第4話 これが専用装備?
「とりあえず……セクサロイドだからすぐにエッチしないといけないという訳でない事は理解したわ。
でも、こんな裸のままだと、そのうち絶対誰かに襲われるわよ。
早く服をなんとかしないと」
【それではファーストミッションは、装備の入手でよろしいですね?】
「うん。それ重要だから」
【一番身近な入手候補先としては、この陥没したラボから一kmほど西方に軍用ストレージがあり、そこにS-F10RA-996の専用装備がまだあるかも知れません】
「そこは敵の攻撃受けていないの? それにどんな服があるのかしら」
【武装解除の際、武器類は廃棄された事になっていますが、あそこの機密区画内はあるいは無事かと。S-F10RA-996の専用装備としてはボンテージスーツがあります】
「行って見ないとって事ですね。
でもボンテージって……たしかエッチな服ですよね?」
【エッチかどうかの判定は、私には致しかねます。
ですが専用装備ですので動きやすく、防御力向上も含めいろいろと有用です】
「却下! 私は普通の女の子の服がいいです!」
【それでは、やはり人里に降りるしかありません。このまま向かいますか?】
「いや……やっぱり最低限のところは隠してから人里に向かいましょう。
機密区画って言う位なら他にも何かあるかも知れないし……行ってみましょう」
◇◇◇
原生林の中を三十分ほど歩くと、爆撃で破壊されたと思われる廃屋についた。
いやー。こんなに歩いたのいつ以来だろ。ずっとベッド生活だったしなー。
でも、あの嫌な頭痛や抗がん剤の副作用からくる酷い悪心も全くなく、こんなに心と体が軽いのは本当にありがたい。
モルツに誘導され廃屋に入り、廊下の突き当りの部屋に入った。
天井が綺麗さっぱり無くなっていて空が見えるが、ここは多分、スタッフのロッカールームだったのだろう。更衣室などでよく見かける縦型のスチールロッカーが、ごろごろ転がっていた。
【このロッカーをどけて下さい】
言われるままに、倒れていたロッカーを、ひょいと脇によける。
あら、なんかすごく軽いわね。
その下にもう一つロッカーがあり、996とナンバリングがしてあった。
【これですね】
「ええっ? これが機密区画?」
若干歪んていたので、無理やりこじ開けたところ、確かにこれは……。
真っ黒い革製で、胸元とお尻の露出が大きく、超ミニスカで、身体のラインと女性らしさが強調された衣装。
昔、お友達とのパジャマパーティ―の時、こっそり見せてもらった、大人向けのファッション誌? にあった……ボンテージスカートだ。
【無事でよかったです。やはり敵もこれが兵装だとは思わなかった様ですね】
「でもこれ……めちゃくちゃTバックなんですけど……」
文句を言いつつも、これしか着るものがなく、裸でいるのはもう嫌だったので、我慢して身に着けた。
おおー。専用装備だけあってサイズはピッタリ……いや、胸元がちょっとスカスカで、上からのぞいたら乳首見えちゃいそうだよ!
「ねえこれ。胸のサイズおかしくない?」
【ああ。人格データにあわせて本機側がオートで胸のサイズを初期調整してしまったのです。
本機には乳房サイズ調整機能がありますので、本機側を調整して下さい】
「なによそれっ!? 元々私が小さいからだと?
仕方ないでしょ、まだ発育途上だったんだから!」
モルツの指示通り、自分で大きさをイメージしたら、ちゃんとその大きさと形になり、ボンテージにピッタリ収まる様になった。
どうやらここは普通の更衣室だった様で、他に何か衣類等がないか探してみたところ、女もののブラやショーツ、パンストなどが数点見つかった。
とりあえず、無いよりマシか……。
あっ! やった。パンプスがある! ちょっと大きいけど、なにか詰め物して……よし! これではだしで歩かなくていいわ。
それに、これは……お財布……お金?
まあ、私の生きていた時代と、デザインは当然違うわよね。
元の持ち主さん、ごめんなさい。ちょっと拝借しますね。
アリーナは、破れかけたトートバックも発見したので、それに戦利品を詰めた。
◇◇◇
【それでは、このまま人里に向かいますか?】
「ちょっと待って。夜が明けてからにしましょう。
夜中にこんな格好でうろついたら、痴女か変質者だと思われるわよ!
それにさ。万一、王族だってバレたりしたら……私、リンチされない?」
【現時点で、あなたがそう名乗らなければ、王族だと気づく者はいないでしょう。
S-F10RA-996がセクサロイドだと知るものもいないでしょう。
ちょっと見では、実際の人間とまず判別は出来ません】
「そうかな?
それにしてもそのS-F10RA-996って、なんか言いづらわよね」
【開発者達は、スフィーラと呼んでいた様です】
「あっ、それいいかも。
それじゃ、今から私は、十七歳の普通の少女、スフィーラよ。
とりあえず人里でもう少しまともな衣服を調達して、それから、これからどうするのか考えましょう」
とはいうものの、夜明けまではまだちょっと時間がありそうだ。
先にいろいろモルツに聞いておいた方がよいだろう。
「ねえモルツ。この身体、ちゃんと知覚があるのね。ロボットとかとは違うんだ」
【知覚。特に痛覚は生存のために必須です。痛覚を忌む事で、AIのアンドロイド兵士も生存率が上がります。ましてやこのS-F10……スフィーラは、セクサロイドですから、お相手の刺激に適切に反応する必要があり、設計当時の最高レベルの知覚センサーが用いられています。そんな訳で自慰も可能です】
「ちょっと……自慰とか……コホン! ねえ。じゃあ他にどんな機能があるの?」
【人格との連携で決まるスペックもありますので、正確にはまだ未知数ですが、カタログスペックですと、標準の成人男性のおよそ二十倍のパワー、反射速度、耐久性を有します】
「へー、すごいね。ああそうか。それであの時、ドアけ破れたのかな。他には?」
【標準的な武器や車両などの操作・操縦は、後頭葉AIに独自にセットアップされていますので、平時、戦闘時に限らず、ほぼ無意識にそれらを使役出来ます】
「うんうん。なるほど……他には?」
【処女膜パーツは交換可能です。
これで、お相手が替わっても、初夜アクションが可能です。
あと膣ホールも交換・カスタマイズ可能部品となっており、カラーバリエーション含め、相手の好みに合わた調整が可能ですし、名器オプションもあります。
でも……ああ、すいません。これらのパーツは現在在庫切れです】
「…………」
【あとは……乳房サイズ調整機能。これは先ほど……】
「もういいから! それで、この身体、さっきから全然お腹すかないんだけど、食べなくてもいいの?」
【基本、食事は不要ですが、人間相手が主目的なので、会食などが出来るように設計されています。飲食したものは糞尿として、人間と同じ様に排出可能です。
ただし、繁殖機能はありません】
「うん……よくわかった……説明はもういいから」
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