危機一髪

XX

どっかの王国の話

「ビッチ、キミとの婚約を破棄する」


 夕暮れの私室。

 その場で。

 私は婚約していた伯爵令嬢との婚約を破棄した。


「王子……そんな! あんまりです!」


 私の言葉を受け、彼女は泣き崩れた。

 そして


「理由を言ってください! 納得できません!」


 そんな、ふざけた言葉を吐き出した。

 理由だって……?


「よくもまあ、こんな要求をしておいてそんな言葉が吐けるな!」

 

 言って、私は一枚の契約書を彼女に叩きつける。

 そこには「結婚における契約書」と書かれており。

 こう書かれていた。


①子供が嫌いですし、出産もしたくないです。そして自分のものが他人に使われるのが嫌なので、子供は諦めて下さい。

②あなたの財産は妻の私が全て管理します。

③私の許可なく私たちの財産を消費しないでください。


 なんなんだこれは!

 私は王子だぞ!


 ①なんか特に飲めるわけがない!

 私の次の世代はどうなるんだ!?

 弟の血筋に王位継承権が移ってしまうじゃないか!


 そう、私が彼女を怒鳴り付けたら


「あ、当然弟王子様については夭逝していただきますから、そちらは心配しなくても……」


 余計酷いわ!

 しかも! この書類、魔術的処置がされていて。

 サインしたら同時にその内容を遵守する強制ギアスの魔法が掛けられている!


 とんでもない奴だ!

 この女、許さない!

 幼少期からずっと一緒に居たけれど、まさかこんな酷いクソ女だと思っていなかった! 婚約破棄一択!


 ……こうなったらもう、ずっと迷っていたけど。

 最近気になっている彼女……精神魔術課で必死で学んでいる苦学生……

 サイミーを迎え入れるしかない。

 彼女は良い子だ。

 努力家だし。優しい。

 ずっとこのクソ女とも仲良くしていてくれた。

 こいつは彼女から何も学ばなかったのか。

 ……恥を知れ!


 彼女を后に迎え入れるのは、正直障害が山のようにある。

 けれど。


 このクソ女を迎え入れることは絶対にありえない!

 それに比べればなんてことは無いな!


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危機一髪 XX @yamakawauminosuke

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