そっと僕らの手がふれて5 Side 白波柚子
「じゃあ、明日ね!!お休み」スマホの向こうから、赤松君の優しいお休みって声が聞こえる。
着信を切った後、大体一分後位にラインでお休みって書いた可愛い黒猫のスタンプが送られてくるんだ。
あっ、来た。
これが、いつもの赤松君のルーティン。
それに、私もお休みって書いた三毛猫のスタンプを送る。
それを見て、ニコニコしながらお休み赤松君って言うのが私のルーティン。
明日は、赤松君が遊びに来るんだ。
少し考えたら、緊張してきた。
実際、私の部屋なんて、クラスメイトの女の子が数回来た事がある位で、ましてや男の子なんて家に来た事も無い。
小さい頃から、引っ込み思案で、男の子が怖かった私は出来るだけ男の子に関わらない様に生きて来た。
勿論、くせ毛を馬鹿にされた事も原因なのだと思うけど……。
そんな私が、男の子と話したり、ましてや一緒にキャンプをして星空を見たいなんて思うなんて……。
パパやママも、この話を聞いた時に本当にビックリしていた。
だから、家に遊びに連れて来なさいなんて言うんだろうな?
緊張するなー、私は掃除用のコロコロでカーペットをコロコロする。
もう今週で二回程カートリッジを交換した。
ママが、カーペットの毛が無くなっちゃうわよって苦笑いしていた。
でも、何かしていないと落ち着かないんだ。
だって、赤松君が来るんだもん。
トントンとドアを叩く音がして、返事も待たずにお姉ちゃんが入って来る。
「何、勝手に入って来るのよー!!」
こんな口調で話すのは家族だけだ。
友達にだって、こんな口調て話せない。
「柚子、お風呂空いたよー」
お風呂上がりピンクストライプのインナーウェアを着たお姉ちゃんがニヤニヤしながら、話しかけてくる。
「分かった」
私が素っ気無く返すと、
「赤松太陽君だっけ?」
「何よ」
「来るんでしょ?愛しの太陽君。ちゃんとお風呂で体洗わないとね〜」
ニシシといやらしく笑うお姉ちゃんに、私は真っ赤になって反射的に手に持っていたコロコロを投げつける。
力が無い私が投げたコロコロはヘナヘナ〜と緩やかな曲線を描いてお姉ちゃんの手に収まった。
「赤松君とは、そんなんじゃ無いもん!!」
「真っ赤になって可愛いなぁ、私の妹は」
「赤く無いもん!!」
「怒んないの、可愛い顔が台無しだよ〜」
お姉ちゃんは、部屋に入ってコロコロを私の足元に軽く投げた。
カランと音を立てるコロコロ。
「可愛くなんか無いもん!!」
頬を膨らませて怒る私を見て、お姉ちゃんは笑いながら、ギューッと私に抱きついて来る。
「可愛いよ家の妹は、本当に可愛くなった……」
「お姉ちゃん……」
スキンケアの仕方から髪型まで、色々教えてくれたお姉ちゃん。
そんなお姉ちゃんが可愛いって言ってくれたのが、少し嬉しかった。
「そんな可愛い妹に、こんな顔をさせる太陽君ってどんな子なのか気になるのよね〜」
抱きしめてくれるお風呂上がりのお姉ちゃんは、シャンプーの良い匂いで温かくて……。
「違うもん、私と赤松君はそんなのじゃ無いもん……」
「ハイハイ分かりましたよ」
ニヤニヤしてからかう気満々なんだから。
ゆっくりと私から手を離したお姉ちゃんは、
「明日、バイトお休み貰っちゃった」
ニヒヒと歯を見せて笑う。
「えっ?何で!?やめてよ!!」
「お休みー!!早くお風呂入りなさいよ〜!!」
バタンとドアを閉めるお姉ちゃんに今度は三毛猫の顔のクッションを投げつける。
クッションはボフンとドアに当たって音を立てた。
「お姉ちゃんのバカ!!」
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