そっと僕らの手がふれて6 Side 赤松太陽

 スマホのナビアプリは便利だ。音声に合わせて何とか初めての白波さんの家に迎えている。


 多分、ここを真っ直ぐ行けば、白波さんの家に着くはず。


 少し、緊張しながら歩いて行くと、大体五十メートル程行った所で、白いセーターに水色のオーバーホールを着た女の子が立っているのを見つける。


 遠目から、僕を見つけたらしい女の子は嬉しそうに手を振っている。


 白波さんだ!!


 僕は小さく手を振ると、小走りで彼女の下へ走って行く。


「いらっしゃい、赤松君!!」笑顔で僕を迎えてくれた白波さん。


「待っててくれたの?この寒いのに?」十二月も中旬に差し掛かり、空気も乾燥して、冷たい風がふきはじめている。

「ううん、平気!!赤松君が道に迷わなくて良かった!!」吐く息は白く頬も赤く染まっている。


 寒くない訳が無いのに……。


「待っててくれて、ありがとう……」


 何となく毛恥ずかしかったけど、僕は笑顔でお礼を言った。


「どう致しましてだよ、それよりお疲れ様。おウチ入って」


「うん……ありがとう」

 僕は、彼女に促されるまま白波さんの家の玄関をくぐる。


 ここに来るまでに見た外観では、築どれ位なんだろう、比較的新しい感じの外壁が灰色の二階建ての家で、築五年位に感じた。


「お邪魔します」

「赤松君、改めていらっしゃい」


 白波さんの出迎えに、少し恥ずかしくなって、頭を掻きながら照れ笑いをしてしまう。


 横開きの扉を開くと、玄関で靴を脱ぐと、広めの廊下の奥から、パタパタとスリッパの音が小走りて聞こえて来る。


「いらっしゃい赤松君。寒かったでしょ?」

 きっと十数年後に白波さんが大きくなったら、こうなるんじゃないのかな? オレンジとブラウンのストライプのエプロンを着て、髪の毛をポニーテールにした女性が話し掛けてくる。


 きっと、白波さんのお母さん何だろうな。


 僕はお辞儀をすると、


「始めまして、赤松太陽と申します。今日はお招き頂いてありがとうございます」そう言ってお辞儀をもう一回した。


「まぁまあ、赤松君は真面目で礼儀正しいわねぇ」

 女性は、嬉しそうに笑いながらエプロンで手を拭いている。


「柚子の母です。娘が何時もお世話になっているみたいで 本当にありがとうね」優しい笑顔に少しドキドキしてしまう。

「こちらこそ、いつも白波さ……柚子さんにはお世話になりっぱなしで」

 僕は慌てて、手に持ったお土産を白波さんに渡す。


「あの、大した物じゃ無いですけど、ウチの近所にあるケーキ屋さんで、フィナンシェとカヌレが凄く美味しいんで、もし良かったら」


「カヌレとフィナンシェ!?美味しそう!!」嬉しそうに渡した箱を抱きしめる白波さん。


「ありがとうね〜うちは皆甘い物が好きだから嬉しいわ〜」

 白波さんのお母さんは、白波さんからお土産の箱を預かると、

「後で、お茶の時に食べましょうね?」

 僕は、お辞儀する。

「ありがとう、気を使わなくて良かったのに」そう言いつつも、笑顔の白波さんに、

「甘味師匠の白波さんの口に合えぱ良いけど」冗談混じりて言えば、

「甘味師匠はヤメてよ〜」白波さんが、恥ずかしそうに身を捩る。


 二人で笑っていると、

「あらあら、仲が良いわね?これは後で色々話を聞かせて貰わなくちゃね?」

 白波さんのお母さんの声に、僕らは顔を合わせると、互いに頬を赤くした。











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