そっと僕らの手がふれて4 Side 赤松太陽
誰か教えて欲しいんだけど、女の子の友達の家に行く時は、何を持って行けば良いんだろう?
季節は、もうすっかり冬になり風も冷たくなろうとする頃、辺りはクリスマスムード一色になって、僕と白波さんが水族館に行く約束の日が段々と近づいて行く。
そんな折、白波さんからラインが来た。
文化祭ちょっと前からライン交換をして、時々ラインをする様になったんだけど……。
期末テストも終わった休日の土曜日に白波さんの家に遊びに来ないか?って内容。
ビックリして、その後、何日にも掛けてラインをしていたけど、最後に二人なら最初から通話してれば良かったねと白波さんからラインが来て、それに気付かない位に慌てていた事実に気付く。
そうだよね、グループラインならともかく、二人だったら、通話の方が早かったかも。
ラインの内容を要約するとこうだ。
この前、キャンプで流星群を一緒に見ないか?と誘った件を両親に話したら、白波さんのご両親が一度、僕を家に誘う様に言われたらしいのだ。
どーしよ!!どーしよ!!行かない選択肢は無いけど、緊張する。
それはそうだよね?女の子に一晩、一緒に星を見ようって誘ったんだから、親なら気になるよね?
ベッドで転がり、机でうつ伏せして、ゴロゴロしたのが約束の日の1週間前。
「始めまして、わたくしはー、白波さんあの、白波柚子さんのお友達をさせていただいております、赤松太陽でありますじゃなくて、です。」
それから毎日、挨拶の仕方とかネットで調べて何度も何度も練習して、自分で自分に駄目出しして、頭を掻いて、
ハァ、ボクハナニヲシテイルノ ダロウ……。
今まで、友達の家にも行った事がほとんど無いのに、女の子の家に遊びに行くなんて……。
経験値がなさすぎる。
そんな事をしている内に、明日は白波さんの家に遊びに行く日。
もう、当日着ていく服は決めたし、手土産にお菓子を買った。
花束を買っていこうとしたら、弟にドン引きされて、絶対ヤメロと怒られた。
ちなみに家の弟は、彼女持ちのイケメンで、僕が友達の家に行くと言ったら、髪型服装と親身になってアドバイスをしてくれた。
良い奴だ。
当日、家に自分の彼女を連れ込もうって言ってたけど……。
前言撤回。
通話が掛かって来た。
慌てて出ると、聞き慣れた、もう脳内再生は余裕で出来る声が聞こえる。
『今晩は赤松君』
「今晩は白波さん」
いつもの優しい声が聞こえる。少し緊張して少し嬉しくなる声。
「どうしたの?何か予定でも変わったとか?」
『ううん、そうじゃなくてその……どうしてるかな?って』
「そっか、その……明日よろしくね?」
『こっちこそゴメンね、その……家に誘って』
「何言ってるの、そんなの気にしないで!!白波さんの家に遊びに行けるなんて、本当凄く嬉しいから!!」
『星を見る話をしたら、急に一度家に連れてきてって』
ここしばらくの間、彼女は済まなそうに同じ話をしてくれた。
恥ずかしいし、不安なのだろう?
僕も多分、同じだ。
「白波さん……」
『なあに?』
「明日、よろしくね」
明るい声で言った。彼女の不安が少しでも消える様に……。
僕の友達が安心出来る様に、
「美味しいお菓子のお土産持ってくからね!!楽しみにしてて!!」
『うんっ!!』
僕の友達の嬉しそうな声に、明日の不安も少し消えた様な気がした。
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