僕らは近づいていく6 Side 赤松太陽
帰って直ぐに宿題、予習復習を済ませて晩ごはんを食べて、風呂に入る。
毎日のルーティンだ。
いつもなら、その後は、このまま星を見たりボーっとしたり、ゲームをしたりしながら寝るまでにノンビリしたりしている。
ハズなんだけど……。
僕はスマホをじっと見つめて、時々唸ったりベッドで転がったりしながら、考え込んでいた。
画面には、白波柚子さんと書かれた着信画面、ボタン一つ押せば彼女のスマホに直結されるはずだ。
これは、今日の図書当番で偶然ゲット出来た白波さんのスマホの電話番号。
……嘘、実はワザとスマホが見付からない振りをして電話を掛けてもらった。
結構、ドキドキしたな。
ワザと良く分かる胸ポケットにスマホを入れて、もし彼女が気付いて指摘して来たら諦めようって思っていた。
何とかして電話番号が知りたかったけど、彼女に直接聞く勇気は無かったんだ。
ズルいよな?
白波さんは、胸ポケットのスマホに気付いていたのか、気付いていなかったのかは、僕には分からない。
でも、彼女は僕の下手な演技に優しく笑ってくれて、念願の白波さんの電話番号を手に入れる事が出来た。
嬉しい、凄く嬉しい。
これで、いつでも白波さんに電話が出来るじゃん!!
なんて思ったのが一時間前で……。
僕は、スマホの前で固まる事になっていた。
情けないな……。
ふと考える。
なんて言って、電話しよう?
『今晩は』
『えっ?どうしたの赤松君?何か用?』
『……』
あっ、駄目だ特に用なんて無い。
図書委員の事で、聞きたい事が?……嘘、全然無い。
白波さんの事で、聞きたい事が?……あるけど聞ける訳ないよ!!
何が聞きたいかって?そりゃあ、色々と……。
そんな事はどうでもいいんだ!!
白波さんの声が聞きたくて……そりゃ、これなんだけどさ、こんな事言ったら気持ち悪いじゃん!!
はぁ、僕何やってるだろう?
僕は、スマホの前で大きなため息をつく。
下手くそな芝居までして、電話番号手に入れて……。
何か、ストーカーみたい。
そこまで考えてゾッとした。
電話番号を不正に手に入れて、白波さんに迷惑掛けているんじゃないのか?
そもそも僕になんか、電話されたら迷惑なんじゃないのか?
白波さんに嫌われる?
そんな言葉が、頭をリフレインして駆け巡る。
『赤松君、緊張してる?』
『赤松君も凄く優しいし、その……カッコいいと……思います』
今までの白波さんの言葉が頭を巡って行く。
駄目だよ、こんなのじゃ!!
僕は、スマホの通話ボタンを押した。
通信中のメロディーが流れる。
あんまり聞いた事無かったな。こんな音してたんだ。
『……はい、白波です』
白波さんの声に少し慌てながら、
「もっ、もしもし、赤松太陽ですけど、白波柚子さんのスマホですか?」
『キョンばんは赤松君!!白波柚子です!!』
あっ、噛んだ。
『どうしたの?』
彼女の声に僕は、大きく深呼吸する。
「白波さん、僕は君に……謝らなきゃいけない事があるんだ」
スマホから、白波さんの息を呑む音が聞こえた。
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