第2話通いを許可する
「惚れたって…何で?」
突然、家を訪れた美人銀行職員の彼女をとりあえず家に招くとコーヒーを淹れてリビングへと案内する。
「だって…強盗が入った時の対応がスマートで…格好良くて…思い出せば思い出すほどに…たまらないです♡」
あの時のことを思い出しているようで彼女は恍惚な表情を浮かべている。
「大したことしてないけどな。犯人が用意周到じゃなかっただけだと思うけど。それにもしもあの拳銃が手製で作られたものだったらと思うと…ちょっと無茶な行動だったと思っているよ」
僕も同じ様にあの時の事を思い出していて苦笑を浮かべざるを得ない。
「それでも…梶さんの行動のお陰で強盗は捕まりました。誰一人傷つかないで」
「そうだけど…う〜ん。あまり褒められた行動だとは思わないけど」
「そんなこと無いですよ。格好良かったのは間違いないんですから」
「まぁ…ありがとう」
僕らはリビングでコーヒーを頂きながら顔を突き合わせている。
眼の前に広がっている光景が不思議で仕方がない。
一度、偶然出会った女性と僕は現在家で二人きりだ。
そんな訳のわからない状況に思わず苦笑してしまう。
「何か可笑しかったですか?」
「う〜ん。今の状況が可笑しくて」
「そうですか?」
「うん。一度出会っただけの女性が僕の家に居るのが可笑しくてね。連絡のやり取りは結構していたけど」
「まぁ…それはそうですが…惚れてしまったので…」
「惚れるね…嬉しいけど」
「困りますか?」
「いえ。それは無いですけど…恐縮と言うか…僕なんかでいいの?」
「もちろんですよ♡自分を卑下しないでください♡もっと自信を持って♡」
彼女の想いを耳にして僕の心は少しずつ高揚しているようだと感じる。
素直に感謝を告げようと思うと会釈するように頭を下げた。
「ありがとうね。嬉しいよ」
「それで…今日から通ってもいいですよね?」
「通って…何がしたいの?」
「何でもしますよ。とにかく同じ空間で過ごしたいんです」
「どうして?」
「同じ空気を吸っていたいと言うか…ずっと一緒に居たいんです」
彼女の本気の想いを受け入れると僕は数回頷く。
「わかったよ。通うの大変だと思うけど…よろしくね」
「はい。全く苦痛じゃないですよ♡」
「そう。何がしたいか考えておいて。僕も何をしてほしいか考えるから」
「とりあえず今日は食事を作り置きしていいですか?」
「良いの?それは本当に助かるね」
「じゃあ早速キッチン借りますね」
そうして彼女はキッチンに立つとそこから流れるような手付きで調理を始めるのであった。
「はじめさん。料理上手なんですね」
「ありがとうございます。結構勉強しているんですよ」
「どれも美味しそうです」
「ふふっ。きっとどれも美味しいです」
彼女が料理をしている間に僕はそれらを眺めながら他愛のない会話を楽しむのであった。
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