day28.方眼

 書斎の扉を開けると、見知らぬ女子高生がいた。

 読者モデルにでもなれそうな可愛らしい子が、書斎の窓の前に立っている。が、顔も知らなければ、制服もこの辺りでは見たことないものだった。

「久しぶり」

 いや初対面ですけど、と応えようとして、彼女から言いようのない懐かしさを感じた。なぜか制服の着こなし方が一昔前のものだからかもしれない。

「忘れちゃったの? あたしのこと」

 女子高生は少し寂しそうな表情で、小首を傾げる。そんなこと言われても、こっちが首を傾げたい気分だ。

 とにかく「君は?」と誰何しようとした瞬間、雲が晴れたのか窓から日差しが差し込んだ。彼女の姿は逆光によりシルエットになったのだが、それがどこかおかしい。

 よく見ると、ところどころに縦横の線が入って見える。線が段々と広がって彼女の全身を覆うと、古い紙がぼろぼろと崩れるように姿を消した。

 彼女が立っていた場所を見てみると、古いルーズリーフが一枚落ちていた。高校時代よく使っていた方眼マスのもので、当時書いていた小説でびっしり埋まっている。

 そういえば、古い書類やら学生時代の教科書やらを整理している途中だった。このルーズリーフはそこから落ちたのだろう。

 読み返すのも恥ずかしいが、確か超能力者の女子高生が主人公の話だ。……そう、まるで彼女のような。

「たまには、手書きで原稿書こうかな」

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