好きまでの距離8 Side 赤松太陽
「お腹いっぱい!!もう食べられないよ~!!」
テーブルの上には色々な食べ物が置いてあって、色々食べたいって言うよりも二人で選ぶのが楽しくて……。
焼きそばたこ焼きイカ焼きにフライドポテトにエトセトラ。
そう言えば、海鮮串焼きなんて、普段食べないのに「これ、美味しいのかな?」なんて柚子さんが悩んだ顔するから、「食べてみる?」って二人笑い合って……。結構美味しかったかな?柚子さんは微妙な顔をしているけど……。
「太陽君、美味しい?」海鮮串の事かな?
「どうだろ?少し苦いけど、不味くは無いかな?僕は、結構好きかも?」
「この貝の黒い所が苦くて……」柚子さんの、辛そうな顔に、ちょっと笑う。
今日の柚子さんも、表情豊かだな……。
図書館でのすました顔、文化祭での驚いた顔、家に行った時に家族と騒いで怒った顔、そして今、貝が食べられないって困ってる、辛そうな顔。
どんな顔も素敵で……目が離せなくて……いつから何だろ?僕の心の画像フォルダに彼女が入り込んで、ドンドンうまって行く。
僕は君を……。
「大人になったら……」
「エッ!?」ぼぉ〜としていたら、柚子さんに話しかけられて焦る。何だ?大人になったらって?
「こういうのも美味しくなるのかな?パパやママは美味しいって言うけど」ビックリした。貝の話か……。もう、馬鹿かな?折角のデートにボケっとするな!?
愛想笑いで誤魔化していると、眼の前で柚子さんが、トロンとした顔でこっちを見てる。
お腹いっぱいになって眠くなったのかな?柚子さんは、小さな欠伸をすると、ちょっとウトウトている。
「また、大人になって食べてみれば分かるよ、きっと」ウトウトしている柚子さんも可愛いな。
「その時は……また一緒に、食べよ?」ポヤッとした笑顔で笑うから……日だまりの様な笑顔で笑うから……僕は。
「うん……あの柚子さん……」あんな笑顔を見せられたら、大人になってもなんて言うから……。
「ん?……なぁに?」柚子さんの不思議そうな顔、
「柚子さん……」ずっと、言えなかった思いを、
「どうしたの?」言わなきゃ……。
「あのね?」でも、やっぱり、
「……柚子さん眠いの?」
今は、まだ無理だよ。
だって……。
「ちょっとだけ、眠いかも」ホンワカしたトロンとした笑顔が……。
気持ちを伝えた途端に消えるなんて耐えられないよ。
「イルカショーまで三十分あるし、少し寝る?僕、起こすし」
「うん……そうしようかな」
少しと言っていたけど、本当は結構眠いみたいだ。
「ちょっと、待って」
テーブルでうつ伏せになろうとしている柚子さん。
僕はそれを止めさせて、僕の左腕をポンポン叩く。
不思議そうな顔をする柚子さんに、
「日当たり、こっちの方が良いよ」
「そっち?」頷いた僕の方にフラフラと来ると、隣に座る。
そして、こてんと僕の左腕を枕に……。
いや、こっちに座ったらって意味だったんだけど!!
不味い、凄く動揺してる!!顔は真っ赤だ!!
動揺を抑える様に、しょうがないなと言う様に、赤い顔は見られない様に、
「どうしてそんなに眠いの?寝てないでしょ?」
答えなんて、求めて無かったけど、幸せそうな笑顔で、彼女は言う。
「今日が楽しみ過ぎて眠れ無かったの……」
多分、思考能力が低下する位、眠いんだろうな。
それだけ言って、柚子さんはしばらくの間の夢の旅へ……。
僕の左腕に確かな温かい重みが……。
もう、寝たよね?
「お休み柚子さん、いつかこの気持ちを言うから……」
彼女を起こさない、小さな声で誓った。
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