第5話 2乗3乗の法則

わぁ!すげー!俺!ウルトラの人だよ!と感動したのもつかの間、今度は地面と熱いキッスをしていた。


(な、なぜ…?)


疑問で一杯だった。

いくら30代と言っても元々俺は学生時代にスポーツをやっていたんだぞ?運動は出来るし体力作りの為にジムにむ通っていたので運動音痴ではない。


なのに倒れたって事は‥‥


(っは!つまりバランスか!?)

『‥‥』


(そうか。バランスか…それは盲点だったなぁ~

つまり大きくなった体に感覚が追い付いてない訳だな?よーし!まずは立ち上がって‥‥あれ?)


オカシイ。

全身に力を入れているんだが‥‥一向に体が持ち上がらない。


(は?…え?なに?なんで動かないのコレ?おかしくない!?ちょっとバームちゃん!?説明プリーズ!)

『‥‥ちょーっと待っててくださいねぇ~今原因を…なるほど。これは‥‥うん。まぁドンマイですねマスター』

(え?ちょ‥‥ドンマイってなに?)

『いいですか?心して聞いて下さい』


ふ、雰囲気がちょっと‥‥怖いっすよ?バームちゃん


『マスターは【2乗3乗の法則】って知ってますか?』

(2乗3乗の法則?)

『生物に当て嵌めて非常に簡単に言うと体を100倍にしたと仮定すると、体重は体積に比例するので3乗の100万倍ですが筋力‥‥主に足の筋力はその断面積に比例するので2乗の1万倍です。つまり同一比率の足の太さではジャンプどころか自分を支える事が出来なくなる恐れもある訳です』

(えー‥‥じゃぁウルトラの人になるのは無理って事?)

『正直ここはマスターの居た世界とは異なる物理法則が働いている可能性も有るので倍率100倍で動くのは難しくても50倍なら自由に動ける可能性もありますよ?』

(50倍‥‥えーっと俺の身長が160cmだから‥‥8000cmつまり80m…ってデカくね!?)

『デカいですよ?因みに100倍だと160mですよ?東京タワーの約半分の大きさですねぇ~』

(わぁーお‥‥確かにそれじゃ立てる訳ないね‥‥納得だわ)


『あ、それと体積が大きくなるって事は体内の発熱量が多くなっちゃいます。そして大きければ大きい程発熱量は多くなるから長時間巨大化してると体温が上がり過ぎて死んじゃうねぇ~』


(‥‥え~~~なんかデメリットと言うか‥‥制約多くない?)

『本体から説明無かったの?』

(‥‥大したことないからへーきへーきっていわれた)

『あ~‥‥ドンマイっす‥‥あ、あと最後に【巨大化】なんだけど一度解除すると次に使える様になるまで12時間空けないといけないって』

(クールタイムが12時間‥‥これ【外れスキル】の間違いじゃない?)

『まぁ気持ちは判るけど‥‥でも私は案外強いと思うよぉ~?』

(ホントに?‥‥って一度巨大化を解除するわ‥‥)


いい加減地面とキスしながらとか肉体的には負担が少なくても精神的にクルんだよね~それと心なしか暑いし。


「解除!」


その言葉と共にググ~と縮んでいき‥‥大きなクレーターの中心に元の160cmの俺が現れた。


(戻ったぁ~っって!クレーターじゃん!?なんで!?)

『さっきまでのマスターは100倍で巨大化してた訳でしょ?なら体重は100万倍になってた訳で‥‥』

(俺の体重は70kgだからその100万倍イコール7000万kg。つまり7万トンか…空母エンタープライズ級かよ)

『私のご主人様は原子力空母と同じ重さだ!…ってキャッチコピーで売り込みますか?』

(どこに売り込むよ?それによくよく考えたら街中で突然巨大化したら大量破壊兵器もびっくりな被害をもたらすぞこれ?)


しかし逆説的に考えると巨大化イコール質量兵器と考えるならこれ程優秀な物はない。

自前で移動出来て敵の懐でエンタープライズ級の質量が突如爆誕。


うん。ついさっきまで使えねー!と思ったけど‥‥ヤバくねこれ?

もしかして最強?


『あーでもでも倍率100倍で巨大化しても長くは維持できないなら‥‥やっぱ微妙ですね』

(えー?微妙なの?)

『だってもし包囲された状態で元のサイズに戻ったら一発アウトじゃん?』


た、確かに!それは盲点だった!



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