好きまでの距離5 Side 白波柚子

 素敵な二人から別れて、太陽君と水族館を見て回る。


 水族館はクリスマスのデコレーションで館内が彩られ凄くキレイ。二人で、ノンビリと館内を見て回る。


 見ながら思ったのが、私と太陽君の見る速度。


 私に合わせてくれているのかな?


 見ている時間がストレスが無いんだ。


 水槽全体を見て、水槽の中のサンゴを見て、泳ぐ魚を見て、もう一度全体を見る。


 何となく嬉しくなって太陽君の顔を見て微笑んでしまう。


「どうしたの?」首を傾げる太陽君に、


「あっ、うん……その……見る速さが一緒だなって」私、何言ってるんだろう?こんな言い方で、太陽君が分かる訳……。


「あっ、それか……それ、柚子さんの真似しちゃいました」恥ずかしそうに、頬を掻く太陽君。


「私の真似?」何だろう?不思議そうな顔をしてい

 ると、


「その……」どうしたんだろ?はっきりしないな。じっと見ていると、太陽君は観念した様に、

「柚子さんを見てたら、ずっと見方が同じだなって……何となく、同じ様に見ていたら楽しくなっちゃって……」太陽君がうつ向いて顔を赤くしている様だ。


 私も、顔を赤くして、うつ向いていたから、良く分からなかったけど……。


 ずっと、見ていてくれたんだ……。


 太陽君って、もしかしたら私の事……。


 そっそんな事無いよね?私なんて……。


『白波さんが、そう思っても僕は白波さんは、可愛いしキレイだと思うよ。』以前太陽君が言っていた言葉を思い出す。もしかしたら、私も、少しは自惚れて良いのかな?


「……キレイだね」


「はいっ!?」突然の言葉に、思わず慌てる私。


「ごっ、ゴメンね、良く聞いて無かった」わたしの済まなそうな顔を見て、


「いや、この水槽凄くキレイだねって」微笑む太陽君。


「あっ……そうだね!!凄くキレイ!!ソラスズメダイの青い色や、ほらあの魚なんて言うか分かる?オジサンって言うんだよ!!」キレイって言葉に反応してしまって恥ずかしくなった私は早口で熱帯魚の説明をはじめる。


 それを楽しそうに、聞いてくれる太陽君。


 本当に優しいなぁ。


「キレイだよね、水槽の中を自由に泳ぎ回って……」


「私も、こんなに自由に泳いでみたいな……」


「うん……、僕も柚子さんと一緒に泳いでみたい」

 水槽をウットリとした顔で見る彼の横顔を私はウットリと見ていた。


「ねぇ、柚子さん」


「なあに?」


「来年は、一緒に泳ぎにいけるといいね」


「泳ぎに!?」


「うん」太陽君が、じっと私の顔を見ている。


「ちょっと、恥ずかしいかも……」照れる私に、太陽君が残念そうな顔。私は慌てて、

「違うの!!ちょっと恥ずかしいだけ!!その……私も行けたら嬉しいなって」残念そうな顔が、パァッ!!と明るくなる。太陽君は意外と分かりやすい。

「うん、行けると良いよね!?」太陽の嬉しそうな顔、私まで嬉しくなって来た。でも……。


「うん、でもね……私泳げないんだ」そう、私は泳げないんだ。学校で水泳は選択科目だし、中学はプールが無かったし。


「そっか……でも、水で遊ぶだけなら別に泳げなくても大丈夫だよ?」


「そうだよね!!私、プールや海って聞くと泳げないって、すぐ思っちゃって……」


「そっか、僕は泳ぐの好きだったからな」太陽君、体格良いから泳ぐの速そうだなぁ。


「その……溺れそうになったら助けてくれる?」情けないけど太陽君、背も高いしイザとなったら助けてくれそう。


「もちろん、怖かったらしがみついてくれても良いよ」笑いながら、両腕でガッツポーズをして、おどける太陽君。


「来年の夏、楽しみだね?」 


 二人で、ひとしきり笑うと、もうすぐ熱帯魚のコーナーは終わりらしい、看板に回遊魚のコーナーと書いてあった。









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