重なったのは影じゃない4 Side 赤松太陽

「パパ帰宅だよー!!赤松君、まだいるー!?」

 高目の大きな声に、何事なのかと一瞬思ったけど、

 白波さん達がムッとした顔をしているのを見て、パパなる人物があまり歓迎されていない事が分かる。

 まぁ、本当に白波さんのお父さんだとするなら、女性ばかりの家庭で男一人で頑張っているんだ。

 多分、人には分からない苦労もあるのだろうな?それか、精神がとても強いか、どちらかだろう。


 いずれにせよ、白波さんのお父さんがこちらに来るのはほぼ確実なのだろうな?


 そんな事を考えている内に、階段を駆け上がるダンダンという音と共にドアをバタンと開けて、

「ただいま!!」

 と言う声と共に、一人のグレーの背広を着たメガネを掛けた男性が入ってくる。


 身長は僕と同じ位、短めに揃えられた清潔感のあるくせ毛っぽい髪は、少し茶色に染めているんだろうか?


 若っ!!とても、二十代の娘がいる様には見えないな?お兄さんかな?でも、いるって聞いて無かったし。


 思わず、僕は立ち上がると、

「お邪魔してます。赤松太陽です」

 そう言ってお辞儀をする。


 メガネの奥の目を優しく微笑えんでいる。

「ご丁寧にどうも〜、柚子の父親で白波だいだいって言います」ペコリと頭を下げる。


 良く見ると、走って来たせいか少し息をハアハアさせている。


「本当にバカね、慌てる事無いのに」白波さんのお母さんがコロコロと笑いながら、手に持っていたハンカチでお父さんの額の汗を拭った。


「いつも、柚子と仲良くしてくれて、ありがとうね」白波さんのお父さんが右手を差し出してくる。


 僕も手を差し出すと、白波さんのお父さんか僕の手の平を握って来た。


 少し硬い男らしい手だ。


「いつもなら、名刺交換でもって言う所なんだけど」


「こちらこそ白波さんには、いつもお世話になっています」笑顔で返すと、


「アハハ、流石に名刺なんか持ってないですよ」

「だよね、社会人あるあるかなぁ?」白波さんのお父さんと話しながら、優しそうな人で本当に良かったと心の底から安堵する。

 そして、その場に座り込むと、

「赤松君も座って座って。ねぇママ、僕もアイスコーヒー頼んでいい?」


「はいはい、走って帰って来たみたいだし!少しは労って上げましょう」白波さんのお母さんは、半分呆れた様に微笑んでいる。


 仲が良さそうだなぁ。


「そういや、今度柚子と星を見に行きたいんだって?あっママ、サンキュー!!」白波さんのお父さんは白波さんのお母さんが持ってきた、アイスコーヒー煽る様に一気に飲んだ。

「はい、出来れば」

 僕の言葉に、少し考え込んだ白波さんのお父さんは、ポツリ。


「その頃の時期だと、四分儀流星群だよね?」

「分かるんですか?」意外な一言にびっくりすると、

「まぁね、星とかキレイだからね」さも、当然の様に言われて少し驚いたけど、話は早そうだと思った。


「星の事なので、どうしても行動は夜になってしまいますが、白波さんと一緒に流星群がみたいんです。当日、よろしいでしょうか!?」


 僕をじっと見つめる白波さんのお父さんの目。


 僕はゴクリとツバを飲んだ。







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