第154話 複雑な事情
とりあえず騎士団の詰め所へと向かう。
ウェズリーとは仕事でもあまり一緒になったことがないので会話した記憶がないんだよな。
まあ、同じ騎士団に所属している同僚なんだから何とかなるだろうと思っていたが、その状況を察したゲイリーが同行してくれるという。
「すまないな、今日は休みなんだろ?」
「どのみち帰ってもやるのは自主鍛錬くらいだしな。夜になったら飲みに行くつもりだけど」
笑いながら答えるゲイリー。
それでもこうして付き合ってくれるのは、彼の持つ人柄が成せること。
こういう面倒見のいいところが後輩から慕われる理由なのだろう。
詰め所につくと、すぐにウェズリーを捜索。
同じ隊の騎士から自主鍛錬中という情報を得て鍛錬場へと移動してみたら――そこには必死の形相で剣を振るウェズリーの姿が。
「おいおい……なんて顔してやがるんだ」
「どこか思い詰めているようにも見えるな」
俺とゲイリーはすぐに彼の異変に気づく。
鍛錬というより、目視できない敵に向かって剣を突き立てているようにしか映らない。
そこには何か恨みに似たような感情が込められているようにも感じた。
……どういうことだ?
てっきり、リリアンさんとの結婚がうまくいかないのは彼の実家であるジェンキンス家が絡んでいるのだと思っていた。
そうなると、必然的に彼も共犯者となるわけだが……ひょっとしたら違うのかもしれない。
「あの顔つきに振る舞い……誰かを騙しているようには見えねぇな」
「それどころか、騙していることに対して心苦しさを感じているという風にさえ捉えられる」
「おまえもそう考えていたか」
ゲイリーはどこかホッとしたような口調で語る。
「実を言うと……俺ぁずっと信じられなかったんだ」
「信じられなかった?」
「グラバーソン家とジェンキンス家の結婚が延期になったのは、あいつに原因があるんじゃないかって話が出てきた時、俺は違うと思った。あいつは……本当に心からリリアンさんを愛しているんだ」
「ゲイリー……」
ダーレン様の話では、最初に結婚の話を持ちだしたのはリリアンさんだという。
もしかして……ふたりは純粋に互いを想い合っていて、それを悪用しようとするヤツがいるってことか?
もしそれが真相なのだとしたら……こちらの対応も変わってくるぞ。
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