僕らは近づいていく5 Side 白波柚子

 宿題、明日の予習を終えて水槽の魚達をノンビリと眺めている。


「ねぇ、聞いてくれる?赤松君たら、面白いんだよ?スマホが何処かにいったから、鳴らしてもらって良い?って言うから電話鳴らしたら、制服の胸ポケットに入っていたんだよ?私笑っちゃった」


「赤松君、『生徒手帳かとおもってた!!』って、びっくりしてるんだもん。可笑しかった」


 でも、おかげで……。


 水槽をツンツンと突付くと慌てて魚達が逃げていく。


「赤松君の電話番号、分かったんだけど……」


 スマホの着信履歴には、赤松太陽君ってちゃんと着信履歴が入っている。


 さっき、登録しておいた。


 もしかしたら、図書委員の事とかで電話するかも知れないし……。



 窓のカーテンを開けて、外を見ると星空が見えている。


 キレイな星空。


 そういえば、物理の授業が昨日で一段落して、明日の理科は地学をやる様だ。


「地学かー、赤松君嬉しいだろうな?」


 太陽系とか、天体とか……。


『天空のアクアリウムだよね?夜空って』


 以前、赤松君が夜空の動画を見せてくれた時に言っていた言葉。


 ロマンチック過ぎて、思わず顔を赤らめてしまった。


 赤松君は時々こう言う事を言う。


 冗談っぽくなくて真顔で言うからドキドキしてしまう。


「ズルいよね」


 もう一度、水槽を突付くと、また慌てて魚達が逃げていく。


 ゴメンね、君達もビックリするよね?


 水槽の魚達に謝るけど、彼らは何事も無かった様に泳いでいる。


 最近、私は特に意味は無いけどお姉ちゃんから、ニキビの治療薬を貰って使っている。


 お姉ちゃんも昔ニキビが酷かったけど、その薬のお陰で直ぐ治ったんだ。


 お姉ちゃんに勧められてたんだけど、その時は外見とかどうでも良かったから、面倒くさくて断ったんだよね。


 でも、ちょっとニキビが気になったから、そう、ニキビが気になった、だけだからね!!


 薬を使い始めたんだけど、まだ始めて一週間じゃ成果は出ないかな?


 そう言えば、ニキビの薬貰った時に何故か、お姉ちゃんが良く行く美容室を教えてくれた。


 私の高校は、髪型の校則はさほど五月蝿くないから、この際髪の毛の矯正して来たら?なんて言うんだ。


 恥ずかしいって言ったら、


『柚子がキレイになるのを喜んでくれる人がいるなら勇気出しても良いんじゃない?』

 なんて言うから、

「そんな人はいないもん!!」

 って大きな声出しちゃった。


 お姉ちゃんはニヤニヤしてるし、はぁ~何やってるんだろ私?


 でも、直ぐからかうんだもん。


 お姉ちゃん、嫌い!!嘘、好き。


 だって優しいし、5つ離れた私の事を凄く可愛がってくれるし、夕飯の唐揚げ1個余分にくれたし……。


 私と違って凄く美人だし……。


 でも、お姉ちゃんが言ってた。柚子は高校の時の私そっくりだって。


 じゃあ、私もお姉ちゃんみたいになれるかな?


 なれたら、良いな……。


 何となく無性に赤松君の声が聞きたくなった。


 電話掛かって来ないかな?


 無理かな?


 自分で掛ける勇気なんて無い私は、ハァ〜と深いため息をついた。












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