そっと僕らの手がふれて7 Side 白波柚子

 そっと隣りを見ると、そこに赤松君がいる。


 何となく、ニヤけている自分に気付いてしまって自己嫌悪する。


 何やってるんだろ、私。


「あっ、あの!!赤松君、そろそろ部屋の方に行こ?」


「うっ、うん、分かったよ」

 赤松君、まだ少し緊張してるのかな?ママが余計な事言うから!!


「あら、引き止めてゴメンね」


 ママが、ニコニコしながら手に持ったお土産を大事そうに抱えて、

「後で、お茶持って行くからね。赤松君は飲み物はコーヒーで大丈夫?」


「はい、大丈夫です。すみません、お手数かけて」


「良いの良いの、お客様は遠慮しない」

 そう言って、ママは赤松君の背中をポンッと軽く叩く。

「はいっ、お言葉に甘えます」

 少し恥ずかしそうに、お辞儀する赤松君。

「まぁ、あんまり二人の邪魔はするつもりは無いから安心して」

 ママのニヤニヤした顔がちょっとムカついた。


「ママ!!私ココアね。行こう、赤松君」

 そう言って、私は廊下の脇にある階段を登り始めた。


「ちょっと待ってよ、白波さん!!あの、失礼します」

 ママに少し恥ずかしそうに、お辞儀をして私の後に続いて階段を登る赤松君。


「ごめんね赤松君、ママがしつこくて」


「ハハッ、そんな事無いよ。優しいお母さんじゃない」


 優しいなぁ赤松君。


「優しいのか分からないけど、私の事、凄く子ども扱いするんだよね」

 少し拗ねた感じだったせいだろうか、赤松君は少し目を細め、優しい表情で、

「僕の家もそうだけど多分親にとって、いつまでも子供は子供なんだと思うよ。白波さんが大きくなっても、きっとそれは変わらない」


 何だろう、赤松君が妙に大人っぽく見えて、少し固まってしまった。


 ズルいよ赤松君、格好良過ぎだよ……。


「白波さん?」

 その声に、やっとフリーズから解けた私は、慌てながら、

「こっここが私の部屋です。散らかってるけど、どうぞ」

 部屋のドアを開けて、彼を招き入れた。

「オジャマしまーす」少し緊張してキョロキョロしている赤松君にクスッと笑いながら、


「あんまり、女の子の部屋はキョロキョロ見ないでね。そこのクッションに座って下さい」

 そう言って、小さなテーブルの両脇に置いた猫の顔を模したクッションを勧める。


「あれ?三毛猫の方じゃないんだ?」私の座ったのは黒猫のクッション。

 いつも、オヤスミのスタンプに使うのは可愛い三毛猫のスタンプだけど、普段使っているのは黒猫のクッション。

 どっちも可愛いけど、紅松君が黒猫のスタンプを使っているのを見てから、何となく黒猫クッションがお気に入りになった。


「猫はどっちも可愛いから良いの!!」ちょっとムキになって言うと、

「まぁ、三毛猫クッションも可愛いよな」

 そう言って、赤松君はクッションに座る前に三毛猫クッションをギュッと抱きしめる。


 それを見て、クッションに羨ましいなって思ったのは内緒だよ。

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