第7話 限界のその先へ

「つ、ついたぁぁぁぁ~~~~」

『ぺこーぺこーぺこーぺこー』


これはまだ大丈夫のサインなのかもう危険のサインなのか‥‥ともかく早く食事をしてカロリーを補給せねば!


そう思いつつ外壁にぽっかり空いた出入口に向かって歩き出すと‥‥やっぱりと言うか定番というか門番に制止を受けた。


「止まれ。身分証もしくは身分を証明する物を呈示せよ」

「あー‥‥ちょっと待ってくださいね~(持ってねーわそんなもん‥‥てかこの世界にも身分証があるのか‥‥ってバームちゃん!バームちゃん!)」

『YESカロリー?』

(Noカロリー。てか身分証どうするよ?)


門番に背を向けて体をまさぐり身分証になりそうな物を探しているフリをしつつ癒し系AIバームちゃんと相談していた。


(街に入ったらたんまり食べるから!お願いですよバーム様!)

『わかりましたぁ~がんばりますぅ~~~‥‥本体に同期申請…よし。えーっと『本体がスキルの説明を端折った為に私は機能不全を起こし気味‥‥どうにかして』っと…送信!じゃぁちょっと待ってくださいね~』


(ま、まさかの本体に丸投げかよ‥‥こいつスキルのくせにフリーダム過ぎない?大丈夫?)

『‥‥大丈夫ではありませんよ、まったく!‥‥とは言え今回は私の落ち度でもありますので‥‥しかたありません。と言う訳でお久しぶり…でも無いですが元気でしたか貴方様』


お?俺の事を貴方様と呼ぶのは‥‥


(もしやバームクーヘン女神様ですか?)

『ええ、【AIナビ】…今は【バームちゃん】ですね。そのばーむちゃんからの要請で特例として私が介入します』

(おぉ!本家本元の女神様ご自身でとは…マーベラスですね)

『今回は特例ですからね特例!‥‥では私の言う通りに門番に話掛けて下さい。いいですか?』


ばーむちゃんがバームクーヘン女神様に変わってからものの数十分で街の中に入る事に成功した。


(流石女神様です)

『まぁこの程度私でなくても‥‥それこそばーむちゃんでも可能な芸当ですよ?』

(そ、そうでか‥‥)


ならこの街でしこたまカロリーを蓄えないとな‥‥


そう思いながら女神様のご案内でおススメの食事処に向かう事にした。


「いらっしゃい~空いてる席に座りな~」

「はーい」


訪れたのは酒場だった。


(あの‥‥女神様?)

『なんですか?』

(ここ‥‥酒場ですよね?高カロリーな食事出来るんですか?)

『この街ではココが一番手っ取り早くカロリーを取れる場所です』

『‥‥んお?カロリーの気配がするぅ~』

(あれ?ばーむちゃん?)

『ん~おぉ~ますたぁーカロリーは?』

(ん?‥‥ばーむちゃんが起きた?って事は…女神様はお帰りに?)

『いえ?帰ってませんよ?私も久しぶり食事を楽しんでから帰りますから』

(然様ですかい‥‥)


なんか一時的とは言え‥‥脳内の住人が増えたな。


ってこのセリフだけだと俺がアブナイ子に思えるけど違うからね!


誰に弁解してるんだ俺は?と考えながらカウンター席の真ん中あたりに腰をおろし


「注文いいですかー?」

「あいよぉ~」

「串焼き肉を10本と麦酒とおススメで!」

「串10と麦酒に‥‥おススメ‥‥出来るまでちょっとまちな~」

「あ~い」


因みに串焼きと麦酒は女神様のご注文です。


バームクーヘン女神様は意外とのんべぇなのかもしれないと密に思った。



「ごちそうさまでしたぁ~」

「おぉう。またな来いよぉ~」


俺はちょっとした伝説を作ってしまったのかもしれない。

バームクーヘン女神様はまごう事なく【女神】なので俺が食べた物の味を共有するなど朝飯前で実際に食べた分を女神様本人のお腹に貯める事も可能だ。


なので傍から見ると俺が食べているのだが実際に食べているのはバームクーヘン女神様であり普通に2~3人前をペロリと平らげた。

まぁここまでなら大食漢で済むんだが‥‥流石というか見事というかばーむちゃんも同じことをしてしまった。


それも本家を上回る量で。


なので若い男が10人前の料理を平らげた事になってしまった訳だ。


まぁ内わけはばーむちゃんが5で女神様が3で俺が2だけど‥‥まぁこれでばーむちゃんの活動カロリーが溜まったと思えばいいか。


『では私はこれで失礼しますが‥‥今回は特例ですからね!くれぐれもお忘れなく!』

(判ってますよ)

『は~い』

『‥‥では』


そういうとスッと何かが体から抜けた感じがした。


流石女神‥‥演出が上手いな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る