そっと僕らの手がふれて2 Side 赤松太陽
文化祭は楽しかった。
終わり。
……って、違う!!いや、違わないけどあの後、僕らは色々食べたり、見て回ったんだ。
甘味師匠の白波さんと、クリームあんみつを食べたり、焼きそばや焼き鳥、妙にデコったドーナツを食べたり、お化け屋敷や謎解きをやったり……。
流石、白波さん頭の回転が早い。謎解きでは他の人達が考え込む間にアッサリと謎を解いてしまい、司会者を唖然とさせていた。
僕にとっては女の子と一緒に文化祭を回るなんて初めてで、正直少し緊張しっぱなしだった。
いや考えて見れば、友達とこうやって回る事自体、中学から今まで無かったから事だから本当に嬉しかった。
まぁ、だからと言って、青年の主張で学校の屋上で愛を叫ぶとか、後夜祭のキャンプファイヤーでダンスを踊ろうとか、そんな漫画みたいな事は無かったし……まぁ、キャンプファイヤーの火は一緒に見たけど。
凄く綺麗だったな。
とにかく、僕の文化祭は史上最高に楽しく過ぎていった。
そして数週間が過ぎて、木々が紅葉して気候も段々と秋から冬になろうとして行く。
朝早く新聞受けに新聞を取ろうとして吐いた息が淡く白くなって少し驚いた。
あの後、ちょっとだけ、変わった事がいくつかあった。
一つは、少し失礼かもしれないけど、白波さんがその……前よりも可愛くなった事。
いや本当に!!多分スキンケアとかしてるのかな?
以前は、気になったニキビが、今ではほとんど気にならない。
もうすぐ、完治するんじゃ無いかな?
メガネも以前の厚い野暮った……じゃなくて、大きめのメガネからコンタクトレンズに変えて、なんかその凄く可愛くなった。
前のメガネも良かったけど、元々白波さんは目鼻立ちがしっかりしているから、コンタクトの方が似合うなと思う。
そして、長かったくせっ毛をバッサリ切って、肩口で跳ねるミディアムヘアに髪形を変えて来た。
白波さんのクラスメイトから、遅咲きの高校デビューだってからかわれていたけど、くせ毛をキレイに使ってまるで、ゆるめのパーマを当てている様で、特にメイクなんかしていないのに、華やいで見える。
クラスの席でボーッとしていると、他のクラスメイトが白波さんの事を噂しているのが良く聞こえる様になった。
キレイになったとか、可愛いとか……そんなのとっくに知ってるんだよ!!
何となく誇らしげなって、自慢したくなるのをグッと堪えて我慢する。
何故か、クラスメイトの女の子から急に、
「気をつけないと、柚子取られちゃうぞ」なんて言われて焦る。
僕らは、そんな関係じゃ……無いんだから。
無いよな?……何だか良く分からなくなって来ちゃった。
そんな事があって意識してしまったせいでは無いのだけど、
「赤松君、こっちはもう良いよ」バッグを片手に席を立つ白波さん。
「うん、じゃあ帰ろうか?」
白波さんと同じ様に、バッグを手に取る僕。
僕らは、その……毎日、一緒に帰る様になった。
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