貯金しに行ったら偶然にも銀行強盗に出くわしてしまう。これと言って強いわけでもない僕が事件を解決したら人質となっていた美人女性職員が通い妻になった件
ALC
第1話最悪な一日
最悪だ。
眼の前の光景を目にして思わず、その様な言葉が口を吐こうとしていた。
銀行強盗に訪れた犯罪集団に出くわしてしまう。
日々の小銭貯金の貯金箱がいっぱいになったので通帳に貯金しに来たのだが…。
不運なことに時代遅れの銀行強盗に出くわしてしまうとは…。
「皆さん。落ち着いてください。私共は危害を加える気はありません。銀行からお金さえ頂ければすぐさま帰っていきます。ですがここで残念なお知らせがあります。職員から一人とお客様の中から一人。人質になってもらいます。不穏な行動さえしないで頂ければ誰も傷つかずに済みます。何よりも銀行からお金を頂くだけでお客様には何の危害も加えないと約束します。ですので無駄な正義感は発揮せずに大人しくしていてください」
覆面を被った男性と思われる犯人が演説のようなものをすると残りの三人が手早く行動に移った。
「お客様の中で我こそは人質になると言う人はいますか?」
再び問いかけられたところで僕は周りを見渡した。
明らかに恐怖で震えている親子などを目にして僕は正義感から手を上げた。
「では。そこのお兄さん。こちらにいらしてください」
犯人に言われるがままに彼の元へと歩いて向かう。
「はい。では端の方で立っていてください。職員さんは…」
犯人は職員全員を見渡してとびきりの美人に目を向ける。
「あなたにしましょう。こちらに来てください。その他の職員は我らの指示に従って行動してください」
言い忘れていたが犯人等は拳銃を手に持っている。
職員たちは拳銃を向けられると両手を上げて指示に従っていた。
一人の偉そうな職員が金庫の鍵を持って犯人たちに連れられていく。
その間、僕ら人質や職員や客はスマホを取り上げられていた。
連絡しようにも何処にも出来ない状況が出来上がっている。
しかしながら僕の腕にはスマホと連動している腕時計のような機器が巻かれている。
殆どスマホと変わりない用途で使えるその機械を静かに操作すると集められていたスマホの束の中で僕のものが少しだけ光る。
発信先は110番だった。
通話状態になるまで数秒間待つと僕は銀行強盗に話しかけた。
「なぁ。今時、銀行強盗って…儲からないだろ?」
「ん?まぁ昔の映画みたいにはいかないな。そんなこと聞くためだけに口を開いたのか?」
「あぁ。もう少し稼げる方法っていくらでもあるだろ?そんなに犯罪でしか稼ぎたくないんだとしても…銀行強盗は時代遅れだ。電子マネーの世の中で銀行の金庫にだってお金はそんなに置いてないと思うけどな。それともあれか?貸金庫の中のものが目当てなのか?そんなに上等な物は置いてないと思うけどな。リスクとリターンが見合ってないぞ?あぁ…そうか。リスクを楽しみたい若者みたいなものか…」
少し挑発するような言葉を口にすると犯人は拳銃を持っている手で僕の頬を殴る。
「あまり挑発するんじゃないぞ?こっちは拳銃持ってるんだからな?」
「あぁ。もう何も言わないさ。早く銀行強盗を済ませて帰ってくれ」
「言われなくてもそれが目的なんだよ」
犯人は少しだけイライラしているようだったが僕は自分のスマホが通話状態で有ることを理解して安堵した。
そんな出来事があり銀行強盗が入ってから十分が経過しようとしたところだった。
「本当にシケてんな。貸金庫の中身も外れだったわ」
犯人達はイライラした状態で出口へと向かう。
「それでは皆さん。これにて失礼します」
全員が安堵してふぅっと息を吐いたところで同じ人質だった女性は僕に問いかける。
「どうして犯人を逆なでするような発言をしたんですか?」
女性職員は少しだけ怒っているようにも思えた。
「ん?あの拳銃は偽物でしたから。それが分かったので」
「え?偽物だったんですか?」
「うん。金属製で出来てなかったでしょ?あれだけ挑発したのに撃ってこなかったので確信したよ」
「へぇ〜。なんだか冷静なんですね」
「うん。今頃、犯人は捕らえられているんじゃないかな?」
「へ?」
「さっきこれでスマホの通話を発信させておいたんだ。もちろん警察にね」
腕時計状の機器を見せてそんな話をしていると丁度サイレンの音が鳴り響いてくる。
僕らは銀行の外に出てその逮捕劇を目撃していた。
犯人たちは警察官に捕らえられて手錠をかけられている。
「ね?偽物の拳銃だったでしょ?本物だったらこの状況で撃たないわけないし」
「………」
女性職員は言葉に詰まっているらしく戸惑いの表情を隠さなかった。
「あの…助かりました。職員として同じ人質として…感謝の言葉を言わせてください。ありがとうございます」
「いえいえ。殴られなかったら満点だったんですけどね」
「連絡先!連絡先だけ教えてください」
そうして僕らはスマホの束から自分のものを取り出すと連絡先を交換するのであった。
その衝撃的な事件から数日が経過したある日。
ピンポーンとインターホンが鳴り響く。
モニターを確認すると…。
玄関へと向かい扉を開ける。
「あの時の…どうしたんですか?」
戸惑う僕に彼女はニッコリとした笑顔を浮かべてこの様な言葉を口にした。
「今日から毎日ここに通いますね♡惚れさせたのはあなたなんですよ?責任取ってくださいね♡」
「………マジ」
こうしてひょんな出来事から僕の家に通い妻さながらの女性が出来てしまう。
ここから始まる日々はどの様なものなのだろか。
僕と美人銀行職員の彼女との関係性は如何に…。
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