そっと僕らの手が触れて3 Side 白波柚子
「寒くなって来たね」
空を見上げなから赤松君が、フゥと息を吐く。
背中にリュックを背負って、左手には私のバッグ。
重いから良いよと言ったけど、何となく有無を言わさない感じで、
「僕が持つから」と一言だけ言って歩いて行く。
私の友人達から、
「優しーー!!」とか、「仲良いねーー!!」とか、からかわれたけど、赤松君はそんな事は気にしてないみたいだ。
もう、私達別にそんな関係じゃないのに……。
「昨日、久しぶりに天候が良かったから、星を見ていたんだけど、カシオペアがキレイでさ、この時期から段々と空気が澄んで来るから、星がキレイなんだ」
「えーー!!言ってくれれば良かったのに。私も昨日、星を見てたんだけど、全然良く分からなくて」
不貞腐れた顔をする私を見て、赤松君は笑う。
「今度、星がキレイな夜は連絡するよ」
赤松君とする、星の話は楽しい。
赤松君が詳しいって言う事もあるけど、彼が楽しそうに話してくれるからだ。
以前、部屋から夜空を見上げて、北斗七星に、カシオペア座、アンドロメダ座にペルセウス座ほとんど名前しか知らなかった星座や星々も赤松君が電話をしながら教えてくれた。
まるで、耳元で囁きかけてくれるみたいで……ちょっと嬉しかった。
「冬になったら、一人でキャンプしながら、星とか見に行きたいなって思ってるんだ」
こう言う事を話す時の、赤松君の目はキラキラしている。
「凄い、本格的だね?キャンプ道具とかあるの?」
「もちろん!!って言っても、父さんのお下がりだけどね」
苦笑いをする赤松君。本当は自分の物が欲しいんだろうな?
「一式揃えると高いんでしょ?」
「まぁね、だからお年玉で、ちょっとずつ自分の物を集めるんだ」
「良いなー、たき火やってコーヒーとか飲んだり、お料理とかするんでしょ?」
「アハハ、僕はまだ料理下手だから、インスタントラーメンとかしか外で料理した事無いけど、色々やってみたいな」
「良いな、私も星見たいし、お料理したいし、たき火もしてみたいなー」
まだ夕方にも、なっていない空を見上げて見えない星空を思い浮かべる。
「あのさ……見たい?白波さんも」
「あの……星空の事?」
「うん、もし良かったらさ、一緒に見ない?星空」
恥ずかしそうに、はにかむ赤松君の声に私はドキッとした。
「……ごっ、ゴメン流石に言い過ぎ……」
「見たい!!私も見たいよ赤松君!!」
少しの間の沈黙を拒絶と勘違いしている赤松君の声を私は遮った。
「温かいたき火で作ったお料理と、キレイな星空。スゴイね!!本当に私も一緒に見ても良いの?」
「まぁ、白波さんさえ、良ければっていうか、家族の了承も無いと駄目かも?」
「そうだ、早速パパやママに聞かないと!!いつ頃にやる予定なの!?」
アワアワしている私を見て、赤松君は優しく微笑んでいる。
そして、しばらく考えた後、
「白波さん、寒いの平気?」
「どうだろ?ある程度なら?」
私の曖昧な返事に、赤松君は考え込む。
「来年早々にさ、
「流星群!!流星群ってアレだよね?流れ星がいくつもいくつも流れるんだよね!?」
「そうだね……うわっ!?」
「凄い!!見たい見たい!!」
「白波さんオチ、落ち着いて、落ち着いて。アハハ、凄い勢い」
「だって、流れ星だよ!?私まだ一度も見た事無いって、あっ」
私は興奮の余り、いつの間にか赤松君の手首を掴んでブンブン振り回していた。
気がついた私は恥ずかしさの余り、その場にしゃがみ込んで、しばらくの間、うずくまってしまった。
何やってるんだろ、私?
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