第4話 バームちゃん
「では、スキルも決まった事ですので‥‥早速異世界にお送りしますが、ご質問は?」
「あーその言葉とか、お金とか案内とか…欲しいです!」
「言語は…自動翻訳されますので問題ありません。お金は一般人の平均年収を渡します‥‥案内は‥‥ん~」
先程までサクサクと話を進めていたバームクーヘン女神様だが案内を希望した所、途端に難しい顔をし始めた。
(あれ?案内はダメだったか?それと‥‥口の端に食べカスが…指摘すべきか?)
「食べカスの事は忘れなさい」
「ア、ハイ」
やべ。
心の声が駄々洩れになって居る事忘れてた‥‥
「ん~‥‥よし!キメました!まぁ初回サービスって事で私の分体を【案内役】としてスキル化して付与します」
「‥‥?」
「えーっと簡単に言えばAIナビって思ってくれればOKです」
「なるほど!AIナビ!素晴らしいですね!」
「じゃぁ早速付与しますね~‥‥えーっと、まず分体を作って…情報化して…スキル化…よし!これで…ほい!」
ほい!っと掛け声と共に頭の中にバームクーヘン女神様の声が響いた。
『聞こえる―?』
「聞こえますよー?」
『おっけぇ~じゃぁまたあとでね~』
あれ?後でって…まぁいいですが‥‥妙に口調が砕けてません?
「分体とも通信は‥‥OK。じゃあこれで不満も解消ですね!」
「た、多分?」
「まぁ何かあったらAIナビに聞いて下さい。あ。但しAIナビは文字通り案内する機能しかないので私の様にスキルを付与したり神がかった事は出来ないので注意ですよ?」
「りょ、了解です…(まぁそんな出来る様にしちゃったらこれから行く世界がめちゃくちゃになりそうだしな…)」
「まぁそんなところです‥‥では送りますよ」
「あ、はい」
そう言うとバームクーヘン女神様が右手を翳すと俺の足元?というか視界に幾何学模様に光る所謂『魔法陣』的なものが現れて―――
「うっ!!」
激しい光が襲い掛かって来て思わず目を閉じた。
そして少しして目を開くとそこには見渡す限りの広大な草原が広がっていた。
「‥‥‥信じてなかった訳じゃないけど‥‥スゲーなバームクーヘン女神様」
『あ、転移ましたぁ~?それとバームクーヘン女神様とは?』
「うぉ!?‥‥ってAIナビさんか」
『はい。で?バームクーヘン女神様とは?』
「あーあの女神様がいつの間にかバームクーヘン食べてたから‥‥つい」
『なるほど!だからバームクーヘンなんだねぇ~‥‥じゃ私の事は可愛く【バームちゃん】と呼んで欲しいなぁ~』
「はい?」
急にどうした?もしかして‥‥不具合か?
(転移?早々に不具合とか‥‥ちょっと先行きが不安なんだが?)
『No。ただ単にAIナビさんだと可愛くないので可愛い固有名詞が欲しかっただけです。性能や機能に不具合は起きてませんよぉ~?』
(あー。声に出さなくても会話可能なのか!‥‥流石女神様謹製だ)
『フフフフ。もっと褒めてくれて良いんですよぉ~?』
(ああ、凄い!チョー凄い!‥‥で。ここどこ?)
『フフフフ!まさに【悦】って感じですねぇ~それでえーっと‥‥‥はい。ここは【クレイルの大平原】と呼ばれる場所ですね』
大平原‥‥ってつまりとんでもなく広い平原って事か?
改めて辺りを見回しても目視で捉えられる20~30kmには構造物らしきものは存在していない。
それに‥‥足元の草?芝?はかなり柔らかくて寝転がるととても気持ちがよさそうだ。
(しかし…この景色だけ見ると異世界に来た感じしないんだよな~)
『なら【スキル】を使ってみればぁ~?』
(なるほど!確かにその通りだ!‥‥で?どうやって使うの?AIナビさん?)
『‥‥』
(おーい!ナビ子ちゃーん?応答してー?)
『…』
このAI超が付く程人間臭いな‥‥なんで拗ねて…あぁ!【名前】か!
(ごめんごめん。【スキル】の使い方教えてほしいな。【バームちゃん】)
『はい!この超高性能AIである【バームちゃん】にお任せあれ!…で、【スキル】ですが‥‥簡単です。マスターのスキルは【巨大化】なので倍率を設定して巨大化!って思えば発動します』
(なるほど【巨大化】のスキルはアクティブスキルってことだな?)
『正解ですぅ~因みに私こと
パッシブ‥‥常時発動型か。
まぁOFFにする気は無いしする方法も判らないので一先ずはこのままでいいや。
(よし!じゃぁ早速巨大化を試すぞ?)
『アイアイサー』
(倍率は‥‥最大の100倍でいいか。‥‥よし!巨大化!)
巨大化!と念じた瞬間に視線が一気に上空に登り体文字通り巨大化した。
そして急に視界が揺れたと思ったら―――
「え?」
物凄い音を立てて地面に倒れこんだ。
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