第6話 検証

(さて‥‥バームちゃんよ)

『どうしましたぁ~?』

(俺の微妙スキルである【巨大化】だが‥‥検証した方が良いと思うかね?)

『あ~‥‥』


検証。そう検証だ。


先程は倍率100倍で試して失敗だった。

そして俺最強?とか思ってたけど全然最強じゃなかった。


一応巨大化自体に制限時間は無いが、発熱量だったり疲労だったり空腹だったりと大きくなればなるほど消費も大きくなるので実質的な制限時間は有る。

それに所持品もそのまま大きくなる素敵仕様なのだが‥‥純粋に重くなるので正直イラナイ機能だと思っている。


例えば重さ0.1kgのハンマーを持ったまま100倍に大きくなると仮定し2乗3乗の法則が当てはまるとするとそのハンマーの重さは単純計算で10万kg。つまり100tハンマーだ。


言葉だけ聞くと『わぁ~すっごぉい~~!』と思うが‥‥ソレを持ち上げる俺の筋力は1万倍にしかならないので持ち上げられないのだ。

まぁこの現象はこの異世界だけの話の可能性もあるが‥‥簡潔に言えば倍率100倍は無用の長物だ。


しかし無用の長物だからと言って死蔵しておくには惜しいスキルだし、そもそも折角貰ったのでせめて使える様にはなりたい。


(なので何処までの倍率だったらある程度動けるのかを知ることはとても大事だと思うのだが‥‥如何せんクールタイムが長い。良い案を求む)

『ん~自称『スパコン並みのスペックを誇るバームちゃん』でも良い案は出ないですねぇ~』

(段々比較対象のグレードが上がってない?スパコンって‥‥バームちゃん天気予報出来るの?)

『愚問ですね。本体と同期すればそんなの一瞬で‥‥え?ダメ?‥‥そんなくだらない要件で同期するな?‥‥あ!ちょ!あーーーー!』


この様子だとチート作戦は失敗だったらしい。ドンマイバームちゃん!


『マスター…』

(ど、どうしたバームちゃん?)

『私は…マスターと楽しく会話すしか脳が無い癒し系AIです…つまりア〇ボちゃんですねぇ~』

(ア〇ボって…まぁ古いネタ持ってきたねぇ‥‥って比較の落差が凄いな)


方や様々な分野で使用予約が殺到しているスパーコンピューター。方や量販店でウン万円で購入可能な玩具‥‥比べるのがおこがましいくらいですね?


(って!それはどうでもいいから!クールタイムの件ドーすればいい?)

『取り合えず移動しましょうよぉ~マスターのカロリーが減って来てるんで私の演算能力が下がりぎみですぅ~』

(え!?バームちゃんって俺のカロリー消費して演算してるの!?初耳どころか寝耳に水だよ!?)

『あー私自体がイレギュラーなスキルなので特別仕様なんですよ』

(マジかよ‥‥)


バームちゃんが頑張れば頑張るほどカロリーを消費される‥‥うん。このザマじゃとてもじゃないが主人公ムーブは無理だ。


そしてこれから俺はバームちゃんを維持する為にカロリーを蓄えなければならないので常時メタボリックな体系を維持しなければならないらしい。


「…ちくしょう!異世界なんて嫌いだ―――!!!!」


★☆★


異世界なんて嫌いだ―と叫んでから6時間程歩き続けようやく人工物が見えて来た。


『おめでとうございます。今の速度で歩けばあと1時間で【クレイル】の街に到着ですぅ~』

(よ、ようやくか‥‥って後1時間!?‥‥長い‥‥)


転生の特典なのかバームちゃんの本体、バームクーヘン女神様の計らいなのかは不明だが俺の肉体は高校生程度まで若返っている。

なので6時間のウォーキングにも耐える事が出来たし小デブ‥‥30代のメタボ体系からは卒業しているのだが‥‥


『ますたぁ~~演算能力が30%ていかしてますぅぅ~早くカロリーをちょうだい』


正直最初は冗談とか妄言の類だと思っていたのだがバームちゃんの自己申告に間違いは無かった。

移動中はカロリー消費を抑える為に省エネモードにさせていたのだが、省エネモードのバームちゃんは何と言うか幼いのだ。


イメージで言うとカロリーが潤沢に仕える状態を敏腕女弁護士と仮定すると今の状態はちょっと頭の悪いJKギャルって感じだ。


まぁそれでもエマージェンシーの時は補助バッテリーならぬ補助カロリー(俺の脂肪や筋肉を強制的にエネルギー変換してひねり出す)で頑張れるそうだ。


って!緊急事態に陥ってるのに俺を更にピンチにしてどーするよ?とマジでツッコミを入れてしまったのは‥‥秘密だ。






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