9月26日 dawn

 朝焼けの光にほんのりと照らされた空は薄いむらさき色をしていて、その儚さはまるで中学生ぐらいの淡い初恋のようだった。


 半分開けたまま寝てしまったカーテンをすべて開け放つと、ほんわかとした異国の情景が徐々にまばゆくなってきた朝日とともに部屋に差し込んできて、わたしはそのまだ見慣れない景色に目を凝らしながら、ああわたし今遠くまで来ているんだな、と寝起きの頭でぼーっと感慨にふけっていた。


 世界最大級のメガロポリスの真っ只中にいるのにもかかわらずこの辺りでは田園風景が広がっていて、ステイをはじめてもう1か月もたつのにいまだに新鮮な感じがした。半分しか聞き取れないCBSの天気予報では今日90℉ぐらいにまでなると言っていたような気がして、この朝のしゃきっとした冷え込みとの落差も面白いなと思っていたけど、慌ただしい朝にそんなことを考えている余裕なんてあるわけがないのでちゃっちゃと身支度を済ませた。


 ミルクティー一杯とちっちゃなかぶりつきりんごを朝ごはんにして外に出るとまだまだ案外涼しかったので一回踵を返して薄いのを1枚羽織ってからホストファーザーの車に乗り込んだ。むらさきからだんだん水色になってきた世界の中を走りだした車の中では昨日テイラーがラジオでカバーしたらしいCan't Stop Loving Youが流れ出して、アレンジの曲調が今の雰囲気にぴったしで超センスよかったので今日も何とか生きてやるか、と思えた。この爽やかさを逃すのはもったいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る