僕らは近づいていく3 Side 太陽&柚子

 Side 赤松太陽


「誰も来ないのな」

 ベットの上で寝転がって、ボーッと今日あった事を考えてたんだ。


 結局あの後、図書室は誰も来なかった。


 僕は、と言うより僕らは、気不味いのと恥ずかしいのを誤魔化す為に天気の話から始まって、世間話や自己紹介までしてしまった。


 彼女の優しい声が耳に残って離れない。


白波柚子しらなみゆずさんか……」


 十月生まれのてんびん座、血液型はO型、趣味は読者とアクアリウムを作る事。


 アクアリウムってのは魚とかの水生生物の飼育設備の事らしい。彼女は家で水槽を設置して熱帯魚を買っている。


 本当は、猫が好きなんだけど、母親が猫アレルギーだから、しょうがなくて飼っていたら楽しくなってしまったらしい。


 名前は聞いた事はあるけど、見た事も無い熱帯魚の名前が出てきて本当に好きなんだな思った。


 三種類は覚えたぞ、ネオンテトラとグッピー、コリドラスパンダ、最後のはパンダの響きが楽しくて、何となく覚えた。


 後、水をキレイにする海老がいるらしい。


 スマホでアクアリウムを検索してみる。

 キレイな水槽の画像が沢山出て来た。


 覚えた熱帯魚も検索していくネオンテトラ、キレイだな……。

 青くて赤くて可愛い感じ……。

 続けて色々見ていく、鮮やかな熱帯魚達。


 ボーっと、柚子と検索してみる。


 柑橘系の柚子が出てきた。


 思わず笑った。


 ベッドから起き上がる、机の隣から天体望遠鏡を抱え込むとベランダに出た。


 今日は快晴、良い星が見れそうだ。


 ★


 Side 白波柚子


「結構、話しちゃった」


 男子となんか、ほとんど話した事なんて無かった。

 小中学生と何時もアダ名はモジャモジャメガネ。


 もしくは、モジャモジャニキビだった。


 男子なんて、嫌いだしデリカシーが無いし、結局キレイな女の子ばっかりだ。


 友達から、髪ちゃんとしたらとか、ニキビに効くお薬知ってるよとか色々アドバイスをくれる。


 柚子ちゃん、ちゃんとすれば可愛いのにとか、お世辞言うけど。私みたいなモジャモジャニキビ駄目だよ。


 赤松君、優しかったな。


 私みたいなモジャモジャと、楽しく話してくれた。


 赤松太陽君、四月生まれのおひつじ座のA型、趣味は読書と天体観測。


 天体観測……星かぁ、なんかロマンチック。

 その夏の大三角形とか、明けの明星とか理科で習ったな。


 スマホで星空を検索してみる。


 小さなスマホの画面に無数の星空が写っていた。


 思わず、「綺麗……」とつぶやいてしまった。


 夜空に浮かぶ星々が、まるで大きなアクアリウムみたいで……。


 私はベッドから起き上がると机の隣に置いてある水槽を見る。


 最初は小さな金魚鉢だったのに、今では結構大きな水槽になってしまったな。


 淡いライトに包まれたアクアリウムを眺めながら、


「この子達だって星空に負けない位、綺麗なんだからね……赤松君」


 ツンと、水槽をつついた。

















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