僕らは近づいていく9 Side 白波柚子
文化祭当日、天気は晴れ。
私達のクラスの喫茶店も、それなりにお客さんが入っている様だ。
クラスメイトに、委員会があるからと言って出て行こうとすると、仲の良いクラスメイトから、五百円分の文化祭用の金券を急に渡されて、これで赤松君と美味しい物食べてと言われて、ビックリする。
『頑張らないと、赤松君取られちゃうぞ』だって……。
最近良く言われるんだ。
『赤松君と仲が良いの?』とか、
『最近、赤松君と良く話してるね?』とか、
『ユズ最近、明るくなって可愛らしくなって来たよね?』とか。
それは、図書委員だから、良く当番で一緒にいる事が多いかも知れないけど、私達はそんな関係じゃ……。
確かに私達良く話しているかも知れない……。
男女で話していると、噂になるのは分かっているんだけど、だからといって普段話すのヤメよう?
とか、色々変えるのも何となく嫌で……。
赤松君は元々、暗くて取っ付き辛いと思われていたけど、私と話している姿を見て少しクラスの評価が上がっているみたい。
そうだよね、赤松君は優しいし、背も高いし顔だってカッコいいし。
私みたいに地味な子じゃ釣り合わないかもな……。
何言ってるんだろ?私はそんなのじゃ……。
図書室に行くまでの途中にあった、屋台で、たこ焼きとアメリカンドッグを二個買った。
普通じゃ五百円で、こんなに買えないよね?文化祭マジックだ!!
図書室を開けると、中はガランとしていた。
一応、休憩所にはなっているけど、文化祭一日目はまだ、一般開放はされてなくて学生のみ、ましてや午前中じゃ余計に人なんか来る訳無いよね?
もう赤松君は来ていて、私を見つけて笑顔で手を上げてくれた。
「早いね?」
「まぁ、クラスでやる事も無かったからね」
おどける赤松君がおかしくて笑うと、視線が私の左手のビニール袋にいっているのに気付く。
「これっ」
私が左手のビニール袋を突き出すと、
「何々?」
赤松君は興味深げに、私の手からビニール袋を受け取り中を確認する。
「たこ焼きとアメリカンドッグ買って来たの、温かい内に食べよ?」
本来は、図書室は飲食厳禁なんだけど、文化祭の時くらいは、食べても良いよと顧問の先生も言っていたんだ。
「本当!?やった!!少しお腹が減ってたんだ」
赤松君は、制服の内ポケットから財布を取り出そうとする。
「あっ、待って待って!!私タダ券貰って買ったからお金は良いよ!!」
赤松君は、凄く嬉しそうな顔をするけど、
「えっ!!本当?でもなぁ……」
「そうだ!!白波さん、ちょっと待っててすぐ戻るから!!」
そう言うと、凄い速さで図書室を出て行った。
何も口を挟む暇もなく走り去った赤松君。
「廊下は走らない方が良いよ〜」
一応は言ったけど、聞こえてる訳が無いよね。
何となく可笑しくなって笑ってしまった。
赤松君が先生に怒られていません様に、私は小さく祈った。
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