危機一髪なお話

書峰颯@『幼馴染』12月25日3巻発売!

危機一髪なお話

 次から次へとお題を出されて二日以内に仕上げて投稿する、KTCイベントはなかなか鬼畜な内容だと思います。時間ギリギリに投稿したヒツジ君の物語も、締め切り十分前に仕上げて投稿してしまった為か誤字脱字が多くて、見直しが今さっき終わった所です。


 一昨年は毎日お題でしたっけ、労力だけが激しくて見返りが少ないってんで、作家仲間から「来年はやらない!」って声が数多に上がっていたのですが、今年は三回ぽっきり、思えば良心的なのやもしれませんね。


 さて、今回のお題は危機一髪な内容ですか。


 危機一髪な内容を小説にした所で「どうせ創作でしょ?」で終わってしまいますので、ここはノンフィクションと参りましょう。


 僕はこれでも結構いい歳でして、とある会社に勤めるサラリーマンだったりします。

 営業職として関東一円、栃木、群馬、茨城、埼玉を巡っていろいろとしていた訳ですよ。

 

 今でこそ「働き方改革」なんて洒落た言葉で時間外労働が規制されておりますが、当時はまだそんな言葉もなく。現場の人達は「稼ぎたいんで残業120時間でお願いします」なんてのがまかり通ってしまっていた時代のお話です。


 当時の僕も、毎日夜の十時過ぎまで仕事しているのが当たり前の日々を過ごしておりました。先の通り営業範囲がとてつもなく広いので、行って帰るだけで一日が終わっちゃうんですよね。そして帰社してから事務処理を終わらせて、会社を出るのは先輩よりも後を徹底する。


 うん、今から思うとアホだったんだろうなって思います。


 車を運転する時も「ナビに頼るな! 営業なら道を覚えろ!」なんて言われたり、お酒も一滴も飲まない人間なのですが、酒の場では「俺の酒が飲めないのか!」を地でいかれました。


 アルハラパワハラオンパレードだったのかなぁ……しかし、遥か彼方のお話です。

 

 そんなものは危機一髪ではないのです。

 本当の危機一髪は、誰にも知られる事なくいつの間にか起こっているものなのです。

 

「じゃあ書峰くん、今日の運転宜しく頼むよ」


 その日の僕は社用車の運転を任されておりました。

 同乗するのは社長、専務、支社長、そうそうたる顔ぶれです。

 

 訪問する顧客へのルートは頭の中に叩きこみました。

 高速道路、曲がるべき交差点、訪問方法。

 前日の夜に言われたので寝る間を惜しんで覚えました。

 なにせ「営業はナビに頼るな」ですから、途中でナビを利かせるなんて言語道断なんですよ。


 車内での私語も慎みました、ラジオもボリュームを絞り、お偉方の会話に耳を傾けます。

 ガムも噛まなかったんですよね、匂いが車内に充満すると社長が不機嫌になるから。


 長い運転をしながら、一件目、二件目と挨拶を終えると、途中で昼食をとりました。

 

 もうお分かりでしょう? 前日ほとんど寝ずに道を覚え、ラジオも聞かずガムを食べず、社長のウンチクだけを耳にしながらの長距離運転。ただでさえ日々の仕事で身体が参っているのにこれですから、当然眠くなります。


 分かるんですよね、あ、これ寝ちゃうって。

 上のまぶたと下のまぶたが異常なまでに仲良しになるんです。

 

 しかし今回乗せているのは社長と専務です、事故って死んだら会社が終わります。

 というかどんな些細な事故だって僕の首が飛びます。さよならって感じです。

 

 これまで始末書は十枚以上書きました。始末書って三枚あれば会社は社員を懲戒免職に出来るらしいですね。これで僕が事故れば会社は有無を言わずに僕を斬る事でしょう、布石は整っていたのですよ。十五枚目の始末書と共にね。


 というか、始末書とか抜きにして高速道路で事故ったら死にます。

 だから絶対に寝ないんだ! って目をバッチリ開きながら運転していたのですが。


「書峰くん、起きてるかい?」


 はい寝てましたー! 高速道路で運転しながら爆睡してましたー!

 事故らなかったのが奇跡です! 心臓ばっくばっく言わせながら目が覚めました!


 隣で支社長が口を半開きにしています。

 ルームミラーに映る社長と専務は失笑気味に笑みを浮かべています。

 

 車が蛇行を始め、明らかにセンターラインを越えていたので声掛けしたらしいです。

 これが走行車線じゃなく中央分離帯に行っていたら今頃僕はいなかったでしょうね。

 社長と専務、支社長を巻き添えにして働き方改革の早期施行に一役買っていたことでしょう。


 高速道路で蛇行する車に乗っていたお偉方の心境や、如何に。


 眠気は完全に飛んでいたのですが、とりあえず休息をとりなさいと言われ最寄りのPAへ。


 ガムを噛む了承を頂き、以降は無事に運転する事が出来たのですが、あの時声掛けされていなかったらと思うと、今でもちょっとドキドキしてしまいますね。眠気はどうあがいても無くなりませんので、無理だと思ったら五分だけでも仮眠する事をお勧めします。


 こんな所でしょうか。


 他には警備のバイトをしていた時に駐車場の鍵を全部失くしたとかもありますが、まぁ大したことではないでしょう。


 こんな私でも元気に生きてますし、可愛い奥さんに子供達、毎日幸せに生きていけてます。

 失敗はいつしか笑い話になるものです、気にせず元気に笑顔でやっていきましょう!

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