そっと僕らの手がふれて9 Side 白波柚子
もう、最悪だ。
嬉しそうにニタニタするお姉ちゃんとママ。
いたたまれない様子で、真っ赤な顔をしている赤松君。
「ほーら柚子、いつまで不貞腐れた顔してるの?」
「してないもん、不貞腐れてなんか無いもん」
「そういう顔を不貞腐れてるって言うのよ」お姉ちゃんが私の頬を指で突っつく。
「だから、そういうのやめてって言ってるの!!」私がお姉ちゃんの指を手で払い除けると、
お姉ちゃんは、
「キャー助けて太陽君!!暴力妹にイジメられる〜!!」
そう言って、赤松君の後ろに隠れようとする。
「お姉ちゃん!!」
さっきから、赤松君の事を太陽君、太陽君って……私だって名前で呼んでないのに。
「いい加減に!しなさい柚子、
ママが大きく溜め息をつくと、赤松君がアハハと苦笑いを浮かべている。
「あっその……御免なさい赤松君!!」
私が慌てて謝ると、
「いやいや、謝る事なんて何にも無いからね」
赤松君の言葉に
「だってぇ……今日は赤松君の前で大声を出したり騒いだり、はぁもうヤダ〜」
顔を両手で覆うと泣き出しそうな勢いでテーブルに突っ伏す。
「ゴメンね、ちょっとやり過ぎちゃったね。柚子はいつもはもっと可愛い子なんだよ」
お姉ちゃんが、私の頭を撫でてくる。
こう言う時のお姉ちゃんは好き、優しい。
「白波さん、そんな事言わないでよ。今日、僕はとっても楽しんでるよ」
そっと顔を上げ赤松君の方を見る。
少し恥ずかしそうに赤松君がはにかんでいる。
「本当に?」
「うん、今日はいつも見る事が出来ない、白波さんの色々な顔を見る事が出来て、本当に嬉しいんだ」
赤松君が、優しい笑顔で笑い掛けてくれた。
やっぱり赤松君は優しい!!
「ゴメンね太陽君、柚子はいつもは優しい良い子なんだけどね」
「酷いママ!!私が乱暴みたいじゃない!!」
赤松君の前で、ママやお姉ちゃんにからかわれて、膨れる私は悔しくて堪らないけど、紅松君が笑ってくれるのが、とても嬉しくて。
「そうだ!!あのですね、折角飲み物とか持って来て頂いたのでもし良かったら、食べませんか?」
赤松君の提案に「うん、賛成!!」私も頷く。
「そうね、コーヒー冷めちゃうしね」
ママの言葉にお姉ちゃんも頷く。
「良かった。このケーキ、家の近くの洋菓子店なんですけど、ケーキも美味しいけど、フィナンシェやカヌレみたいな焼き菓子が凄く美味しくて、一度白波さんに食べて欲しかったんです」
「うん、凄く美味しそう!!」いつまでも機嫌が悪い様子では、赤松くんに申し訳ないよね。
そして、それはお姉ちゃん達も同じ様で、
「本当!!カヌレが可愛くて美味しそう!!」
お姉ちゃんも嬉しそうに言うと、スマホを取り出して写真を撮り始めた。
「柚子、太陽君笑って!!」
急にスマホで私達二人の写真を撮り始めたお姉ちゃん。私達は慣れないピースサインをすると、
「アハハ、初々しいなぁ」
写真を撮りながら、お姉ちゃんが、
「あのね、柚子ゴメンね?今日は、ちょっと調子に乗り過ぎだったよね?太陽君もゴメンね?見苦しい所を沢山、見せちゃいました」お姉ちゃんは、エヘッと舌を小さく出して笑いながら謝る。
やっぱり、美人はズルい!!何をやっても目立つんだから。
だって、お姉ちゃんは美人なんだもん。
やっぱり少し、羨ましいな。
「自己紹介が遅れました。私は柚子のお姉ちゃんで白波美甘です」
満面の笑顔のお姉ちゃんに私は少し嫉妬した。
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