好きまでの距離7 Side 白波柚子

 遊園地や水族館等のフードコート。


 ねぇ、こんなにワクワクする物だったかな?


 たこ焼き、焼きソバ、アメリカンドッグ他にも沢山の品々を前に私は、何にしようと悩んでいる。


 あぁ、ソースの良い匂い……。


 隣を見ると、太陽君はスマホを見ながら、何にしようか悩んでいるみたい。


「何を見ているの?」チラッと、隣を見ると、水族館のホームページ。


「これ?次のイルカとアシカのショーの時間確認してたんだ。食べる時間もあるしね」


 それを聞いて私は少し恥ずかしくなる。


 だって、私が嬉しいとかお腹空いたとか考えている内に、太陽君は次の計画を考えてくれていたんだもの!!


「ゴメンね、私、太陽君に考える事押し付けちゃってる……」


「えっ!?何言ってるの?僕が好きでやってる事だよ!?」太陽君が凄く手をワタワタさせて、どうしようと慌てている。


 そんなつもり無かったのにって……太陽君のそんな言葉や思いが表情にあらわれていて、私またやっちゃったと後悔している。


 どうしてだろう私、太陽君の事になると、何時もは出来ていると思っている心の制御が出来なくなってしまう。


 あぁ、落ち込むなぁ……。


「あのさ、柚子さんって、イカ焼きって好き?」


 へっ?イカ焼きってイカをしょう油か何かのタレで焼いたアレだよね?何だろうと、思わず隣の太陽の横顔を見る。


「僕、凄く好きなんだけど、他にも食べたい物が沢山あり過ぎて、全部だと多いんだよね?」


 私は、キョトンとした顔で彼の方を見る。


「もし良かったら、文化祭の時みたいに、皆で分け合って食べない?って皆って言っても二人だけど」彼はそう言って照れ笑いする。


「うん……それが良いな……それにしよ!?」凄いな、今日の私、自分で言うのも何だけど、落ち込んだり喜んだり、感情の起伏が激しくて、自分で制御出来なくて……でも、私の中の私は言うの『それで良いんだよ』って。


「うん、何食べる?実はね……」太陽君が、コートのポケットから財布を出すと、中から紙幣を一枚取り出した。


「あっ凄い一万円だ!!」太陽君が嬉しそうに一万円札を広げて見せた。

「これ、母さんが友達と水族館行くって言ったら、美味しい物でも二人で食べろって」


「えっ?それって?」


「うんっ、好きな物食べよ?」


「えっ?そんなの悪いよ!!私半分出すよ!!」慌てて財布を取り出そうとする。


「たまには奢るぜ!!」太陽君が普段使わない言葉を使って戯ける。

そうやって太陽君がフザケていると、私達の様子を見ていたフードコートのおばさ……お姉さんが、


「良いね少年!!その心意気に免じて焼きそば大盛りにしてあげる!!」


「うおっ!!やった!!柚子さん、焼きそば大丈夫だったよね?」


「ウンっ!!」


「はい、毎度!!じゃあ他にもドンドン決めちゃって!!」


フードコートのお姉さん焼きそばをプラスチックの容器に入れ始めた。


「次は、タコ焼きと……あっ忘れてた!!イカ焼き食べたい!!」太陽君、楽しそう、良いのかな?うん、良いよね!?


「あの、太陽君のお母さんにお礼言っておいてね!?」美味しそうなソースの匂いと太陽の笑顔が私の思考能力を減らしていくみたい。


まぁ、良いのかな?って、だって楽しいもん!!


「あっそう言えば母さんがって、まぁ、これは良いや」


「えっ何?凄く気になるんだけど?」


「あー、その……」太陽君が言い淀んでいる。


「その子、今度、家に連れてきてって……」恥ずかしそうに頭を掻いた。


「えっ?……うん……分かった……」私は恥ずかしそうに少しうつ向いた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る