そっと僕らの手が触れて8 Side 赤松太陽

 猫のクッションを抱きしめるととフローラルの良い匂いがした。


 クッションもちゃんと手入れしたりしてるんだな。


 何となく、恥ずかしくなってクッションで顔を隠してしまったけど、今日の僕は白波さんの家にお招きされたおかげで、少し舞い上がっているみたいだ。


 目立たない様にそっと部屋を見渡す。


 白波さんの部屋は何となくいい匂いがして、キレイに整頓されていて、小さくモーターの音がしていた。


 モーターの音の方を見れば、机の隣に大きめの水槽アクアリウムが設置してあった。


 水の青さと熱帯魚の赤や黄色がカラフルに彩られて、しばらくボーっと見てしまう。


「キレイでしょ?」

 白波さんの声に、ハッとして声がした隣を見ると、ほんのすぐそばに白波さんの顔があって思わず、ビックリしてしまう。

「うわっ、ビックリした!!」

 驚いた僕を見て笑う白波さん。


 僕は恥ずかしそうに、頭を掻いて照れ笑いをした。


「もう、驚かせないでよ」

 僕の言葉に楽しそうに笑う白波さん。


「ボーっと眺めてるからつい。ねぇ、近くで見ない?」

「良いの?うん、見たい!!」

 僕の言葉に嬉しそうに、こっちこっちと手まねきしてくれる白波さん。


 僕が招待された蒼い世界は、まるで……。

「小さなプラネタリウムだ……」



 「蒼くて淡くて、小さな泡と熱帯魚は生まれたばかりの瞬く星みたいだ……」

 ネオンテトラ、グッピー、スマホで検索した小さな生き物達が流れ星の様に泳いでいる。

 あっ、あれがコリドラスパンダか?

 白い色に黒い模様がパンダみたいでユーモラスで可愛らしい。

「白波さんは、こんなキレイな世界を独り占めしていたんだね?」

 ふと、隣を見ると白波さんはボーッとした顔をしていて、僕が白波さんの方を見ると、慌てて下を向いて真っ赤な顔をすると、ポコポコと隣に立つ僕の二の腕を小太鼓を叩く様に連打してくる。


 痛くは無かったけど、僕が何かしてしまったのかと驚いていると、


「赤松君はお口をチャックして下さい!!格好良い事言うの禁止です!!」

 白波さんに何となくハチャメチャな事を言われて、何となく、可愛くて笑いながらそれ見ていると、


「トントーン、お熱い所、申し訳無いけど、そろそろ良いかしら?勿論、さっきからドアはノックしてたわよ?」

 そこにいたのは、飲み物ののったお盆を持った、グレーのトレーナーにタイトなジーンズを履いた二十代前後位の女性だった。


 顔は、印象としては、気が強くなった白波さんみたいな雰囲気で一瞬で、以前白波さんから聞いていたお姉さんなのだろうと思いつく。


 その脇には、何となく申し訳無さそうな白波さんのお母さんもいて、こちらはお菓子を乗せたお盆を持っていた。


「もう、お姉ちゃんったら〜!!」

 膨れる白波さんを見て、僕は耳まで赤くするしか無かった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る