重なったのは影じゃない5 Side 白波柚子

「星の事なので、どうしても行動は夜になってしまいますが、白波さんと一緒に流星群がみたいんです。当日、よろしいでしょうか!?」


 赤松君が、真剣な顔をしてパパに言うと、パパが真面目な顔をして考え込んでいる。


 あぁ言う時のパパって……。


「お前の様な若造に、娘はやらん!!」


「ええっ!?」赤松君の驚いた顔、あぁもう、やっぱりだー。


「パパ!!ふざけないでくれる?」床をバンと叩くと予想外に大きな音を立てて、少しびっくりした。


「えっ?あっあのぅ」


 狼狽える赤松君に私は頭を下げると、


「ゴメンね赤松君。もう、うちのパパ悪ふざけ、ばっかりするから……」


「いやぁゴメンゴメン、一度こう言うのやってみたくて」

 パパが頭を掻きながら、悪びれも無く笑う。


 そんな、パパの後頭部にママがチョップしながら、


「あなた、ふざけ過ぎ」ママが引きつった笑顔をしながら、

「もし、これで赤松君が、家に来るのが嫌になったら、どうするの!!」


「わぁ〜ゴメンゴメン!!単なる冗談だから怒らないでくれよ赤松君!!」

 急に表情を変えて平謝りするパパに、

「あっ、ハハッ大丈夫ですよ、大丈夫ですから……」


 苦笑いの赤松君。


「あれじゃ、の時の奴みたいじゃない」

 お姉ちゃんか、ため息を付きながら言うと、赤松君も頭を掻いて苦笑いをする。


「ゴメンなあ、赤松君の真面目な顔を見てたら、まるで結婚報告みたいだなぁって思ってさ」

「「けっ、結婚って!!」」私と赤松君の声が見事にハモり。

 お姉ちゃんとママが笑う。

「本当に二人共、仲が良いわね」


「お姉ちゃん!!」私は真っ赤な顔をしながらお姉ちゃんを睨みつけると、隣で赤松君も真っ赤な顔をしている。

「いやいや、本当にゴメンね。悪気は無いんだ」

 パパもようやく落ち着いたみたいで、普段の優しいパパに戻ったみたい。


「アハハ、大丈夫ですよ。ビックリしたけど……」


「そうそう、星の観測なんだけどさ」


「はい!!何でしょう!?」赤松君が背筋を正している。

 よく見たら、三毛猫クッションの上に正座してる。


 緊張してるんだなぁ、ゴメンね赤松君。


「もし良かったら、私も一緒に行っては駄目かな?」


「えっ?一緒にですか?」「パパどう言う事!?」


 慌てる私達に、まぁまぁと落ち着かせようとするパパ。


「うん、ママとも考えたんだけど、いくら仲の良い友達だとしても、一晩夜を共にするってのは、あまり、コチラとしても了承がしづらいんだよ」


「一晩を共に……」私は、その言葉に何かいけない事をしている様な気分になって、顔を赤くする。


「それはそうですが、星を見るって事なんで、どうしても……」

 赤松君の言葉に迷いを感じて、何か声を掛けなきゃと思った時。


「こう見えても、私も昔キャンプとかが好きで、良く一人でキャンプとかしてたんだ」


「だから、小さなテントなら持っていてね」


「赤松君のテントは?」


「はい、二人用です……」少し恥ずかしそうに言う赤松君。


 ふっ二人用なんだ……。


「うん、僕のテントも二人用でね。そこで提案だ」


「はい」


「テントを立てる場所は離れていても構わない。親が近くにいてはやりづらいだろうからね」


「そっ、そんな事は」「そんな事無いけど……」

 私達は、どう言うのが正解なのか分からずアタフタしてしまう。


「それでも何かあった時に、近くに保護者がいるのと、いないのでは違うだろ?」


 パパの顔は、明るく振る舞いながらも、この時だけは少し真剣な雰囲気で私は何も話す事が出来なかった。


 不安そうに見た私に気付いた赤松君は、微笑むと、

「はい、そうですね、その方が良いかもしれない」


「でも、そんなにお手数掛けても大丈夫なんですか?」


「僕らの事は気にしなくて良いよ、実はママも流れ星が見たいって言っててね」


 パパが照れくさそうに笑った。











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