そっと僕らの手が触れて1 Side 白波柚子

 私は、笑ってしまった。


 だって、ラムネやたこ焼きを食べた直後だよ?


 赤松君のお腹からグーッて、


 図書室だから、静かに笑う私と、照れくさそうに笑う赤松君。


「当番終わったら、何か一緒に食べに行く?」

 自然に口から出た。


 赤松君は、目をパチパチさせて、少し考えていたけど、


「うん!!もちろん」

 何となく嬉しそうに見えた。

「白波さん、何が食べたい?」


「さっき、たこ焼きとか食べたから」

「じゃあ、甘い物?」


「うん!!嬉しい!!」


「白波さんは、甘い物好きなんだ?」


「赤松君、甘味が嫌いな女の子は存在しないんだよ?」

 何故か、胸を張る私。


 あんまり胸無いけどね。


 それを見て笑う赤松君。

 

「クリームとあんこどっち派?」


「どっちも!!」


「流石、甘味師匠!!」赤松君大笑い。


「誰よ、甘味師匠って!?」一緒に私も笑ってしまった。


 私達は、文化祭の展示物マップを取り出す。


 赤松君は少し考えた後、


「じゃあ、二年の甘味屋のクリームあんみつはどうかな?」


「赤松君……」


 私は真面目な顔をする。


「なっ何かな?」


 赤松君も真面目な顔をする。


 ちょっと不安そうな感じだ。


「アンコにクリームなんてズルいと思わない?」


「……はぁ?」


 私は赤ペンを取り出すとキュッと音を立てて文化祭マップに印をつける。

「三組だね?行こう、クリームあんみつはズルいよ!!」


「何だよそれ?」


 堪え切れずに大笑いを始めた赤松君、彼が、こんなふうに笑うなんて、ちょっと前の私には想像出来なかったかも知れない。


 赤松君は知らない事だけど、彼がラムネを買いに行っている少し間、クラスメイトが私の様子を見に図書室に来ていた。


 赤松君がいないのを残念がっていたけど、普段笑わない赤松君が、私といる時だけ良く笑っててビックリしたとか、笑顔が可愛いとか、私も良く笑う様になったとか……どうでも良いけど、私が可愛くなったとか。


 散々言って帰って行ったけど、私達はそんなのじゃ……無いよね?


 大笑いしている赤松君、そんな彼の顔を見ていると嬉しくなって来る。


「……方が良いと思うんだ?どう思う?」


「ん?あっゴメンなさい!!私ボーっとしてて聞いてなかった。もう一度言って?」

 貴方の笑顔に見とれてましたなんて、とても言えない。


「だからね……」

 私どうしちゃったんだろう。


 心のモヤモヤが止まらない。


 赤松君といると楽しい。


 今まで、他の友達と話したり遊んだりしたのとは別の感覚だ。


 赤松君ともっと仲良くなりたい、赤松君に可愛いって言って欲しい。


 赤松君と、もっと色んな所に行って見たいな。


 私は、ちょっとだけ勇気を出す事にした。


「赤松君」


「どうしたの?」


「あのね?その急なんだけど……」


「うん……」

 胸がドキドキする。赤松君もそれに釣られてか真剣な顔をしている。


 頑張れ、私の勇気!!


「今度、一緒に水族館に行かない?」


 真剣な顔をしていた赤松君は、少しポカンとした顔をしていたけど、しばらくすると嬉しそうな顔をして、

「うん、行きたい!!僕も白波さんと水族館行きたい!!」


「本当に?今度、行く日決めようか?」

 良かった〜、肩の力が凄い勢いで脱力していく。


 赤松君は少し黙り込む。


「ごめん、あんな事言ったけどさ……」


 えっ?なっ何だろう、私の心に緊張が走る。


「一月以上空いちゃうけど、十二月二十四日はどうかな?」


 びっ、ビックリした……行けないのかと思った。


 私は、安堵のため息をついた。


 私は、スマホのスケジュールアプリを出す。


「うん、十二月二十四日だね?その日は……クリスマスだよね?」


 スケジュールアプリを開けるまでも無かった。


 正確にはクリスマスイブだけど、そんな事はどうでも良かった。


「うん、駄目かな?」


 クリスマス??どうしようクリスマスだよ!?心の中で沢山の私が大騒ぎしている。


 でも、答えなんて最初から決まっているよね?


「うん、大丈夫。その日は空いてる」


 自分の中では極めて冷静を装った。


「良かった」


 赤松君の笑顔は凄く優しくて、凄く嬉しそうで私はこの後の文化祭の事なんて忘れてしまう位舞い上がってしまった。






















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