重なったのは影じゃない3 Side 白波柚子

「大丈夫かな?赤松君」

 私のつぶやきに反応したのは、お姉ちゃん。

「何か、ゴメンね?余計な事したかな?」

 済まなそうな顔をして少し、しょげている。

「別に、お姉ちゃんは何にも……悪いのは、私かも……」

「あら、二人共悪い事してるのかしら?」

 ママが優しげに笑いながら聞いて来るから、私達姉妹は黙り込んでしまった。


「なぁに美甘、自分の彼氏を自慢するのは駄目な事なの?それとも柚子、赤松君が格好良いって思ったのは嘘なの?」


 ママは何も聞いてない様で全部、聞いている。


「そんな事無いけど……」

「嘘だなんて思わないけど……」

 私とお姉ちゃんの肩にポンと手を置いて、

「なら自信満々でいなさい私は会って、まだ数時間しかたって無いけど、赤松君はとても素敵な子だと思ったわよ?きっと、少し整理する時間が欲しかっただけよ」


 少し、しゅんとしている私達二人にママは、

「そんな顔してたら、余計に赤松君が気にするでしょ?変わらずいなさい。元気よく出迎えてあげなさい。貴方達は笑顔が一番良く似合うんだから」

 そして、両手をパチンと叩いて。

「さぁ、笑顔!!」


 ママは凄いな。


「そだね、ほら柚子もスマイルスマイル」お姉ちゃんが私の頬をつかんで無理矢理、口角を上げてくる。

「やめひぇよ、おねえひゃん!!」もう、頬が痛いなぁ。

「分かったからやめて!!」

 お姉ちゃんの手を剥がして、頬をさする。


「あら柚子ほっぺにチークでも塗った?」

 意地悪く笑うお姉ちゃん、

「お姉ーちゃんー!!」

 頭に来たー!!絶対にやり返してやるー!!

 私が手をワキワキさせてお姉ちゃんに迫ると、

「その辺にしなさい。ほら、 赤松君が来たわよ?」

 ママの声に、お姉ちゃんを睨みつける私。


 後で、やり返すんだから!!


「すみません、遅くなりました」

 赤松君が、ドアを開ける、いつもの優しい笑顔だ。


 私は少しホッとすると、お姉ちゃんの顔を見る。


 お姉ちゃんが、良かったねと言う様ににっこり笑い返して来た。


 ありがとうお姉ちゃん。やっぱり好き!!


「そう言えば、年始の流星群の観測会の事なんですけど?」


 赤松君はクッションに座ると、例の星の観測会の話をしてくる。


 楽しかったから忘れてたけど、今日はその件がメインだった。


「うん、そうだった!!ねぇママ行っても良いでしょ?」

「うん、まぁそうね、私は別に良いと思ってるんだけどね」

 ママが少し考え込んだ顔をしていて、その顔を見た赤松君が少し不安そうな顔をしている。

「パパがねぇ?」


「それは、反対してるって事でしょうか?」

 赤松君が、真剣な顔でママの方を見ている。


「いや、そう言う訳じゃ無くてね」

 ママがバツの悪そうな顔をして右頬に手を当てて考え込んでいると、一階から大きな声がする。


「パパ帰宅だよー!!赤松君、まだいるー!?」

 パパの少し高くて大きな声、凄く恥ずかしい。

 お姉ちゃんと顔を見合わせて、渋い顔をしてしまった。




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