day25.報酬
何だかんだで、生き物を飼うというのは心が落ち着く。たとえそれが、押し付けられた謎の古代魚もどきでも。
飼う、といっても思ったより手間は掛からなかった。ビニールプールの水を替えるのだけ少し大変だけれど、細かい専用の器具がいらないのは有難い。ただ、餌が必要ない、というのは楽だけれども少し寂しい。
以前から原稿が詰まった時の気分転換に庭へ出ることはあったが、そこに小さな生き物が一匹いるだけでこんなに癒やされ度合いが違うとは。最近ではことあるごとに庭に出て、魚を観察するのが趣味になってしまった。
魚も、最近ではよく水面近くまで上がってきて、まん丸の目でこちらをじっ、と見つめてくるようになった。昔飼っていた金魚は人間を認識しているのかどうか怪しかったが、この子はなんとなく人間の存在が分かっているような気がする。
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴る。
最近本当に来客が多いな、とドアを開けると客ではなく宅配便だった。某有名通販サイトのマークが入ったパッケージで、私は何も頼んだ覚えがないから同居人が通販したものだろう。
「ねー、また何か通販しました?」
「いや、今日届く予定のものはなかったはずだがな」
じゃあ今日以外に届く物をまた勝手に注文してたのね、というツッコミはさておき、問題はこの謎の小包である。最近は送り付け詐欺なるものがあるらしいので、荷物をよく見てみると、通常送り元となっている欄が贈り主になっており、「このお届け物はギフトです」との文言がある。だが、その下に記載されている名前に心当たりはなかった。
そういえば、結局色々あって義兄の名前を聞きそびれていた。姉は彼のことを「ダーリン」としか呼ばないし。先日持ってきてくれたケーキは結局雨師さまに譲ってしまったので、律儀な彼が別の賄賂を送って寄越したのかもしれない。
でもそれなら真面目な義兄が事前に一報をくれそうなものだけどな、と思いつつ小包を開封する。中身はリボンの模様が描かれた封筒に、この通販サイトで使えるギフトカードが入っていた。
そしてもうひとつ。メッセージカードが付属しており、そこには「うちの子を可愛がって面倒見ていただいてありがとうございます」とひとこと。
……最近の神様は、報酬をギフトカードでくれるようだ。
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