僕らは近づいていく7 Side 白波柚子

「白波さん、僕は君に……謝らなきゃいけない事があるんだ」


 赤松君の声に思わず私は息を呑んだ。


 何だろう、どうしたんだろう?頭の中で考えがまとまらない。

 謝らなきゃいけない事があるって言ってたけど、もしかしたら、私が何かしたのかもしれない。 


『「ごめんなさい!!」』

 電話の赤松君の声と私の謝る声が重なる。


『えっ?何で白波さんが?どうしたの急に?』

 赤松君が驚いて私に問い掛ける。


「私、何か赤松君の気に障る様な事言ったんだよね?」

 とにかく、謝らなきゃ。

 私は、何か分からなかったけど、必死だった。


 赤松君に嫌われたく無い、その一心だった。


『そんな!!ごめん白波さん、そうじゃないんだ。悪いのは全部僕で……』

「でも、赤松君が謝る様な事は何も……」

『いやその……とにかく聞いてもらって良いかな?』

「……うん」

 赤松君の落ち込んだ声に、不安を隠し切る事が出来なかったけど、

『本当にごめん!!』

 いつもの紅松君よりも大きな声で話すから私の緊張度合いも上がってしまう。

『今日、図書室でスマホが無いから電話掛けてって言ったけど、あれ、白波さんを騙したんだ!!』


「えっ?」


『白波さんの電話番号を知りたくて、わざとスマホを無くした振りして……嘘ついて……』

 赤松君の声が小さくなっていく。


 赤松君には、悪いんだけど私には彼が何を謝っているのか良く分かっていなかった。


「ごっごめんね、赤松君ちょっと待ってね……少し、考えるから」


 駄目だ、頭が回っていない。


 赤松君は、私を騙していた事を謝っている?


 何を?……私に嘘をついた事を?


 何の?……私にスマホを無くしたって事?


 何で?……私の電話番号を知りたかったから?


 私の電話番号が知りたかった……ゆっくり考えていくと、この一言が頭の中を駆け巡って行く。


「あっ、あわっあの!!何で私なんかの電話番号を?」どう言う事?図書委員の事で何か聞きたかった?


 もしかして、赤松君は私を騙して悪い事を?……赤松君はそんな事する訳無い!!


 赤松君はそんな事しない!!


 赤松君はそんな事するもんか!!


 最後の方は願望や願いに近かった。


 お願い赤松君、なんだか良く分からないけど私を悲しませないで……。


 お願い……私が貴方を嫌いにさせないで……。


『ゴメンね、実は……その、もっと白波さんと話とかしたくてその……だから電話番号知りたかったんだ!!』


 えっ……?


「それだけ?」


『うん、そうだけど……その、ごめんね』

 それだけか……あぁ、良かった〜。

「うん良いよ、その……はい!!」

 済まなそうな赤松君の声が何となく可愛らしくて……何となく嬉しくて……。

「許します!!」


 スマホ越しの彼には、分からないと思うけど多分その時の私は凄く良い笑顔をしていたと思うよ。








 



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