私は周囲辺警戒をしつつ省エネモードに移行しまーす』
(周辺警戒?ドアに鍵かかってるよ?)
『一応捻の為です』
(ふーん‥‥まぁそこらへんはばーむちゃんにお任せってことで)
『はいな!ではでは~~~~』
さて。ばーむちゃんも省エネモードに入ったし…俺も寝るか。
本当は風呂入りたいけど…ばーむちゃん曰くこの世界で風呂と言えば上流階級の特権みたいな感じなので一般的な場所には存在すらしていない。
そもそもトイレも水洗式ではなくぼっとん式(正式名称は忘れた)なので風呂は諦めるしかない。
と言う事で着ていた服を脱ぎパンツ一枚でベッドに寝転がり‥‥即落ちした。
まぁ6時間も飲まず食わずで大平原を踏破したからな~流石に体は疲れていたようだ。
それから暫くしてガチャガチャとドアの鍵をいじくり回す音で目が覚めた。
(ん…何事?…ばーむちゃん?)
『Zzz…Zzz…Zzz…Zzz…』
(おい!省エネモードでの警戒はどうした!?)
ったく肝心のばーむちゃんは何故か睡眠モードに入ってるし‥‥ホントこのスキルはフリーダム過ぎだよ…もう人工知能の域を超えてるぞこれ?
と妙な事を考えているとカチャっと小気味いい音がしたあと室内に廊下を照らす光がすこしだけ差し込んで侵入者の影を作った。
(侵入者は人型‥‥つまり人か)
『Zzz…Zzz…Zzz…Zzz…』
相変わらずばーむちゃんは睡眠モードで起きる気配なし。
どうしようかと思案していると侵入者は静かにドアを開けて体を滑り込ませドアを閉めた。
これはいよいよもって自衛の為の行動に出るしかない!
具体的にはようやくクールタイムが終わった優良スキル(仮)の【巨大化】の発動も辞さない構えだ。
まぁ倍率は2~3倍にしておく予定だ。
まちがっても100倍なんぞにして宿を押しつぶすなどする気はないぞ!
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